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『糸と魚と川Vol.06』イベントレポート② トークセッション編

2022年7月13日、駅前広場キターレにて、「外と中、関係人口とローカルプレーヤー・企業・団体との接点をどう作り広げていくか?その先の未来は?」をテーマにゲストをお招きして、第6回となるトークセッションがおこなわれました。

本記事は、前回記事に引き続きトークセッション編の内容をまとめたものです。

前回の記事はこちら。
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https://note.com/ito_sakana_kawa/n/n41727fa834f3

◎『やめること』の大切さ

山崎:ここからはゲストの皆さんによるトークセッションを始めたいと思います。皆さんの話はとにかくアツい話ばかりでした。浅見さんは『ファン=楽しむこと』が原動力ということですが、「なぜ浅見さんの周りに人が集まってきたのか」を御自身で分析はしていますか?

浅見:明確な答えでなくて申し訳ないですが、「おっ あいつら何か面白いことやってるな!」っていう感覚ですね。僕らが「これはやらないとマズい」なとか「やらされている」という感じではなく、楽しんでいる感じがSNSなどを通してもにじみ出ているんでしょうね。なので、面白がるしかないと思っています。

山崎:作っているのではなく自然と出てくるのが良いですよね。

小出:ずっと面白いんですか?辛いことなどなかったですか?

浅見:ダイエットで自分を追い込むときが一番つらかったです(笑)

渋谷:仕事で辛いことはないですか?

浅見:ないですね。

山崎:昔からそうだったんでしょうか?

浅見:これはUターンしてからですね。つまり『自分で全てを選ぶ人生』になってから、そうなりました。仮に誰かに言われたことをやるとしても、それすれすらも自分で選択したと思っています。なので、それに対して不満やストレスが出ないんです。

山崎:いかに楽しんでいるかが分かりますね。BASE968の皆さんが活動を始めた頃は30代中頃だったかと思います。あの頃、皆さんより少し下の年代の人達が後を付いてきたと思いますが、なぜだと思いますか?

野村:楽しんでいる人って、みんな似ているんですよね。「いいよな!」とか「そうそう!」って分かり合える人間が集まってくるんです。合わないって思う人は集まらないし、近寄っても来ないと思います。なので、集まってきた人を一気に巻き込んだっていう感じですね。

そして、企画を始めたら熱が生まれて、愛が生まれたんです。結局、みんなきっかけが無かっただけで、ウズウズしていたんでしょうね。「何かを解決したい」なんて誰も思っていなかったんですよ。おそらく、それを思っているのは基本的に行政の人だけだと思っています。

ですが、その熱感は一般の人には優先度が低いんです。よく「子ども達のために未来を残していきしたい」という方がいますが、子ども達は大人になったら、自分たちのことは自分たちで考えていくんですよね。それならば子ども達のためにできることといえば、大人が自分たちが楽しいと思えることをやっている姿を見せるだけで良いんです。

山崎:それは本当にそう思います。以前、糸魚川でもおこなわれた行政主体の市民会議で「何かが生まれたのか」と聞かれたら答えに詰まるところではありますね。もう1つ『熱』という話題が出ましたが、浅見さんはにじみ出るものが凄いですよね。何をやるにしても中途半端ではなく、全力で楽しんでいますよね。

渋谷:浅見さんに初めて会ったのは4、5年前になりますが、その時よりも魅力がにじみ出ているように感じますよ。

浅見:時間は有限ですからね。当たり前のように聞こえますが、そのことに本当の意味で気付いている人は少ないと思っています。その限られた時間の中で何が出来るのか。もっと言えば、後の世代に何が残せるのかと、自分が死んだ後のことまで考えています。

たとえば「50歳で死ぬとしたら、ここまで出来る」とか「60歳で死ぬとしたら、ここまで出来る」など具体的に考えています。なので優先順位が必然的に決まっていきますし、やらせているという感覚は一切無いんです。

山崎:組み立て方が凄いですよね。私は浅見さんより少し年上ですが、そこまで考えられていないです。

浅見:僕が変わり者なだけですよ(笑)

山崎:一方でBASE968の皆さんといえば『愛とパッション』ですよね。特に矢島さん。

矢島:自分で言うと恥ずかしいんですよ。でも、相手に対するパッションは大事ですね。

山崎:嫌々やらされている人って絶対にパッションは出ないですよね。自ら進んで楽しいことをやっている成果なんでしょうね。

矢島:まちづくりの為に会議をしたときに、多くの人から「まちづくりしろ」って言われたんですが、その前に「まちづくりをする人のことをちゃんと見ていない」と感じたんです。まずは人に愛を注いで、一緒にやっていこうとしないと、まちづくりをする人は育たないんですよ。

渋谷:Fun(楽しむ)ということを第一に考えると、やりたいことがどんどん増えていきますよね。そうすると現状ではパンクするので、仲間を増やすことも考えるとは思うんです。そのバランスはどうしていたんでしょうか?

