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アイドルタイムいとぶろ7.5話

 二十五歳になった。
 二十五歳になったけれど、家族からは愛されて育ったし、自分を嫌う子供じみた幸福時代は終わっていたので、コンビニエンスストアでショートケーキとワインを買って誕生日を祝おうとしたが、蝋燭がなかった。
 誕生日ご愁傷さま。
 今年はコンビニエンスストアでショートケーキすら買えなかったよ。
 二十五歳の誕生日に自由にケーキを食べられないのは悲劇だ。
 さらに二十五歳の誕生日に小説をクビになるのもまた悲劇だ。
 一番好きな小説の冒頭すら真似ることができない事が悲劇だ。
 悲劇だけは嫌だ。悲劇なのだけは嫌だった。
 誕生日なのに。
 二十五歳なのに。
 二十五歳にもなって、「夢川……ゆい」「夢川ゆい、疲れちゃったな……」「夢川ゆい、死にたい……」から一向に更新される様子のない独り言のレパートリーに頭を抱える。成長、ゼロ。感性、ゼロ。未来、ゼロ。ゼロ、0、0000000000000……。
 積み上げてきた年数 ✕ 0 = 0
 本当に、心底恐ろしいことに、それが僕のここまでの人生のすべてだった。
 小説家、高橋源一郎がはじめて書いた小説は失敗だった。競馬して、執筆して、飲酒して、心の奥底で、「どうして自分はこんなつまらないものを書いているんだろう」と思いながら書いた小説は、しかし、ポストに投函された瞬間他者となって立ちあらわれた。
 今日はじめて心配になったが、そうした普通に幸福な人生が自分のもとにおとずれる可能性は、もしかしたら低いのではないか。

「初投稿!これからどんどん記事を更新していくのでよろしくお願いします!」
アイドルタイムいとぶろの記念すべき第一回はいとぶろの完結と同時に、期待されつつ始まったが、いとぶろの完結からわずか一時間後に記事が投稿されたため、完結の余韻に浸る暇がない、卑しい、という理由で炎上した。僕はこの炎上から、やり方を間違えるとどんなに良いものを作っても誰にも見向きもされないのだという世界のルールを学んだ。「100日後に死ぬワニ」はいとうくんの……パクリ……。

「まじで書くことがない、ノリ以外なんにもねーわ俺のバース」
いとぶろを完結させた以上、いとぶろと同じことをするわけにはいかない……。残された道は……ファッション系ユーチューバーとしての大成しかない……。と、意気込んでいるうちにファッション系ユーチューバーがオワコンになってしまった。ユニクロユーの台頭により、世界は没個性化した……。アイドルタイムいとぶろ記念すべき第二回はそんな僕の悲観を書いた……気がする。本当は本当に買い物がやめられなくなって、僕の心の隙間を埋めてくれるのは物理的充足だけ……という状態だったので、買ったものを紹介するくらいしか書くことがないだけだった。本当にオワコンになってしまったのは、僕だった……。

「「神は細部に宿る」って君は遠くにいる僕に言う 僕は泣く」
アイドルタイムいとぶろ記念すべき第三回はアイドルタイムいとぶろの登場人物勢揃いという非常に豪勢な構成で迎えられた。登場人物の紹介、新たなスタートを書いた記事であるのに、当時僕自身が本当に疲れてしまっていて結局いとぶろのパクリにしかなっていないのが反省点。はい、残念。このバースに答えなどないよ、ということなのだった。

「未来の出来事をリリックに書いていくように」
ぐちぐちと気持ち悪い低俗な不安や文句を垂れ流すだけの文章が並び、いけない、これは危険……っ!またいとぶろのパクリになってしまう……っ!と途中で気づいたのか、パンダが登場する。膿はいとぶろで出した全部。この人生闘うイラストーリー・ノベルスマガジンという意識を漠然と持ち始めたのはこのあたりだったような気がする。タグに「#リハビリ」とついていて、これは重要なファクターです!リハビリならしょうがない、とみんなに思われたかったのだと思う。

