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『戦術』研究のすすめ

直前期になると、試験というのは試験委員が作成した問題を、ただ解くだけのものと「勘違い」している受験生の方が余りにも多いことが目に付き、毎年のことながら、それが残念でたまらない。

よく考えて頂きたいのは、午前の部の2時間、午後の部の3時間を、どのように使うのかだけでなく、どの問題から問題を解くべきなのか、どのように問題を解くべきなのかについても全く自由であるという点である。これは、試験が「与えられるモノ」なのではなく、自分の解きやすいように「作り替えることができるモノ」であることを意味している。

受験勉強は、試験合格を目的とした戦いであるため、当然、戦略と戦術が観念できる。受験勉強における「戦略」とは、1年という時間の中で、何をどのように勉強して戦いに備えるかについての作戦を意味する。
他方、受験勉強における「戦術」とは、本試験の午前2時間、午後3時間の時間をどう使い、問題を、どういう順序で、どう解くのかの作戦のことを意味し、いわば自分なりに「試験を造り替える」作戦のことを指すものである。

どんなに理想的な「戦略」をもって受験勉強を進めて来たとしても、適切な「戦術」を用いて問題を解かなければ、戦いに勝つことは覚束なくなる。逆に、戦略的な面が十分でなくとも(十分な準備ができなかったとしても)、戦術を工夫することによって戦いを勝利に導ける可能性はある。司法書士試験は、トーナメント型の「一発勝負」であるため、実力は有るが自信がもてず、不安に駆られ精神的に追いつめられている者と、実力は無いが勢いのある者、勢いに乗った者とを比較すれば、後者が勝つ蓋然性が高い世界だからである。

例えば、試験開始後30分の時間の中で、自分がかつて見たことも聞いたこともない問題を解くのと、今の自分の実力でも即答できそうな問題を解くのとを比較した場合、前者は、不安が増幅し、自分の判断に自信が持てなくなる心理状況になりがちなのに対し、後者は「ひょっとしてこれならば行ける」かも知れないと「錯覚」し、普段ならば諦めてしまう問題にもチャレンジしてみようという心理状況になれる可能性は高くなる。これこそが本試験はプラスマイナス5問の誤差が生ずる世界であることの本質なのである。

また、書式の問題でいえば、問題の難易度は、使える時間に比例して下がるため、1問を1時間かけて解くのと、1問を30分で解くのとを比較すれば、前者の方が極めて有利であることは多言を要しない。書式のミスは、殆どがヒューマンエラーだからである。

これから本試験までの期間は、戦術を考える時間としては十分過ぎる時間である。問題全体を見渡し、解ける問題から解くことを基本としつつ、午前2時間、午後3時間を自分なりにどう使うか、模試などを使い、考えられる状況を想定し、いろいろと試行錯誤して頂きたい。くれぐれも試験は、「血も涙もある生身の人間がやることだ。」ということを忘れないで頂きたい。

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