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【SF小説】 母なる秘密 4-5

【あらすじ】
高校三年生の林英治は、幼い頃に父が他界し、母の美絵子と二人で暮らしていた。ある日、母の言動に立て続けに異変を感じた英治は、何者かが母になりすましているのではないか、と疑念を抱く。その正体を追った先で、英治は驚愕の真実に辿り着く。

「遅いぞ」

 戻ってきた英治を亮平が窘めた。鉄扉が轟々と音を立て、閉まり始める。

「思ったより早く江波が見つかったようだ。清水が部屋に戻ったのかもしれない。あの麻酔には中和薬がある。江波も目覚めていると思った方がいいだろう」

「どうすれば?」

「僕に考えがある。念のために人質役をしておいて助かった」

 亮平が床を指差した。

「この研究所は地下二階まである。四階からダストシュートが通っていて、各階のごみが地下二階に集積された後、建物の裏手から運び出されるんだ。僕らの体格なら、何とかダストシュートを通れる」

「なるほど。そこから逃げるんだな」

「ああ。だが、それは僕だけだ」

「えっ?」

 英治は思わず滑稽な声を漏らした。

 亮平が再び言う。

「大丈夫。僕に考えがある」


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