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Yes Andと、法務のわたしのこと。

 この記事は、「裏 法務系 Advent Calendar 2020」(裏legalAC) 13日目のエントリーでございます。

 BUSINESS LAWYERSの松本慎一郎(@matsumoto416) さんからのバトンを受け取らせていただきました!
 わたしはもともと芸術専攻(後に法学士も)だったのですが、いつの間にか、法務という職種にやりがいを感じて、先進的中堅IT企業のすみっこで法務業務をしています(詳細はこちら)。短い時間ですが、どうぞよろしくお願いいたします!
 松本さんからのバトン、大切につながせていただきたいと思います。

 さて、法務といえば、弁護士(国内、海外含む)としてだけじゃなく会計士とかエンジニアとしてのスキルもお持ちだとか、世の中には信じられないくらい優秀な方々がいらっしゃいますよね!

 そんななか、わたしのような超絶!一般人が法務についてなにを語れるんだろう~と考えたところ、尊敬する先生から、芸術(エンタメ等)から法学に移行した経歴はなかなか特異ですとお聞きするので、こういう稀有な機会ですから、わたしの体験をふまえて、わたしなりに法務についての考えを話してみたいと思います。

1.Yes Andって?

 まず、わたしが初めにご紹介したいのが、しばらく前に日本でも流行った(いまも流行っている?)デザイン思考、アート思考と呼ばれる思考法のうち、ずいぶん前から使われているのが「Yes And」という、アイデアを発展させてゆくのにかなり有効なコミュニケーションの手法(マインドセット)です。
 「Yes And」と書くとおり、相手のいうことに対して、「そうだね!そして・・・」と肯定的につないでゆくというシンプルなもので、これを使えば、イノベーションに期待できるとか、イノベーションとまではいかなくても、そのアイデアが膨らむといわれています。
 スタンフォード白熱教室フォーブスでも紹介されているマインドセットだし、とくにクリエイティブな世界のかたがたならご存じのかたが多いんだろうと思います。とくに、インプロ(Improvisational theatre:即興劇)で取り入れられている思考として有名だと思うので、演劇の世界のかたがたもたくさん知っている(当たり前といわれてしまうかもしれません、すみません!)んじゃないかと思います。

1.Yes Andとのであいのこと

 わたしが、そんな「Yes And」に初めて出会ったのは、そのインプロででした。
 当時のわたしは、漠然と、表現やコミュニケーションってなんだろう?と思って、知り合いを通じて、企業向け人事研修も行っているインプロの先生を紹介してもらい、インプロ体験をさせていただいたのでした。
 体験のさいしょにその先生から言われたのは、「絶対に相手のいうことを否定しないでください。とにかく、『そうだね!』『いいね!』ってほめてあげて、そのほめてあげたことについて『そしてこうしよう!』っていうように肯定したまま返してください。」ということだけでした。

 な~んだ、簡単じゃん!って思ったかた、すごいです。センスあります。当時のわたしは、頭では思いましたが、じっさいにはぜんぜんできませんでした・・・。。
 たとえば、好みの違うAさんとBさんがいたとして、Aさんが『うちでケーキを買ってきてゴロゴロテレビみよう!』と言ったなら、好みの違うBさんは『ごめんね、実は甘いの苦手なんだ』『いいね、でも外に遊びにいきたいな』って言うのが普通だと思います。つまり、「No Because」「Yes But」なんです。このとき「Yes And」でならどうしますか?

 短絡的に「No Because」「Yes But」をだしてしまうと、ケーキの案は、ケーキではない案を出すか、ケーキで妥協してもらうかの二択しかありません。ゴロゴロテレビをみる案も、外出等するかテレビで妥協してもらう二択しかありません。Bさんとしては素直な気持ちですし、AさんもBさんも、どちらも悪いわけではありません。でも、これではたしかに、Aさんの話がつぎに発展してゆきません。しかも、「No Because」「Yes But」で返されたAさんは、おせじにもいい気持ちになったとはいえません。

 でも、日常のコミュニケーションでよく使われるのは「No Because」「Yes But」といわれています。わたしもわかる気がします。じぶんが理解できない相手の発言に対してYesだなんていったらウソつくことになりそうだし無責任な気もしてくるし、「No Because」までとはいわなくても「Yes But」と論理的に説明してあげたほうが、相手にとっても良いはずと思うところがあります。

