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アイラヴユーが歌いたい

テレビから流れる懐メロ特集に耳を傾けながら手持ち無沙汰でキラキラ光る指先のネイルに目を落として物思いにふけっていた。

「涙の数だけ強くなれるよ」

いや、泣くほど辛くて悲しい事、まじでいらないです。強くなる為に悲しい思いをするなら強くならなくていいまである。
涙しなくても強くはなれるし、怪我を繰り返さなくても丈夫な心と体は出来上がります…..最低限の食事と睡眠があれば人間は成長する訳で。
丈夫な骨をより強くする為に骨折させたくなんてないでしょ、極論ですか。
痛みに強くなるか、痛みに鈍い人間が出来上がるだけで治療する時間を考えたらコスパも悪いし後遺症を背負って生きづらくなる可能性だってある。怪我も病気もしない方が良いに決まってる。

涙の数だけ強くならなくていいし、全力で悲しい事柄から逃げたい。確実な逃げ道があるなら絶対に悲しまない嬉しい楽しいだけの世界に行きたい。だけど現実世界はそんな上手く行く訳もなくて、悲しいや苦しいが沢山落ちてたりする。
避けて歩いているつもりが、躓いて転んでばかりだ。かすり傷とかさぶたが増えていく。
かすり傷でさえ、ちゃんと痛いんだから悲しみに任せて腕を切るなんて事は絶対にしません。
痛みは心だけでお腹いっぱいだよ
腕を切っても薬を飲んでも1円にもならないし、毎日必死に働いて納めた税金が使われている救急車の無駄遣い、ダメ、ゼッタイ。
どうしても切りたくなったら切り絵とか始めてみましょう。おすすめです。難しすぎて腕を切るどころじゃなくなると思う、やった事ないけど。

残った古傷が頑張って生きてきた証なのかもしれない。
ただ、辛い事を経験する事は悪い事ばかりではない。辛さや悲しみの渦の中、もがき苦しんだ時間を乗り越えてきた人は、人に優しく出来たりするのだ。

「痛みが分かる人間は誰よりも強い、
        痛みこそが最大の武器になる」

私はそれを知っている。
この人優しいなぁ、そんな人に出会えた時にその優しさは沢山の苦しさとか悲しさから出来上がった貴重なモノなんだって最近とても思う。
自己肯定感低めの人間が対人関係に悩んでネガティブループに陥りながら苦しんでいるのを見ると貴方は本当に優しい心を持った素敵な人間だよ。と抱きしめたい気持ちになる。いつも頑張っていて偉いよ、偉すぎるから100点はなまる、がんばったで賞をあげたい。
ヨシヨシでも拍手でも固い握手でも私があげられる最大限の褒め方をするだろう。
褒められて嬉しくない人間はいないでしょ
というか私が褒められたいから人にそうしてるのかもしれない。
当たり前に生きるを繰り返したら褒められる事も無いしさ。たまに褒められたら嬉しいじゃん。

優しい人間特有の生きづらさが、ネガティブ思考、そこにあったりすると思う。
ネガティブに考え込んでしまう性格、気質はマイナスに捉えられるけど、悪いものではないはずだ。悩みと向き合うことが出来る人こそ気に病んだり、時には涙していると私は考える。
問題と向き合える人は強い、沢山泣いて悩み抜ける事は間違いなくその人の強さだ。

他人の事なんて考え無しで、思いやりのかけらも無い人間は誰かを思って悩んだり悲しんだりしません。自分中心で世界を回せる天性の才能をお持ちなので、優しさで出来ているバファリン人間とは分かり合えないし、異なる成分同士で喧嘩します。
それでも共存して生きていかなきゃいけないんだからさ、人間界難しすぎるね。つらい。

「涙の数だけ強くなれることもあるけど〜弱くても全然いいよ〜」

勝手な解釈で編曲してあげる。
響く人には響く名曲、こんな屁理屈人間の為に作られた曲ではないのも分かってる。感性って難しいね。

鬱々とした気持ちと晴れないモヤモヤは、全部梅雨のせいにしてしまおう。雨が全部悪い。
カーテンの隙間から顔を出して外を眺めてみる、道路に窪みに溜った灰色の水たまりが雨に打たれて波打っている。
歩幅小さく歩く人たちをぐんぐん追い抜いて、車が水飛沫を上げて通り過ぎていく。
雨はまだまだ止みそうにない。
玄関に置いたままの新しく買った真っ白のスニーカーはやけにピカピカで重たく淀んだ空には不釣り合いなくらい輝いて見えた。

普段飲まないエナジードリンクを無理矢理流し込んでみるけど、エナジーは全く湧いてこない。何もしたくない。丸一日の休みをベッドで過ごす事も多くなった、長い長い映画やドラマを一気見する。だらだらするこの時間が最高だ。
ひとり時間、誰にも邪魔されない私だけの世界

たまに鳴るLINEは、 よく分からない男からのお誘いと生存確認してくれる親友たちだ。

「久しぶり!元気してる?(SEXしよう)」

定型文のように同じ文章で送られてくるいくつかのLINE。既読すらつけないでそっと削除した。
何の気無しに関係を続けている男たちは、きっと私の事を何も知らないし、私も相手の事は何も知らない。余計な話もしないし、嫌うこともないし、嫌われることもない。私にまるで興味が無いからLINEが既読にならなくてもなんて事はない。全部知ってるけど知らない振りをして全ての面倒くさい事から解放されたい私はベッドに潜り込んだ。

薄暗いシーツの中でXを開くと去年連絡をくれた男の子からのDMがまた届いていた。
無理矢理送らせた写真が目に入る。
とても好きです…..
そう言いかけたけどグッとこらえてここはスマートにお礼だけして適当に終わらせようと考えた。
たまに開くくだらないスペースを聞きにきてくれる男、顔も知らない人ばかりだけどこんな可愛い子も居たりするんだ、、、おもろいな。
疑心暗鬼になる私を尻目に、職業会社本名を提示してくる男の子がなんだか面白くて通話した。
今まで相手の事なんて殆ど聞いてこなかったし、聞いたら何かが壊れそうな気がして世間話くらいしかしてこなかったけど、面接ばりに沢山質問する私にペラペラと答えてくれるその子が可笑しくて久しぶりにゲラゲラ笑った

えろい女に会いに行くじゃなくておもしれー女と言うその男の子は、可愛くて美味しいお土産と名刺を持って引き篭もり気味の女に会いにきてくれた。これで少しは信用できた?そんな悪戯な顔をしながら目を見つめてくる男の子。
今だ、今この瞬間セロトニンめちゃくちゃ出てるぞ〜!!本当に本当に、幸せ時間だった。
梅雨が明ける頃、また会おうねと約束した。カレンダーには名前が書き込まれている。

何を話したとか何をしたとか残しておきたいことは沢山あるけど、ひとつだけ。


「人に疲れたときに、人に救われたりする」


楽しい休日が過ぎ去った今日が少し寂しい。親友が誕生日にプレゼントしてくれた大事な傘を手に取り外に出た。かわいい傘が止みそうで止まない雨に濡れてきらきら光っている。

「雨の日なんてなくなればいいのに」
消え入りそうな声で話す男の子を思い出す
一緒に口ずさんだ曲がイヤホンから流れてる
最後にした悲しいやり取りがもどかしくて、空を見上げた。昨日は優しくできなくてごめんね



午後からの東京は晴れの予報。
晴れた空に曇った心が登っていく
キミもワタシも明日は笑っていられますように。

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