谷崎泉

細々と小説を書いています。BL、キャラ文など。キャリアは無駄に長いです。 黒柴キジトラ…

谷崎泉

細々と小説を書いています。BL、キャラ文など。キャリアは無駄に長いです。 黒柴キジトラクマ🐻と同居中。

マガジン

  • 骨が折れた。

    骨が折れた時の話です。

  • 2020みちのく旅行記

    2020年秋の山形新潟長野の旅を記録したものです。

最近の記事

(小説) 告白

 東京は海に面した街だということを、地方の人間は知らないことが多い。現在、多くの人々が暮らしている南の地域は、かつて海を埋め立てて造成された土地でもある。  そういう新しい地域に近いけれど、昔ながらの古い町…かつては海の仕事を生業としていた者たちが多く住んだ下町に、一軒のおでん屋がある。地下鉄の駅にも近い庶民的な店は、値段も安く、いつも多くの客で賑わっている。  食事時には空席を待たなくてはいけないほどの繁盛店であっても、日付が変わり、地下鉄が終電を迎える頃には、客の姿はほと

    • 15歳柴犬、前庭疾患闘病記。26日目で突然立つ。

      七月初旬。母は手術した一般病院から退院し、リハビリ病院へ転院した。 リハビリ病院での入院期間は三ヶ月。 年齢も年齢なので、元のような状態になることは難しいだろうとの話で、リハビリ病院を経て施設へ入るという方向で検討をしている。 車椅子で移動出来るような家ではないし、絶対にまた何かやらかす。今度こそ、寝たきり状態になってしまう可能性はものすごく高く、母が何を言おうとも自宅へ戻るのは無理だと、はっきり伝えている我、長女。 精神的に大変しんどく、母だけでなく、父もアレなので、いや

      • 水無月は、とけい。

        ・壮大な愚痴ですので心おおらかな皆様向けです。 ・カバー写真が猫なのはせめてもの配慮で猫は一切出てきません。 イソップ寓話にあるオオカミ少年のお話をご存じだろうか。 正式には「嘘をつく子供」というタイトルで、オオカミが来たぞと嘘を吐いてばかりいたら信じて貰えなくなり、結果として本当に助けが必要な時に助けて貰えなかったというアレである。 あの少年には子供ながらのいたずら心とは言え、面白がるという態度が見られ、そこには悪意が感じられる為、同等には扱えないのだが、教訓としては

        • (小説) あの、国道の明かり

           全てが詰んで、もうどうにもならないと思い知って、巻き返そうという気力も失って、自分の何もかもを手放したくなった時。ふいに食べたくなったものがあった。懐かしい味をもう一度だけ、味わってから、自分を終わりにしよう。  そう決めて、乏しい金をかき集めて、故郷への旅費にした。それを使ってしまったら、本当に自分が無一文になるのは分かっていたけれど、どうせ最後だから構わなかった。  電車を乗り継いで、懐かしい町の駅に降り立ったのは、夜の十時を過ぎた頃だった。秋が深くなり、東京でも朝晩は

        (小説) 告白

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        • 骨が折れた。
          6本
        • 2020みちのく旅行記
          6本

        記事

          フロアタイル貼ってみた

          私にはインテリアセンスがない。 エクステリアはあるのかと言えば、もちろんないので、ざっくりセンスがないとするべきだろう。 センスと言えばファッションセンスもない。 センスのいい人に憧れるけれど、真似したところでどうにもならないと分かっている。 センスばかりは才能としかいいようがないのだ。 私もいい歳なので自分の問題点はよく分かっている。 統一性がない。 その一言に尽きる。 センスって様々なベクトルがあると思うのだが、優れている人の共通点はただ一つ。 統一性だ

          フロアタイル貼ってみた

          引越し、それは春の嵐。

          私は人生で二度、引っ越しをしたことがある。 一度目は二十歳を過ぎた頃。 それまで賃貸暮らしだった両親が家を建てたので、それに伴い引っ越した。 母は何もしない人なので、ほぼ全て私がなんとかした。 二度目は実家から出る際のもので、自分の荷物だけで、問題は大量の本だけだったから、さほど苦労はしなかった。 そんな私は昨年来、「引っ越し」に悩まされていた。 自分の引っ越しではないのに、いや、自分の引っ越しではないからこそ、苦労が多かったように思う。 この先はプライベートな内容で

          ¥300

          引越し、それは春の嵐。

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          2023沖縄旅行記

          沖縄である。 これまであちこちを旅しているのだが、実は最多で訪問しているのは沖縄である。 一時は毎年沖縄の離島を訪れていた。 初めて行ったのは石垣島。 そこで沖縄にはまり、何度も石垣島を訪れ、その後、西表島や宮古島にも勢力を広げ、最終的に本島へ戻った。 というのも離島はリスクが高い。 一緒に行くクマの休みは夏が多く、夏といえば台風で、一ヶ月くらい前になると天気予報と睨めっこだった。 夏以外の季節でも乗り継ぎがあると、天候による欠航リスクが高まり、無事に着けるかな&無事に

          2023沖縄旅行記

          諦観の春

          光陰矢のごとし。 昔の人もそう思ってたんだから過剰な情報にまみれた現代に生きる我々にはカケル100くらいの光陰が矢のごとしなのだ。 とにかく月日があっという間に過ぎる。歳をとるほどに月日が過ぎるのが早い。とにかく早い。 お正月だなと思ってたら桜が咲いてGWが終わってクソ暑くて死にそうになってたらいつの間にかお盆が終わってて師走が来てる。 このスピード感が年々増しているのでこのままだと正月が来たなと思ったら年末が来そうなくらいだ。 だって、前回のアレを書いてからもう半

