見出し画像

北谷馨の質問知恵袋 「仮登記の本登記」に関する質問

今回は、「仮登記の本登記」に関する質問です。

Q:所有権に関する仮登記の本登記をする際に、仮登記に後れる仮差押登記名義人の承諾を不要としている問題があります。仮登記に後れる仮差押は抹消されるのではなかったでしょうか。

平成25年午後第16問(1)をベースに、簡略化した事例で考えてみます。

甲区1番 所有権保存 所有者 A
甲区2番 所有権移転請求権仮登記 年月日売買予約 B
付記1号 2番所有権移転請求権の移転請求権仮登記 年月日売買予約 C
甲区3番 仮差押 債権者 D

問題は、「Cを登記権利者、Bを登記義務者として、2番付記1号所有権移転請求権の移転請求権仮登記の本登記を申請する場合に、Dの承諾が必要か」というものです。

答えは、「Dの承諾は不要」です。
当該仮登記の本登記をしても、甲区3番の仮差押は抹消されないからです。
もし、Bを登記権利者、Aを登記義務者として、「甲区2番」の仮登記の本登記をするのであれば、AからBへの所有権移転登記がされることになり、Aは所有権登記名義人ではなくなってしまうので、3番仮差押も消滅してしまいます。甲区2番でAからBへの所有権移転登記がされたのに、甲区3番でAの所有権を目的とする仮差押の登記を残しておくことはできないからです。

一方、本問は、Cを登記権利者、Bを登記義務者として、「2番付記1号」の仮登記の本登記をするものです。当該本登記がされても、「甲区2番の仮登記名義人が確定的にBからCに変わるだけ」であり、あくまで甲区2番は仮登記のままです。したがって、2番付記1号の仮登記の本登記がされても、所有権登記名義人はAのままなので、Aの所有権を目的とする甲区3番の仮差押は存続することができます。よって、甲区3番の仮差押登記名義人であるDの承諾は不要となります。

これは仮登記の本登記に関する論点ではありますが、「所有権移転請求権の移転請求権仮登記」がどういう登記なのか、その理解を問う論点と言うこともできるでしょう。

★北谷講師が担当する「スタンダードコース」はこちら★

画像1


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?