【SF小説】 母なる秘密 4-5
「遅いぞ」
戻ってきた英治を亮平が窘めた。鉄扉が轟々と音を立て、閉まり始める。
「思ったより早く江波が見つかったようだ。清水が部屋に戻ったのかもしれない。あの麻酔には中和薬がある。江波も目覚めていると思った方がいいだろう」
「どうすれば?」
「僕に考えがある。念のために人質役をしておいて助かった」
亮平が床を指差した。
「この研究所は地下二階まである。四階からダストシュートが通っていて、各階のごみが地下二階に集積された後、建物の裏手から運び出されるんだ。僕らの体格なら、何とかダストシュートを通れる」
「なるほど。そこから逃げるんだな」
「ああ。だが、それは僕だけだ」
「えっ?」
英治は思わず滑稽な声を漏らした。
亮平が再び言う。
「大丈夫。僕に考えがある」
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