          諦観の春

          霜月騒動

          私は毎朝午前四時五十分に目覚ましをかけているのだが、それよりも早い、四時過ぎにラインの着信を知らせるメロディが聞こえて来た。 ベッド周りにスマホを置かないようにしているのですぐには確認出来なかったが、こんな早朝に誰だろうと半分寝ながら考えていた。 半分寝ているものだから夢の中の出来事だったのかと判断が曖昧になり、そのまま再び寝てしまった。 そしてアラームの音で起床し、何気なくスマホを確認するとラインは夢ではなく、相手は妹だった。 深夜に母が救急車で運ばれたので起きたら病院

          霜月騒動

          猫の愛。

          猫の愛は重い。 いや。そうでない猫もいるのかもしれないから、「うちの猫」とするべきだろうか。 この場合のうちの猫は、私が人生で初めて飼うことになった「うずら」である。 生後半年以上、外の世界を生き抜いた後にうち猫になったうずらは警戒心が強く、私にしか触るのを許さず、私とも距離があった。 うずらの方から膝に来てくれるとか、一緒に寝るとか。猫飼いあるあるな楽しみは得られないのかもしれない。 過酷な環境で育った猫だからそれも仕方ない。少なくとも、うちの中にいれば安全なのだから

          猫の愛。

          発行書籍リスト

          作家として活動しております。 これまでに発行された書籍リストを置いておきます。(2022年10月現在) 発行年などは省略しております。 気をつけておりますが、お名前の間違いなどございましたらすみません。 キャラ文芸作品 ■KADOKAWA・富士見L文庫■ 月影骨董鑑定帖1~3 鎌倉おやつ処の死に神1~3 <装画:宝井理人様> ひきこもり作家と同居します。 <装画:高野苺様> 高遠動物病院へようこそ!1〜3 <装画:ねぎしきょうこ様> 老舗酒蔵のまかないさん~初夏の梅酒と七

          発行書籍リスト

          骨が折れた。6

          そして、六週間ギプス耐久マラソンの間に、一大事件が起きた。 猫が増えたのだ。 大事件だ。 子猫がやって来たのだ。 もう大事件としか言いようがない。 ギプスが第三形態になる少し前だったろうか。 親しくさせて頂いている広島の神漫画家さんが子猫を保護したという話を聞いた。 四匹姉妹のかわい子ちゃんだという。 そんなの、見に行くしかないでしょう(鼻息) そこからあれよという間に広島行きの話がまとまり、防水シャワーカバーと共に広島へ旅立った。 コロナ禍となってから旅行らし

          骨が折れた。6

          骨が折れた。5

          肘上までのギプスはなかなか辛かった。 肘を曲げたまま固定されているので肩の凝りが半端ないし、首も痛い。 第一形態の時は指先もまた、ほとんどがギプスで固定されていた。 指を動かすことは当然ながら手首にも影響するからである。 右手の指先がちょびっとだけしか動かせない状態で左手しか使えないと、買い物にも苦労した。財布を開けるのもスマホを操作するのも難しいのだ。 なんでも時間がかかってレジスタッフの目が痛い。 中には親切にも手伝おうとして下さる方もいるのだが、それがまた焦りに拍車

          骨が折れた。5

          骨が折れた。4

          悲劇というのは続くものと定めが決まっているのだろうか。 風呂に入れるスタイルを確立して間もなく、またしても壁にぶち当たった。 骨が折れた原因はリフォーム工事中で床板が外されていたベランダに無理矢理洗濯物を干した為だったが、そのリフォーム工事には風呂場も含まれていた。 当初の予定では工事期間は近くのスーパー銭湯へ行こうと計画し、回数券まで買っていた。 風呂場をまるごと交換するので一週間近くかかるという話だったから、回数券を買った方がお得なのだ。 スーパー銭湯には食事処もある

          骨が折れた。4

          骨が折れた。3

          ギプスによって倍近くになった太さの腕が入る服。 つまり袖口がラッパのように広がっていなくてはならない。 様々なデザインの服が売っているしまむらならあるだろうと…そしてお値段もそれなりだろうと…考え、訪れたのだが、そうそう都合のいい服などありはしないものなのだよ。 袖口が広がっていても全体のデザインがおばさん向きではなかったり、広がり過ぎていたり。 ああ、もう私はどうしたらいいのかね。 クリスマスまで半袖に七分袖を重ねて、ベスト型のダウンジャケットを着て過ごさなくてはならんの

          骨が折れた。3

          骨が折れた。2

          私は生まれついての右利きである。 とにかく右手オンリーで乗り切って来た。 というのも、私の母と妹は両利きなのだ。箸やペンは右だけど、鋏やアイロンは左という、謎の使い分けをしている。 恐らく、元々は左利きなのを矯正したのだろう。母は知らないが、少なくとも、妹は矯正されていた覚えがある。右利きの方がいいという謎信仰が昭和の時代にはあったのだ。 でもね。両手が使えた方がいいんだよ。折れた時にね。気づくよ。 動かすなと言われた私は愚直に言いつけを守り、ひたすらじっとしていたが

          骨が折れた。2