「おかえり」
物心ついたときから
両親が共働きだった。
毎日、長い紐をつけた鍵を
首からさげて学校に行く。
私が家に帰ってくる頃、
3つ上の兄はまだ帰ってきていなくて
ひとりで留守番することが多かった。
「ただいま」って言っても
シーンとしているから
自分で「おかえり」って言うのが
習慣になっていた。
◇
母は、よく言う。
「寂しい思いをさせてしまった」って。
母親である自分が
「おかえり」って言うべきだったのに
それができなかったって。
今年退職して、
そのお祝いに一緒に食事していたときでさえ
「あの頃はほんとに・・・」と
申し訳なさそうに振り返っていた。
当の本人(私)は、
母が思っているほど
ネガティブな経験だと思ってないのだけど。
でも、
じゃあ全然寂しくなかったかと言われると
寂しかったかもしれない。
◇
あの頃ついた習慣はまだ残っている。
娘と保育園から帰ってくると、
ふたりで「ただいま〜」と言って
私が「〇〇ちゃんおかえり〜」と言う。
これから娘が大きくなって
「ただいま」って帰ってくるとき
「おかえり」って迎えたい。
今日、いつものように娘と帰ってきて、
「ただいま〜」
「おかえり〜」って言ってたら、
そんなことを思った。
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