2.法務をしてきて感じていたこと

 とくに大手企業の法務部にいたときの経験ですが、当時の法務部は「No Because」「Yes But」をいうひとの集まりでした。
 コンプライアンスの責任を負う部署として、法違反をしそうな部署等に対して明確にNoといい、取引において著しくリスクのある条項等があるときにも相手方に対してきっぱりとNoを突き付けるべきで、このような対応は原則間違っておらずいまも原則的に正解だと思っていますし、わたし自身もたいへん勉強させていただいた企業です。
 法務あるあるかもしれませんが、相談してくれる事業部門の意図等がわからず「No Because」「Yes But」を言ってしまう(場合によっては悪口になってしまう)ところがあり、事業部門も事業部門で、時として、法務部門のことを柔軟さに欠ける堅物とか悪い事実のみを取り上げて返事が遅いとか言い始めるなどして、事業部門との溝が深くなりやすい傾向がありました。
 まさに、前述のAさんとBさんの状態で、二択しかなく、いい意味でも悪い意味でも、その相談がそれ以上発展することはなかったのでした。

 お互いにいいところがあるのに、それがうまく活かされないのはもったいないことです。
 これからの法務は、有名な経産省の報告書で表現させていただくなら、①ガーディアン機能、②ナビゲーション機能、③クリエーション機能、のうち、前述の場合には、①を実現している状態であることはわかりますが、②は場合によっては実現できるものの、③は、未知数です。

 ③は、これからの法務は、「No Because」「Yes But」ではなく、「Yes And」とすることで、新たな実力を発揮できるところが多くあるのではないでしょうか。そう、『「No Because」「Yes But」になる理由いいね!その理由に「Yes And」も加えよう!』という考えで、わたしはもっとプレゼンスを発揮していきたいと思っていますし、実際に発揮もできてきていると思うのです。

3.法務としての責務の全うって?(私見)

 企業の法務という立場だと、管理部門のなかで最も自社のビジネスに広範に詳しくなるので、守りも攻めもできる管理部門は、正直、法務という部署しかいないと感じています。
 だからこそ、会社や担当者がやろうとしている”その物語”を、二択にしてしまうことはもったいないので、まずは受け入れたところから始めて”三択目を作り出す”ことが、わたしにとっては非常に大事になっています。拙いわたしの経験からですので、すべてとはいいませんが、これによってさらに良くなることもあるのではないかと思っています。
 このコロナ禍の今、わたしが暮らす東京も確かに感染者が増えてきているようで、わたしも同様に、外出することが不自由するようになりましたが、蔵書数が多すぎて無駄かなと思っていた自宅の書籍が、まさかのリモートワークになってものすごい力を発揮してくれるようにもなりました。もう、この日のために、わたしは法律書等を買い集めていたのか、と思えるほど!というのも、できないといわれてムリかと思っていたことが突然できるようになるこの変化の激しい時代ですので、そのビジネスと管理との間にいる、一見相反する守りも攻めもする法務だからこそ「Yes And」が有効なんじゃないかと思います。 

4.Yes Andで、相手方を幸せにみちびく

 さて、前述のAさんとBさんの件を「Yes And」で回答する場合、あなたならどのように答えますか?問題点をシンプルに解決するか、それとも、思いもしない突飛なアイデアで解決するか、いずれにしても、まずは否定せず、受け入れ、受け入れたことを受け入れたままアップデートしてみましょう。考えると、ワクワクしてきませんか?
 わたしは、明司さんの「希望の法務」と、水野先生の「法のデザイン」に強く感化されています。
 コロナ等世の中は色々とありますが、こうして、優秀なみなさまの知見等にも影響されながら、じぶんがやりたいことや、たくさんのかたが幸せに思えることを実現できるよう、「Yes And」を実践してゆくことが信条です。

 ほんのすこしでも、こういったことを書くことで、どこかのどなたかが、うまくいった!といえるきっかけを作れたならすごくうれしいです。ここでやっていることも、わたしにとっては「Yes And」のひとつなんです。

 毎月、企業法務研究会というのを開催していて、Meetで各種法令についてや法務的対応方法などについて、議論しています。
 大手の法務の方やスタートアップの法務の方や、有名な若手弁護士さん、社労士さん、弁理士さん、税理士さんなどと、その後の飲み会も含めて楽しくやっていますので、ご興味おありの方いらっしゃいましたら、ぜひお気兼ねなくメッセージいただけたらうれしいです。一緒に議論しましょう!
 長文、お付き合いくださりありがとうございました!

明日は「maki_y(@maki_nov16)」さんです。よろしくお願いいたします!

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