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条文の魔力と魅力<前編>

皆さん、こんにちは!
クラスマネジャーの三村です。

今回は「結局のところ条文は読んだ方がいいのか、読まなくていいのか」についてお話しますね。
特に初学者の方は悩む所だと思いますが、中上級の方にも是非読んで頂きたいです。
ただ、条文の読み込み効果は個人差が大きいと思いますので、その点はあしからず。

私の場合は始めのうちテキストや過去問で条文を見かけると、その都度引いてました。だって、使い込んで六法がヨレヨレになるのが大好きだったんですもん。
そして、だんだん気になる条文のみを引き、慣れてくると極力引かない。
そんな感じだったような気がします。
テキストを読んでいたり、過去問を解いてる最中に条文をわざわざ引くのってめちゃくちゃ面倒くさいですよね。
しかも、条文を読んだところであまり効果を実感できないというか・・・

けど、結論として私は条文の読み込みをしました!
ある時期に、ある特定の目的を持って、ある科目だけ。
それが何なのかは読んでからのお楽しみということで。

(1)条文の位置づけ

まずは、条文の位置づけから確認しましょう。
伊藤塾の講師陣はよく、「過去問・テキスト・条文」が大事と言いますよね。
この3つ、実はトライアングル構造になっているんです。以下の写真1、2をご覧ください。

写真1では、テキストと過去問は条文に集約される(青の矢印)、もしくは条文からテキストと過去問が生まれる・派生している(赤の矢印)事を、写真2では、過去問はテキストと条文から成り立っていることを指しています。

これらの写真から言えるのは、条文がかなり重要な地位を占めているという事。
にもかかわらず、効率的に勉強するという観点から、普段の学習ではテキストに条文の内容が記載されていることもあり、あまり積極的に条文を引く事はないかと思います。

考えてみれば当たり前の事なのですが、法律が出来て、その条文に基づき、学者の先生が学説を展開したり、判例が積み重なっていくわけです。ということは、条文には余計なものを削ぎ落とした「キホンのキ」が書かれていると言えます。
写真1を見てもその事が分かりますよね。
この条文には「キホンのキ」が書かれているという点は、大事なポイントとなりますからしっかり覚えておいて下さい。

(2)条文を読むことのメリット

①原則・例外・再例外の意識づけ
②要件・効果の確認
③どストライクの基本に触れられる
④条文そのままの出題に対応できる

条文を読むことのメリットは上記の5つに集約されます。

(1)でも述べたように、条文には「キホンのキ」しか書かれていない、つまり極めてシンプルな構造をしている訳ですから、条文を読み「③どストライクの基本に触れ」ることで、「①原則・例外・再例外」や「②要件・効果」を叩き込むことができます!
(この①②を叩き込み易いという特徴は、1項から順に羅列するもしくは本文・但書という法律の構造に由来するものと考えられます。)

例えば、民法398条の20を見てみましょう。

398条の20(根抵当権の元本の確定事由)

1項 次に掲げる場合には、根抵当権の担保すべき元本は、確定する。
(1,2,4号省略)
 3号 根抵当権者が抵当不動産に対する競売手続の開始又は滞納処分による差押えがあったことを知った時から二週間を経過したとき。

2項 前項第三号の競売手続の開始若しくは差押え又は同項第四号の破産手続開始の決定の効力が消滅したときは、担保すべき元本は、確定しなかったものとみなす。ただし、元本が確定したものとしてその根抵当権又はこれを目的とする権利を取得した者があるときは、この限りでない。

原則は、第三者による差押えが行われた場合には、知ってから2週間を経過することで元本が確定します(1項3号)。
例外として、差押えの効力が消滅した場合には、元本確定の効果も消滅します(2項本文)。
さらに再例外として、元本が確定したものとして根抵当権又はこれを目的とする権利を取得した者がいる場合には、元本が確定したままとなります(2項但書)。

どうでしょう?
原則・例外・再例外が1項→2項本文→2項但書と順序良くきれいに並んでると思いませんか?

受験勉強を続けていると、どうしても例外・再例外に意識が向きがちです。原則を忘れていたなんて悲劇ですから、常に基本に立ち返る必要があります。
例外・再例外に当たらなければ原則処理に戻ります。試験で慌てていると、原則ごとゴッソリ抜けて原則に戻ることを忘れてしまうことがあるので、しっかりと原則・例外・再例外の流れを意識しましょうね。

また、過去問では要件・効果でひっかけることも多いです。
「かつ」か「又は」の違いといった細かい点から始まり、余計な要件を付け加えて惑わせることもありますから、必要最低限の要件は何なのかをおさえておく事は重要ですよ。

(3)いつ読めばいい?

私は直前期に読みました。

直前期まで辿り着き知識が充実した時、条文を活用すると実力のブレークスルーを起こす可能性すらあります。
それは普段テキストと過去問から知識を吸収していたところに、別の角度から刺激を入れることによって知識の幹が太くなるから。
スポーツ選手が早い時期から一つの専門種目に取り組むより、色々な競技を経験してから専門種目に取り組んだ方がいいのも、これと似ているかな!?
多角的に筋力や反射神経を鍛えることで、しっかりとした土台を作れれば将来的な成長が見込めます。

とはいえ、直前期に限らず、ある程度実力がついた段階で、条文の読み込みを行う事は決して時間の無駄にはなりません。

今回は長いのでここで区切りますね。次回をお楽しみに!


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