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さよならサンクコスト

「サンクコスト効果」という言葉がある。

ある行為に費やした資金や労力のうち、中止をしても戻って来ない資金や労力がサンクコスト、そしてサンクコストが無駄になるのが嫌で資金や労力を費やし続けてしまうのがサンクコスト効果である。

サンクコスト効果を全力で振り切って走っているのが今の私だ。



私は3月まで公務員を目指していた。

2月下旬の模試で燃え尽き、カウンセラーにも美容師にも「公務員にこだわらなくていい」と言われ、未来が見えなくなって、3月中旬には動かない身体に半ば諦めを感じ、下旬には完全に放り出した。

絶対に作りたいものだけを決めて、見えない方角へ歩き出した。


公務員を目指し始めたのは大学入学後すぐだった。三年間、ちょっとサボったりついていけなくなったりしながらも先生と面談だってして、ちゃんと目指していたはずだった。

なのに、志望動機がなかった。

説明会で「この自治体はなんかいいな」「この省庁は面白そうだな」と思うことはあった。

それでもやっぱり私が公務員を目指した理由は母の二倍近い平均年収と安定でしかなくて、その仕事に目を凝らしても、灰色にぼやけていた。


必死に情報を集めて、何次選考も通過しても、その先に待っているのは安定と制限でしかない。

同人誌を売った公立学校の教師が懲戒処分を受けていた。公務員という制約上表現できる場所や方法は制限されてしまう。この先必死に頑張っても、役者としての自由は保障されないのだ。


そして、就活がどうなったとしても写真集を作りたいという思いつきだけがぐるぐると回り、スマホのメモの文字数が増えていく。

一時の深い負の感情で、三年間積み重ねてきた努力は簡単に崩れ去った。


いや、三年間覆い隠された欲望を露わにしたのか。


公務員を諦めることは両親に話した。

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【募金箱】病人ですが演劇も被写体もこれからやっていきたいです。サポートしてくれたらもっと色々できちゃうかもしれないので、興味があれば是非。