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「おかえり」

物心ついたときから
両親が共働きだった。 
 
毎日、長い紐をつけた鍵を
首からさげて学校に行く。
 
私が家に帰ってくる頃、
3つ上の兄はまだ帰ってきていなくて
ひとりで留守番することが多かった。
 
「ただいま」って言っても
シーンとしているから
自分で「おかえり」って言うのが
習慣になっていた。  
 

 
母は、よく言う。
「寂しい思いをさせてしまった」って。
 
母親である自分が
「おかえり」って言うべきだったのに
それができなかったって。 
 
今年退職して、
そのお祝いに一緒に食事していたときでさえ
「あの頃はほんとに・・・」と
申し訳なさそうに振り返っていた。
 
当の本人(私)は、
母が思っているほど
ネガティブな経験だと思ってないのだけど。 
 
でも、
じゃあ全然寂しくなかったかと言われると
寂しかったかもしれない。
 

 
あの頃ついた習慣はまだ残っている。
 
娘と保育園から帰ってくると、
ふたりで「ただいま〜」と言って
私が「〇〇ちゃんおかえり〜」と言う。 
 
これから娘が大きくなって
「ただいま」って帰ってくるとき
「おかえり」って迎えたい。
 
今日、いつものように娘と帰ってきて、
「ただいま〜」
「おかえり〜」って言ってたら、
そんなことを思った。 
 
  
 

 

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