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HADOの歴史について語ろう。〜2017年編〜

前回はHADO元年である2016年のHADO WORLD CUPを戦術的に振り返るnoteを書きました。

今回は2017年編と題して前回同様HADOの歴史について振り返っていきます。
しかし、1大会のみだった2016年と比べてより規模が大きくなり、大会数も増えています。その為、グランドスラムと呼ばれている大型大会を中心に振り返っていきます。

という訳で、HADOチームわちゃわちゃ☆ピーポー所属プレイヤーのぶちょう。と申します。 よろしくお願いします。

2017年SPRING SEASON

HADO SPRING CUP2017

事前エントリーした13チームの出場。

2017年HADO WORLD CUPの予選も兼ねており、優勝チームにはW杯出場権が与えられた。

現在でも公認チームとして活躍している性別迷子が初出場しており、ベスト4に。

決勝戦は2016年のHADO WORLD CUPと同様、ランニングクラブ vs SLAMDIVA

1セット目はランニングクラブが先取するも2セット目と3セット目を連取したSLAMDIVAが逆転優勝で雪辱を果たし、HADO WORLD CUP2017の出場権を獲得した。

当時のシステムについて

・ステータスの導入
バレットスピード (エナジーボールのスピード)
バレットスケール ( エナジーボールの大きさ)
チャージスピード (エナジーボールのチャージゲージが溜まる速さ)
シールドストレングス (シールドの耐久強度)

以上の4種類に最低1ずつ、合計10までステータスパラメーターを振り分ける事で能力をカスタマイズ出来る様になった。

・シールド
1人につき3枚のシールドが貼れるようになった。
また、シールドの大きさも全身を守れるような長方形に変更された。

・自動装填の廃止
自動装填ではなく、腕を上げている間だけチャージがされるように変更された。

・ブーストタイムの廃止
試合時間残り20秒の時点から装填不要でエナジーボールを撃てるシステムが廃止された。

・同点の場合
個人評価点の合計が高い方の勝利。

(どれだけエナジーボールを当てたか、シールドでどれだけエナジーボールを防いだかなどが評価点に換算される。)

当時の戦術について

新しく追加されたステータスシステムによって、個々人がプレイしやすい様にパラメーターをカスタマイズ出来るようになった。

これによって、現在までステータスを中心に戦術的なメタゲームが回っていく。

しかし、この時点ではまだ「チームとしてどう戦うか?」と言うよりかは主に「自分にとって最適なステータス」で戦う事こそが戦術であった。

また、前バージョンと異なり、シールドが実践レベルに引き上げられた事は大きく、各チームがシールドの活用を試みていた。

そのため、トレンドは両刀型と呼ばれる各パラメータにバランスよく振り分けたステータスであり、動きとしてはコート前方にシールドを貼ってそのままシールド裏から攻撃するという形が多く見られました。

そんな中シールドを貼るために前に出るという動きが生まれたため、接触等が無いようにある程度チーム内で動きの約束事が必要になり、全体的にポジショニングが整備されはじめました。

具体的には1トップ2ボトムや2トップ1ボトムと言われる様な三角形、逆三角形の形が目立ちました。1トップないし2トップの前衛プレイヤーは前方にシールドを貼り、そのポジションから攻撃。後衛プレイヤーはそのシールドである程度守られている位置に留まり、攻撃するという動きでした。

そんな中で特にシールドを上手く活用していたのが優勝チームのSLAMDIVA
両刀型と呼ばれるステータスだけではなく、一人がタンク役としてシールドを貼るのに専念するステータスを用い、その壁にはアタッカー役が入るという、現代HADOでも見られる戦術も活用していました。

そんな中、決勝での対戦相手となったランニングクラブはシールドを一切使わずに勝ち上がってきました。ランニングクラブの戦い方はエナジーボールのスケールとチャージにパラメータを振り分けた弾幕戦術。

2016年のW杯で優勝した時同様にプレイヤー同士が重ならない動きと球数の多さでシールド相手にも優位に試合を進めてきました。

そして、決勝では何が起きたのか。
決勝戦のみクリップされた動画がありましたのでどうぞ。

1本目、SLAMDIVAは序盤に両サイド前方にシールドを貼る事で攻撃の為ののラインを高く保ち、一方的に攻撃する事に成功。フォーメーションが横割りシステムのランニングクラブにとってこれは苦しく、特に前衛は攻撃が通らないばかりか相手との距離が近い為に回避が難しく、機能しなくなってしまった。

ここまではデザインされたプレイでSLAMDIVA優位に進んでいたものの、タンク戦術のシールドを弾数の多さで退けてきたランニングクラブが中盤盛り返す。最初に貼られた2枚のシールドを割りきるとそのまま得点を連取し同点に追い付く。

