「味方」なんだって
世の中の99.9%は私の敵だ。
小学生の頃、男子にいじめられた。
中学生の頃、ほとんどの子にいじめられた。
高校生の頃、友達ができなかった。
大学生の頃、誰も助けてくれなかった。
今、外から聞こえる音が怖い。一人ぼっちだ。
それぞれの時代で具体的に羅列できるものはあるけれど、それよりずっと前から、私には敵がいた。
父は私に父にとっての「正解」の行動と言動を強いていた。
兄は私が「女の子であること」を否定して、乱暴な言葉を教えていた。
もう一人の兄や祖母はそれに必死に従うことを否定して、兄はときどき暴力的だった。
私は虐げられないためにどうすればいいかばかり考えていた。
虐げられることが当たり前だった。
怖かった。
怖がりで痩せている女の子は格好の標的だった。
標的にされればどんどん沈んでいって、「標的にしてもいい奴」というレッテルを貼られる。
気づいた頃には恐怖やレッテルは染み付いて簡単には消えなくなっていた。
心療内科のカウンセリングに行ったとき、外から聞こえる音が怖いと話した。
カウンセラーのおばちゃんは言った。
「普通は外から音がすると落ち着くんだけどね」
私には意味がわからなかった。
「何かあったら助けてもらえるから」
人は見ず知らずの人でもとっさに助けてしまうものだと。
「でも私は被害に遭うのが当たり前」
だから助けてもらえるなんて思えない。
「危害を加えてくる奴とかいやな奴なんか家に入れないでしょ」
「あんたなんか入れてやんないって態度とってればいいの」
そうだ、家は私の自治区だし、街も教室や部室よりずっと他者に危害を加える人間に冷たい。
私がいままで周りとどんなやりとりをして、どんな行動をとったか。それが危害を加えていい、助けなくていい理由だとしても。誰も私のことを知らなければ。誰も私の自治区を侵略できなければ。
「家の中だけは、自分が気持ち良くいられるお城にしよう」
いやあ、私はいままでSSR、いやURの悪人がいる環境ばかり引き当ててきたんだなあ。
だって、みんな味方なのにみんな敵って思うくらい嫌な思いしたんだもん。
これからどうしようか。
親に反対された収納家具でも買おうか。就職できてないから親の金だけど。
敵に回しちゃった気がした人は、とりあえずお互い得する形でまた会いに行こうか。
見捨てずにいてくれる人はちゃんと大事にしよう。
拾ってくれた人にちょっとずつ頼ろうか。
私は小さなお城のお姫様で、刃向かった奴は白い目で見られるの。
いままでずっと、被害者であり続けたけど、
自治権と領事裁判権があるから、無敵。
結局みんな私の味方になってくれるはず。
染み付いた思い込みは、お城を作りながら削ろう。思考に穴が空いたって、かわいいドレスで上書きしよう。
【募金箱】病人ですが演劇も被写体もこれからやっていきたいです。サポートしてくれたらもっと色々できちゃうかもしれないので、興味があれば是非。