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構築家ジャンプルーヴェにミニマリズム思想を感じました


週末にジャンプルーヴェ展に行ってきました

東京都現代美術館(MOT)で開催中です
開催:2022年7月16日(土)ー10月16日(日)

展示会を大きく分けると前半が椅子の展示、後半が彼が設計した建築の展示、そして最後に当時1970~80年あたりに撮られたジャンプルーヴェのインタビュー動画があります

ジャンプルーヴェと聞くと椅子が有名で、展示会のメインビジュアルも椅子を大きく映していてデザイナーなのかなというイメージがありましたが、建築作品が刺さりすぎて、いい意味でイメージを覆されました

彼の建築はプロダクトデザイナーが作った作品といった印象です

なんというか、展示を見ていて、自分のモノ選びの基準にとても似ていると感じました

自分はミニマリズム的な思想が好きで、家具を買うときもシンプルなだけではなく、軽く、丈夫で、構成しやすく、管理しやすい、無駄のない、かつ自然に近いデザインを選ぶのですが、それらの条件に驚くほど合致した建築家でした

ジャンプルーヴェで刺さった作品

ジャンプルーヴェの本質は素材選びと無駄のない構造の構築であり、それの思想が強く活かされているのはプレハブ建築でした

彼のプレハブ建築は以下のような特徴があります
・再構成可能な素材
・一人で運べる素材
・数人いれば一日で組みあがる
・最小限の無駄のない構造
・パーツが集まって全体を構成するアトミックデザイン
 →風呂やキッチンもパーツとして考える
・軽く、安い なるべく鉄を使わない

こういったものを現代に置き換えてみると、キャンプ用品に近い発想だなと思います
簡易的なプレハブ住宅は軽くて、丈夫で、どこでも建てられるので、実際に軍の施設としても使われていたようです

モジュールシステムの設計図

モジュールシステムは、アプリのデザインなどにも使われていて自分の分野にも共通するテーマで面白いです

ポルティーク型


そしてプレハブのプロダクトを実現するために、屋根となる架構システムを発想します
(ポルティーク型、ベッキーユ型、シェル型など)

その発想力が素材や建築への熱量なのだと思います
いくつかプレハブ作品がありますが、自分はメトロポール住宅というのがSFっぽくて好みでした
↓ほんの一部部分です

メトロポール住宅の一部展示


この意匠が70年前に作られていたなんて本当に驚きです


ジャンプルーヴェを形作ったもの

最後に、ジャンプルーヴェに対して感じた印象を書いて終わりたいと思います。
何が彼を形作ったのだろうか?と考えていくとかなり多様なバックグラウンドが見えてきます

・自身の工場を持つ職人であること
 →18歳くらいの若くして金属加工の現場へ 20代で自分の工場を持つ
  →学問/設計ではなく現場スター

・卓越したデザイナースキル 丸や色の選定の上手さ
 
→工業製品でありながら、色とアルミ素材、丸を使って人に優しいプロダクトを作り上げた

生まれた時代における制約と需要
 →戦時の災害用、軍事用住宅の需要、鉄資源の少なさ
  →アルミや木材を多用した

・モダニズム思想(アール・ヌーヴォー / バウハウス)の潮流
 
→1920年代にヨーロッパ芸術は歴史主義から逸脱、アール・ヌーヴォー、バウハウスなどが現れる
  ドイツ表現派、イタリア未来派、ロシア構成主義、オランダのデ・スティル、チェコのキュビズムなど
 これまでのなどを脱した数学による設計重視、素材重視
  →2000年近くの建築の歴史を否定して0から新たに作り出す芸術運動が巻き起こった

産業革命で工業化したものの粗悪品が大量に生産されたことへの批判
 →工業化されたものは必ずしも粗悪品ではない いいものを作ることが可能

工業化による分業化への高まりの批判
 
→分業化はアウトプットや組織を弱体化させる 設計と現場は一貫主義の反対の立場にい

自然を愛する
 
→パリ郊外のナンシーに住む 住居も自分で設計 & 施工
  →彼が残した言葉の一つは"土地に痕跡を残さない建築を作りたい。"

彼は高品質な工業化を進めつつも、分業化を否定し工場を持ち仲間と現場主義であり続けクラフトマンシップを持ち続けた、そして自然を愛しパリではなくナンシーという郊外に住んでいたというのがエモいなぁと感じました

彼の家らしい
窓が丸くてエモい
みんなで家を作ってる様子


その工業化による新素材(アルミ、スチール)の多用と自然を愛する気持ち(戦後の鉄資源の不足によるところもあり)が木材、プロダクトの曲線や色に現れていて、レトロフューチャーなSFチックさを醸し出しています
思想的にもアール・ヌーヴォーを引き継ぎ、新しいものを形作る解放的な視点を持っていました

終わりに

久々にたくさん書いてしまいましたが、建築ではなく椅子も抜群に良かったです
ぜひ興味が湧いたら展示会に行ってみてください
建築に興味を持つきっかけになるのではないでしょうか
最後の当時1970~80年あたりに撮られたジャンプルーヴェのインタビュー動画が一番刺さります

こういう展示会は行ってきて良かったな〜と一言で終わることも出来ますが、実際書いてみると思ったより感じたことがあって書いて良かったです

自分自身もレトロSFがすごく好きだなと再認識しました

ジャンプルーヴェが現代に生まれ変わったとしたら、ガラスと鉄とコンクリートしか使わない高層ビルのような建築はつまらないといいそうだな〜
どんなものを作っているだろうと思いを馳せるのが楽しいです

火星の居住ポッドをデザインしてるかもしれません


椅子もgoodでした↓

SFっぽい椅子


おわり

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