SLAMDIVA側は3枚目のシールドをどの様に使うのかがハッキリとせず、その隙をついたランニングクラブがラスト1秒で逆転に成功し劇的勝利。

2本目、後がないSLAMDIVA、念入りな話し合いの後メンバーチェンジ。

先程とは異なり、最初に2枚のシールドを右サイドに展開。シールド裏のアタッカーが得点を重ねて1本目同様リードを保つ。タンク役は先の反省を活かして3枚目のシールドを早めに展開しようと試みるも上手く貼る事が出来ず、1本目同様弾数で勝るランニングクラブに流れが傾きかける。しかし、なんとか3枚目のシールドを貼り、SLAMDIVAが1点差で辛くも逃げ切った。

そして運命の3本目。

1本目、そして2本目と1点差ゲームを演じた両チーム、さぞ締まったゲーム展開になるだろうという予想は大きく覆された。

1試合目同様タンク役が両サイド前方にシールドを貼り、アタッカーがそのポジションを取ると距離が近く当てやすい前衛、中衛プレイヤーを的確に倒していく。結果、K.O.から復帰するまでの間数的不利なランニングクラブは中々シールドを割れない。その間に得点を重ねたSLAMDIVAが中盤戦までに大きく突き放した。
終盤はタンク役が残して置いた最後のシールドを用いながらセーフティに逃げ切りに成功し大差での勝利。W杯のリベンジを果たした。

SPRING SEASONまとめ

ランニングクラブとしてはW杯では優勝の一因であった横割りのフォーメーションが対シールドにおいては構造的な弱点となってしまう形となってしまった。

前衛的であったフォーメーションの概念の中でも最初に生まれたこの横割りのフォーメーションが今日残っていないのは対シールドにおける構造的弱点によるものと言える。とはいえ、構造的弱点を抱えながらも決勝まで進出してくるなど個人能力が素晴らしいチームであった。

対してSLAMDIVAは他のチームを一歩先んじてタンク役のプレイヤーとアタッカー役のプレイヤーなどステータスによる役割分担を戦術として落とし込んだ他、シールドを貼る位置についても両サイド前方のいわゆる”前角”という現在でも強いとされるポジションの位置的優位を生かして戦えていた。

一部デザイン通りに試合を進める事が出来なかった時の弱さも垣間見えたものの、現在でも通用するモダンな戦術を用いるチームだった。

決勝戦も3戦目までもつれ込んだとはいえ、上手く試合を運べば3戦目のような大勝が出来るチームであり、ストレートで勝っていてもおかしくなかったと感じさせる強さがあった。

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2017年SUMMER SEASON

HADO SUMMER CUP2017

なんと参加チームは20チーム!!
4ブロック制で各グループ1位が決勝トーナメントに進出するというルール。

今回もHADO WORLD CUP2017の予選を兼ねており、優勝チームには出場権が与えられる。

HADO SPRING CUP2017より3ヶ月。
勿論注目は前回大会でも優勝を争ったSLAMDIVAランニングクラブ

ではなく、TNW ATNW Bの2チームでした。

HADO SUMMER CUP2017の直前に行われた店舗大会では何とこの2チームが他のチームを圧倒。TNW Bは優勝し、HADO WORLD CUP2017出場権を確保、TNW Aは惜しくも準優勝でしたが同門でのワンツーフィニッシュを達成しました。

HADO SUMMER CUP2017においてもこの2チームが結果を残す事が出来るのかというのが注目ポイントでした。

当時のシステムについて

・シールドの耐久値が可視化 
シールドの側部にゲージが付き、シールドが後どの位で割れるのか可視化されるようになった。

・K.O.について
4枚のライフを相手のエナジーボールによって失った場合、K.O.となり相手に得点が入り、3秒間の復帰時間を要する。
その際、K.O.された時点でチャージの残量がゼロになる。

・オーバータイムマッチ制の導入
同点で試合が終了した場合、10秒後に始まる1点先取のサドンデスマッチで勝敗を付けるように仕様変更された。

当時の戦術について

TNW ATNW Bが用いていたステータスの役割分けは1タンクと2アタッカーでそれ自体は当時としても取り立てて珍しくはない基本的な戦術でした。

また、戦い方についても基本的にはシールドを用いて相手のエナジーボールを防ぎながら得点を重ねていく今までのスタンダードと大きくは変わらないものです。

しかし、彼らは当時のHADOのシステムを理解し、構造的に強い立ち回りというものを突き詰めたチームでした。

当時のシステムではK.O.されてしまうとチャージが空になってしまう仕様であり、そのため理論上は相手プレイヤーをK.O.し続ける事でシールドを長い時間維持し続ける事が可能となっていました。


