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民法でミスを防ぐコツ~民法94条を例に~

「民法の点数が伸びない」という方に注意して欲しいのが、「雰囲気で解かない」ということです。
「いや、雰囲気で解くわけがないです。」と思われるかも知れませんが、慣れれば慣れるほど、論理を通り越して結論を急いでしまいがちなのが、「民法のワナ」です。

例えば、よく質問を受けるのが、以下の問題です。

問題:Aは、Bに対して貸金債権を有していたところ、AとCとが通謀して、当該貸金債権をCに譲渡したかのように仮装した。債権譲渡を承諾したBは、債権譲渡が無効であるとして、Cから貸金債権の支払請求を拒むことはできない。

通謀虚偽表示に関する問題なので、民法94条を確認しておきましょう。これは皆さんご存知の条文のはずです。

民法94条
1項 相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。
2項 前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。

では、本問のCは94条2項の「第三者」に該当するでしょうか。
ここで、
「仮装譲渡された債権の債務者は、94条2項の第三者に当たらない(大判昭8.6.16)」
という知識が浮かぶはずです。

 そうすると…、

①AC間の債権譲渡は虚偽表示で無効。
 ↓
②債務者Bは、94条2項の「第三者」に当たらない。
 ↓
③よって、Bは保護されない。
 ↓
④よって、BはCからの請求は拒めない。
 ↓
⑤よって、本問は「正しい」。(?)

残念ながら、「正しい」と答えた方は、不正解です。

本問は「誤り」が正解になります。

①~⑤のどこで判断を間違えたのでしょうか。
これは、③がざっくりしすぎです。まさに「雰囲気」で論理を通り越してしまった結果です。

94条2項の第三者に当たらないBとの関係で、AC間の債権譲渡は、有効でしょうか、それとも無効でしょうか。
正解は、「無効」ですね。そもそも通謀虚偽表示は原則として無効なのであって、94条2項の第三者に当たらないBとの関係でも、無効です。

ということは、
③Bは保護されない。
ではなく
③Bとの関係でも、債権譲渡は無効。
というが、正しい論理の流れになります。
ここが修正できれば、あとは簡単です。

③Bとの関係でも、債権譲渡は無効。
 ↓
④よって、Bの債権者はAのまま(Cではない)。
 ↓
⑤よって、BはCからの請求は拒める。
 ↓
⑥よって、本問は「誤り」。

となります。

 「保護される」「保護されない」というのは、結論を急ぎすぎです。まず「有効」「無効」から考える必要があったのです。
 勉強が進んで慣れてくると、結論を急いで「雰囲気」で解いてしまいがちです。これは民法で特にありがちなワナです。焦らず、一つひとつ丁寧に解いていきましょう。


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