「晴れの日の日曜日(2019/12/02)」
「やっぱこいつ酸っぱいわ。もうダメだ。酸っぱい。と箸を投げてしまっていたかもしれない。」というラインが綺麗に決まっていて実はあとのところはわりとどうでもよかったりする。呂布カルマとジブラを同時にサンプリングすることでフリースタイルダンジョンを過去のものとした……。偉大な一勝。

「Off-Whiteの服を着ることをやめられない美少女キャラクターたちへ〜『屍人荘の殺人』を読んで〜」
アイドルタイムいとぶろ記念すべき第六回はなんてことのない本の感想に終始していて、正直完全に才能が枯れた……と思った。全部社会が悪いのだと思った。本当に疲れていた。完全に打ちひしがれ、第六回を最後に、アイドルタイムいとぶろは長い休止期間に入る。

「みなさん、あけましておめでとうございます。」
三年もの空白期間を経て、アイドルタイムいとぶろ、まさかの復活。なぜここまでキングオブプリズムのオタクにキレているのかは謎。一体、何がここまで気に喰わなかったんだろう……。たまに僕は布団のなかで一人でキレていて、これも寝る前にアイフォンに書いた文章をそのまま載っけたものです。

「友とコーヒーと嘘と胃袋」
アイドルタイムいとぶろ記念すべき第八回にして、アイドルタイムいとぶろ最高傑作。純粋百パー怒りだけで書いたら香賀美くんを殺して食べていた。キングオブプリズムのオタクに対するキレと、キングオブプリズムシャイニーセブンスターズの感想と、祈りとを完全に書ききってしまったので、以降、僕がキングオブプリズムについて触れることはなくなる。

「2020/2/3(月)_雨」
久しぶりの日記形式。誠実に日記を書いた結果、なぜか未来のことまでリリックに書いてしまい誰にも読まれなかったという怪作。いちごちゃんが「今、ロフトの上でウダウダ暮らす鬱病のパンダの話を書いてるんですけど、」と云っていてびっくりする。実はアイドルタイムいとぶろの登場人物は全員、書く/書かれる関係性にあり輪になっているという裏設定があることを久しぶりに思い出した。いちごちゃん⇒パンダ⇒僕⇒いちごちゃん、というふうに。

「雑多メモ(2020.02.07〜02.09)」
梶本レイカと『うみねこのなく頃に』はすごいんだってことをみんなに知ってほしいという純粋な願いによって書かれた記事。竜騎士07はふろしきを広げるのはうまいけど畳むのは下手な駄作家ではない。愛があれば真実なんてのは語られなくてもよいのだ。そんなことは全然、ぜーんぜん、どうでもいいことなのだ。だから、みなさん、『高3限定』を読んでください。少しだけ僕のなかで映画熱があがっているのを感じる。

「俺は子供の頃からずっと天才でいる」
アイドルタイムいとぶろ記念すべき第十一回にして、アイドルタイムいとぶろ最高傑作。純粋百パー希望だけで書いたら香賀美くんの姉になっていた。海猫沢めろん先生がいいねをくれたことでも有名。途方もなく嬉しかったけど自慢する相手がおらず悲しかった。この記事はいとうくんも月イチで読み返しているけど、面白い。

「俺はたまにひとりになりたい」
久しぶりの日記形式。誠実に日記を書いた結果、途方もない長さになってしまい誰にも読まれなかったという怪作。読み返してみてもゴーシャのナイロンジャケットを買ったことしか伝わってこないので感動する。読まれることを拒否する文章に対する憧れがあるのでこれはこれで貴重な一步である。

「俺はたまに大阪に帰りたい」
久しぶりの日記形式。誠実に日記を書いた結果、とくに何の面白みもない文章になってしまい誰にも読まれなかったという怪作。僕たちはここには無い何かに向けて祈ることしかできないし、ここには無い何かに向けて祈りたい、と祈っている。

「へやキャン△がおわっちゃったよ……」
リモートオフィスについて書いた記事。このあたりから少しだけ社会に触れていたいという欲求が生まれ始める。

「家の中ちょー楽しい、家の中が一番好き、でもみんなで桜見たかったよ」
生まれてはじめて本を横に開いて文章を書いた。子供ではなく、かといって老人でもない、何者でもないがゆえに何者にも読まれうる耐久性を持った太宰治の小説。この記事ではその威光にあやかり誰もが読むことができる、そんな記事を目指したが、結果、誰にも読まれなかったので悲しかった。