TNW A、TNW B は今まではどちらかと言えば偶発的要素が大きかった”4枚抜き”(1発のエナジーボールでのK.O.)を意図的に狙い、また、K.O.からの復帰直後にも4枚抜きを狙う(いわゆるリスポーンキル)事で相手を"ハメる"事に成功しました。

そうしてこの両チームは理論上だけでなく実際にシールドを維持しながら試合を進めることを可能としました。

結果としてTNW BがSPRING CUP王者SLAMDIVAを倒し、決勝トーナメント進出。TNW Aわちゃわちゃ☆ピーポー等を倒し同じく決勝トーナメント進出。

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準決勝は同門対決となってしまったものの両チーム共に予選1位で決勝トーナメントに進出し、実力を示しました。

その準決勝でTNW Bに勝利し決勝戦に進出したTNW Aが、エクスペンダブルズを退けたわちゃごな☆ピーポー(現57☆TOKYO)をストレートで破り、HADO SUMMER CUP2017王者となりました。

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SUMMER SEASONまとめ

HADO SPRING CUP2016ではSLAMDIVAに敗れ、リベンジを誓っていたTNW 出身のチームが席巻したシーズン。

HADO SUMMER CUP2017で優勝したTNW A、店舗大会で優勝したTNW BがそれぞれHADO WORLD CUP2017への出場権を獲得した。

相手をK.O.し続ける事で数的優位を確保する戦い方はそれを意図した練習を積んでいた事もありかなりの完成度を誇っていた。

特に、TNW Aは予選から主にシールドを用いる戦い方を志向していながらも決勝戦ではフルアタッカー(全員がアタッカーのステータス)のわちゃごな☆ピーポーに対して同様に降るアタッカーの戦術でも立ち向かい勝利。
力の差を見せつける形となった。

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2017年CLIMAX SEASON

HADO WORLD CUP2017

出場チームは日本からHADO SPRING CUP2017、HADO SUMMER CUP2017を勝ち抜いた優勝チーム、そして店舗大会とW杯出場プレーオフを勝ち抜いた10チームと海外での店舗大会を優勝した2チームの計12チーム。

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海外チームの参戦は初めてで、名実ともにW杯らしくなった大会。

CLIMAXシーズンから参戦したチームにはあなたって時たま土の香りがする(現iXA/ANATSUCH)や和心など現在トップレベルで活躍しているチームも多い。

また、予選グループはこのようになった。

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SUMMER SEASONにて目覚ましい活躍をしたTNW A,TNW Bとしては同じ予選グループになってしまい、なおかつ強豪のSLAMDIVAがいたのは不幸であった。グループCはまさに死の組と言える。

当時のシステムについて

・K.O.について
K.O.時の復帰時間は変わらないもののK.O.された時点でチャージされていた分は復帰時にも持ちこされる様に仕様変更された。

当時の戦術について

TNW A、TNW Bが新たに持ち込んだ4枚抜きや復帰直後を狙うリスキル(リスポーンキル)は各チームにも浸透し、スタンダードな戦術となった。

シールドを用いてそれらを狙う戦術も相変わらず強力ではあったものの、シールド自体への対策についても各チーム取り組んでおり、以前ほど圧倒的な強さではなくなっていた。

というのも、シールドを破壊しなければ相手ペースで試合が進んでしまう為、チャージやK.O.を避けることの重要性を各チームが意識するようになった。

また、システムの変更によりK.O.されるまでのチャージがリスポーン後にも持ちこされるようになったため、4枚抜きやリスキルを続けても長い時間シールドの維持をする事が難しくなりました。

TNW ATNW Bが得意としていたタンク役+アタッカー役2人という作戦ではタンク役のシールドが割られてしまった後、アタッカーが単純な数的不利になってしまいます。その為、火力に勝るフルアタッカー型の戦術の方がより強いとされる環境になっていきます。

それに伴いフォーメーションについても1トップ2ボトムと呼ばれる正三角形型がトップメタとなり、上位チームで採用されるようになりました。

このフォーメーションはハイリスクハイリターンである前衛のポジションにエースプレイヤーを置き、後衛2人がサポートするというする動きに特化したものです。後衛2人に対して前衛を1人にする事で中央から前衛に広いスペースがあり、相手のシールドに対しても前角や後方中央などに回避しながら対処することが可能になりました。

決勝トーナメント進出チームはAブロック1位のわちゃごな☆ピーポー、Bブロック1位のシャケーザ新鮮隊、Cブロック1位のSLAMDIVA、各ブロック2位の敗者復活戦を制したCブロック2位のTNW B

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決勝戦はフルアタッカー戦術を得意としていたわちゃごな☆ピーポーSLAMDIVA