浅見:明確に答えがありますね。それは「やめるものを決めること」です。以前、渋谷さんにも登壇いただいた『はたらクラス』も、これ以上やっても意味がないと判断した段階できっぱりとやめました。最初から期限を決めておくことも大切ですね。

なのでBASE968の皆さんが解散したと聞いて、とても素晴らしいことだと思いました。やはり新陳代謝をすることって本当に大事なんですよ。続けることが美学であるという考えもあるのは分かっていますし、周りから「良い企画だから続けてほしい」と言われることもありますが、これは絶対に言わないほうがいいです。

渋谷:『糸と魚と川』は何回までやりましょうか?

山崎:20何回目に出演したいという方がいるので、まだまだ続けますよ(笑)

浅見:一旦ゴールを決めて短距離走のように突っ走ったら良いんですよ。ゴールの見えない長距離走は苦しいだけですからね。もし企画が好評であれば、○○ネクストだったり、○○リターンズって付けて再開すれば良いんです。

渋谷:BASE968の皆さんはいかがですか?

小出:糸魚川でBASE968として何が出来たかといえば、駅前広場キターレで指定管理者を2年間やらせてもらった中で、事業を収益化するところまで達成せずに解散という形になったんですよね。ですが、今日のイベントを通して、自分たちのFun(楽しむこと)を大切にすることが良いのだと改めて実感し、そこに自分たちの責任があるのだと思いましたね。

そんな中で、現在はどこでも仕事ができる時代になっていますよね。『住む場所と楽しくてやりたいことの兼ね合い』という問題が出てくると思うんです。浅見さんは横瀬町に深い繋がりがありますが、極端な話、浅見さんのお仕事はどこでもできるものですよね。大事にしたい土地との繋がりについて、浅見さんはどうお考えですか?

浅見:横瀬町に骨を埋めるとは決めていませんね。もちろん特定の土地にフルコミットすることも大事だと思いますし、別の土地に移動するという選択肢を持った状態での観点では違うものができると思うんです。

僕はその方が心身ともに健やかですし、その土地に注力できるんです。地元の消防団やお祭りに参加する人から見たら関わり方が希薄だと思われているかと思いますが、それが僕の関わり方なんです。でも、横瀬の町も人もすごく好きなんで、たとえ別の土地に行ったとしても、縁が切れることは絶対にないと思っています。

小出:糸魚川に来て、かなりの年月が経つので周りからは「そろそろ糸魚川に骨を埋める覚悟はできたか?」と聞かれることもあるんですが、それにとらわれる必要はないわけですね。

渋谷:今回のイベントに来れない人も多いんですが、そんな人達に少しでも関わってもらえる環境作りも大事ですよね。0か100かではなく、1で良いから関わってもらう。

山崎:今回BASE968が解散して、みなさんはそれぞれの道を歩み始めたわけですが、それで良いんでしょうね。「ずっと糸魚川にいてくれ」だとか「糸魚川市民になってくれ」とは言わず、これまで糸魚川大火からの復興を引っ張ってくれただけで十分だったんですよね。

これまでこんな活動をしてくれる人達は糸魚川にいなかったんです。なので、どうしても皆さんを紹介したくて、この『糸と魚と川』への出演をオファーしたんです。何度も断られましたけどね(笑)

矢島:念願が叶いましたね(笑)

◎『楽しい』が熱を生む

山崎:次に活動に必要なお金の話をしたいと思います。みなさんに共通しているのは「お金はないけれどアイディアがあった」これが鍵だと思うんですよね。浅見さんがリノベーションした建物など改めて詳しくお聞かせいただけますか?

浅見:僕は、ある程度自分の事業で生計が立てられるので時間の融通が利くんですよね。コップの水理論のように、自分の中の水が溢れていないと誰かに分け与えられないんですよ。自分を満たせているというわけですね。

なので「資金が潤沢でなくても楽しいと思えることに注げる水がある」ということが大切ですし、今後も続けたいです。ですが、これは誰でも出来るわけではないので、色々とやり方は考えていかないといけないと思っています。

山崎:「口は出すけど金は出さない」という人が多い中で、身銭を切って動くということが大切なわけですね。

渋谷:ここでネット視聴者の方からの質問を拾いたいと思います。Uターンして地元に帰ってきたときに新しくビジネスを始めやすい環境って、どうやったらできるんでしょうか?