「ライトノベルを読んだらライトノベル作家になりたくなったのでライトノベルを書きました。」
ブログとしては長すぎ、ライトノベルとしては短すぎる、という中途半端な結果に終わってしまった意欲作。反省しているが、青春を喰うパンダの設定は気に入っているのであと28回くらいは使いまわしていきたいと思った。

「家のなかほんましんどい、家のなかが一番きつい、ほんとにみんなで桜見たかったよ」
ずっと家のなかにいて気が狂いそうなとき、優しく寄り添ってくれたのはアニメだった。アニメはすごい……アニメを見てないやつはカス……アニメこそ芸術……という純粋な気持ちで書いたらただの感想文になってしまった。小学校の作文コンクリートに投稿したら銀賞だったのでわりと満足している。

「みなさん、いかがお過ごしでしょうか。」
社会的に大きな出来事が起こったとき、僕たちに必要なのは反射神経だと思っている。ので、百パー反射神経で、すべてのコロナ文学を過去のものにする……という偉大な構想のもと書かれた記事。俺が一番最初にコロナ飽きたわ。結果、僕のスピードについてこれたのは鴻池瑠衣と金原ひとみだけだった。今後、コロナを小説の題材にする作家を僕は心底軽蔑します。反射神経で走り出せないのならそもそも走るべきではないのだ。

「【GW特別企画】パンダ、起きろ!【フェイトグランブルーファンタジーシンデレラガールズやる】第一回」
社会的に大きな出来事が起こったとき、僕たちに必要なものは反射神経だと思っている。ので、百パー反射神経で、すべてのコロナ文学を過去のものにする……という偉大な構想のもと書かれた記事。本当はただ、みんなと他愛もない話をしていたいだけ……。この記事のヘッダーにいる後藤ひとりさんがすごく可愛い。

「【GW特別企画】なんでこんな悲しい気持ちになるのにやめられないだろう……【フェイトグランブルーファンタジーシンデレラガールズやる】第2回」
本当はただ、みんなと他愛もない話をしていたいだけ……。そんな純粋な想いからはじめたゲーム配信だったが、あまりにもどうでもいい話をだらだらとするので読み通すことが困難ということに気づく。すでに暗礁に乗り上げたゲーム配信。僕のゴールデンウィークは一体、どうなってしまうのだろう?という不安を感じながらその日の夜はベッドに入ったのを覚えている。

「【GW特別企画】鋼鉄の朝【フェイトグランブルーファンタジーシンデレラガールズやる】第③回」
ベッドに入ったものの眠れず「鋼鉄の朝」を聴いていたら完全に今後のゲーム配信の展開を思いついてしまった。第③回にしてようやく、ゲーム配信中たまに聞こえてくる声の正体とかも思いつく。パンダのこととかも。アイドルタイムいとぶろは全部つながっていたんだ……。興奮でこの日は5時間くらいしか眠れなかった。

「【GW特別企画】ブログごっこはこれでおしまい【フェイトグランブルーファンタジーやる】第よん回」
第2回の時点でゲーム配信には未来がないことを完全に悟った僕はやはり語り始める。第③回はその助走であった。あと、第よん回から"フェイトグランブルーファンタジーシンデレラガールズ"が"フェイトグランブルーファンタジー"に変わっているのは本当に単純にシンデレラガールズのことを忘れていただけだが、誰もそのことを指摘しないので、ま、いっか、と思った。所詮、3,4人しか見てないゲーム配信なのだから。

「【GW特別企画】*tears drop memory card*【フェイトグランブルーファンタジーやる】最終回」
長かったゲーム配信の最終回にして、アイドルタイムいとぶろ最高傑作。東京で受けた刺激。ほんとみんなありがたいという気持ちで書いていたら四肢をすべて失っていた。みんなでかんがえてみようよ。なぜならば、その時というのはいつまで待っても永遠にやってはこないのだからだ。僕たちは踊るのだ。暗い夜が明けるまで。明るい朝がやってくるまで。一人で。しかし満足して。
きっとすべて間違っていなかったのだと信じるすべてのブラザーたちにピース✌️チョキン。

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いとうくんのお洋服代になります。