各チームそれぞれKODAI選手、SHEART選手といった広いスペースを活かせる運動量豊富なエースプレイヤーがいたのも決勝進出の一つの要因と言えます。

両チーム共に前衛エースを抱えるわちゃごな☆ピーポーSLAMDIVAの決勝戦。

1本目の注目はステータス。
お互いフルアタッカーの戦術ですがわちゃごな☆ピーポーの前衛、KODAI選手は3421の弾数が少ない分大きいエナジーボールを選択。
前衛は相手からのエナジーボールが集まりやすいために大きく動く必要があり、そのためエイムがかなり難しいのですがエナジーボールのスケールを大きくする事でエイムがアバウトでも命中するようになり、回避に集中する事ができます。

対してSLAMDIVAは後衛に1441と3331のプレイヤーを配置し、エナジーボールの大きさと数の多さで相手のシールドや立ち止まったプレイヤーに強い戦術を選択します。

結果としてSLAMDIVA側は運動量豊富なKODAI選手を1441の弾では捉える事ができませんでした。前衛エースのSHEART選手も抑えられてしまい、わちゃごな☆ピーポーの勝利となりました。

それを受けて2本目はSLAMDIVA側がメンバーチェンジ。

後衛のステータスも4231と3331のステータスに変更し、より速いエナジーボールで運動量豊富なわちゃごな☆ピーポーの選手のライフを狙いにいきます。

相手選手を抑えられるようになった結果、SHEART選手が一本目よりも自由に動くことができ、得点を量産。同点でのオーバータイムマッチまでもつれ込んだものの、SLAMDIVAが競り勝ち勝利。

運命の3本目。

わちゃごな☆ピーポーは連戦の前衛エース、KODAI選手を下げる采配。
1TOPのフォーメーションには運動量が求められる事もあり、この采配が的中。

これまでの試合では素晴らしい回避で中々エナジーボールに当たらなかった1TOPのSHEART選手をわちゃごな☆ピーポーが捉え始める。

連戦の疲労が目立ったSLAMDIVAに対して総合的なチーム力の高さを見せつけたわちゃごな☆ピーポーがこの試合に勝利し、HADO WORLD CUP2017王者に輝いた。

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CLIMAX SEASONまとめ

実はわちゃごな☆ピーポーKODAI選手は当日別件があり、HADO WORLD CUP2017には出場できない予定でした。
しかし、決勝トーナメントに間に合い急遽出場出来ることに。

出場できない予定だったエースが突如現れ、モチベーションが上がっていた事やエース自身が予選に出場しておらずフレッシュな状態だった事も戦いの妙だったと言えるのではないでしょうか。

KODAI選手は大会内で一番運動量があった選手として個人賞、Most Running賞を受賞。1試合での運動量は83mにも及んだと言うからその働きは推して知るべしです。

また、SLAMDIVASHEART選手も個人賞のBest Attacker賞を受賞。
大会を通じて1TOPのアタッカーとしてチームを決勝まで導き、エースとして突出した働きを見せていました。

また、最後の個人賞としてシャケーザ新鮮隊パンちゃん選手(現ヒュブリス所属)がBest Defender 賞を受賞。環境の逆風を受けながらもシールドにステータスを5振り分ける純粋なタンク役としては唯一の決勝トーナメント進出を果たしました。

しかしここに挙げられなかった個人として僕はTNW Bひょうが選手(現EXPENDABLES所属)を挙げたいと思います。

戦術としてタンク役を用いると攻撃力が足りないためシールドを破られた後にフルアタッカーの戦術に対してアタッカーの数的不利で押されてしまうという欠点を抱える中、2233という両刀型のステータスを唯一使っていたのが目を引きました。

シールドを使いながらも最低限攻撃の役割も持てるステータスを用いる事でタンク戦術の構造的な欠点をカバーしていたのが印象的でした。

フルアタッカーの戦術を極めていた上位2チームには残念ながら及びませんでしたが、3位決定戦ではタンク役を置く戦術を用いたシャケーザ新鮮隊に勝利し、見事3位入賞を果たしました。

あとがき

今回、2017年のHADOを見返した中で当時は理解しきれていなかったメタの周り方など新しい発見が多くありました。

このnoteは僕の私見であり、戦術の変革やメタの読み合いに関しても事実とは異なる部分もあると思われます。人の視点の数だけ正解や注目ポイントというものがあるはずです。

僕としても当時のプレイヤー視点での考えや反対に当時の環境を知らない人の感想や考察も聞くことが出来たらと思います。

それではまた、HADOの歴史を語ろう。〜2018年編〜でお会いしましょう。

貴方にとってこのnoteが有意義であれば幸いです。 普段は「HADO」というスポーツのプレイヤーをしています🍌  スキ、フォローで応援頂けると嬉しいです