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アイドルタイムいとぶろ

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いとうくんの楽しい日々2
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2020年6月の記事一覧

でも僕たちはまだ子供

でも僕たちはまだ子供

 千駄木に引っ越した。
 6月という、何かを始めるにはあまりに遅く、かと云って終わらせるには少しばかり早急な、そんな季節だった。
 こういう日は、大抵いつだって雨だ。
「あ、柳さん、そのダンボール濡らさないでくださいよ」
「ああ!?無茶だろ!」
 叫びながら、それでも柳さんはなるだけダンボールが濡れないよう、前屈みになり玄関へ小走りで向かってくれる。
 僕も柳さんを見習い、トラックの上に積み上げた

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いつまでぼくらは子供

いつまでぼくらは子供

 母親が部屋に飛び込んできて「お父さん、刺しちゃった……」と泣き叫んだとき、ぼくはPUBGをやっていて、PUBGは楽しいので、だから、今、この瞬間の楽しい時間を邪魔してほしくないという気持ちになった。
 それにお母さんがお父さんを刺すなんて、そんなの母親がお父さんのスマホから知らない女の子(ぼくと同い年くらい?)の裸の写真を見つけてそれに逆上した父親がお母さんを思い切り殴りつけてそのせいでお母さん

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葉桜が散った

葉桜が散った

 17歳になってはじめて小説を書くことができた。それは同時に、今まで書いてきたものは全て小説ではなかったということでもあるが、しかし、そんなことは最早些事だ。これこそが小説。これでこそ小説。単純な僕は、これで就職も大学受験もしなくてよくなると、本気でそう信じた。僕は選ばれたのだ、僕は夢を掴む側の人間なのだと確かに実感した。
 だから、25歳の僕が、
「え、今?会社で働いてるけど?」
 と云ったとき

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