浅見:色々な稼ぎ口を持つことが大事ですね。たとえばカフェをやろうとしたときに、脱サラして全て捨てて起業する必要はないと思っています。週に2回お店を開いて、他の時間は別の仕事をすることで生計を立てることが出来て、リスクを減らすことが出来ますよね。

特に今のご時世はリモートワークが流行っているので追い風なんですよ。少しエクセルが出来たり、少し文章を書いたりするだけで収入を作れるんです。ただ、多くの人はその手段を知らないだけなんですよ。

渋谷:BASE968の皆さんはいかがでしょうか?

小出:浅見さんの話とも重なりますが、やはり地元の方を相手にするビジネスをするのであれば、他の仕事をしつつ、まずは地元の人との繋がりを作る必要があると思います。そのほうが大きく失敗することはないのではないでしょうか。

野村:やりたいことを始める時って一番エネルギーがあって勢いがあるときなんですよ。ですが続けることって凄く大変で、続けるために必要なのが複業だと思います。やりたいことが明確ならスタートは切れるし、走り始めてしまえばいいんです。本業の他に、アルバイトをしてでもやりたいことをやるんです。

山崎:これが野村さんの『熱』というわけですね。素晴らしいです。ここでもう1つ視聴者からの質問を拾いますね。矢島さんの周りに「何かをやりたそうな人がいる」時に、どうやって引き出すのか詳しく知りたいということです。

野村:矢島さんはただ交通整理をしているだけなんですよ。自分の道に迷ったり、渋滞している人をスムーズに通してあげるんです。

矢島:代弁ありがとうございます。そんなふうに言われて自分でもスッキリしました(笑)

野村:ある人から「BASE968が無くなっても、同じようなことする人が出てきやすくなる」と言われたことがあるんです。浅見さんとまったく同じでなくても、同じようなことを代わりにやれそうな人っていますか?

浅見:いないですね。でも、いなくて良いと思っています。それは僕がいなくなってから考えればいいことなんですよ。

野村:私たちも自分たちがやめたらどうなるだろうって不安はあったんですけれど、いざやめたらすぐにやる人が出てきたんですよ。なので先ほど話が出た町の新陳代謝を早めるためにも、やめたりいなくなったりすることって、すごく大事なんだと再認識しましたね。

山崎:同じ人が同じ事を続けるよりも新しい人が入ってくることでアップデートされることが大切なんですね。

小出:さきほど50歳までFun(楽しむ)を積み重ねて生きていくという話がありましたが、その先に何を見ているんでしょうか?

浅見:いくつかありますが、基本は今の状態が続くことが良いと思っています。今は広告などクリエイティブ関連の仕事をしていますが、仮に70歳まで生きるとしたら、もう2つくらい全く違うことができると思っています。具体的には、音楽や演劇のようなエンタメをやりたいと思っています。

ホームページなどを作って喜ばれることはあっても、その人の魂を揺さぶり、人生を変えるような体験はできないんですよね。そんなふうにチャレンジしたいことはありますが、根幹にあるのは自分が楽しいと思えて、誰かのためになることなんです。ただアウトプットの仕方が変わるだけですね。

山崎:横瀬町の町長になるのはいかがですか?

浅見:それも面白いかもしれませんね(笑)

渋谷:やっぱり『楽しい』は大事ですね。他の地域もそうですが、楽しんでいるところに人が集まるしニュースにもなりますよね。今回のテーマである『ヒト×ヒト=コト』に繋がりますが、面白い人が集まれば、面白いことが起きるし、周りで見ている人も「自分たちもやっていいんだ」って気持ちになるんですよね。みなさんは、その先駆者なんだと思います。最後に浅見さんからメッセージをいただけますか?

浅見:今日は色々な話が聞けて楽しかったです。実際にプレイヤーとして活動されていた方は言葉が違いますよね。愛とか熱なんていう魂の籠もった話は、すごく共感できるし、こんなふうにシェアできる機会は貴重だと思います。なので、全国の同じような人達と有機的に繋がって、また面白いことが出来れば、糸魚川も盛り上がっていくと思います。

と締めくくり、今回のイベントは幕を閉じました。

今回のイベントを動画で観たい方はこちらから。
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https://www.youtube.com/watch?v=V6y3YwdOdAw&list=PL2BC90A7DAEC7287F&index=1&t=2112s

『糸と魚と川 Vol.07』の記事はこちら。
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https://note.com/ito_sakana_kawa/n/nc9a853772936