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【投資】「破天荒な経営者たち」は極めてオーソドックスな経営者だった件

今日は私の好きな本の1つ、自身が投資対象企業の経営者のスキルを測る指針として常に参考にしている本の紹介です。タイトルは「破天荒な経営者たち - 8人の型破りなCEOが実現した桁外れの成功(ウィリアム・N・ソーンダイク・ジュニア著、パンローリング出版)」

なお、帯に書いている「配当を出すな 自社株を買いまくれ」は大いに誤解を与えますね。それがキーメッセージではないですから。まあ、キャッチーな言葉で目を止めてもらおうということでしょうけど。

なお本著の原題は"The Outsiders"。日本語版で「破天荒な」とか「型破りな」とありますが、どちらかというと「常識の枠にはまらない」「独自の発想の」というニュアンス。といっても、読んでみると実は結構オーソドックスな内容でした…という話です。


ウィリアム・N・ソーンダイク・ジュニア氏

著者のウィリアム・ソーンダイク・ジュニアさんは、当方がリタイアするまで勤めていた資産運用会社の創業者のお孫さん(だったような…)。そして勤務当時、これをベースにした運用商品を日本にも展開すべく、数度オンライン・ミーティングでお話しさせていただいたということもあり、かなり贔屓目で見ています(笑)
現在はボストンとサンフランシスコに拠点を置く投資会社の創業者兼マネージング・ディレクターを勤めています。

本書で取り上げられている経営者

この本で"Outsiders"として取り上げられている経営者は以下の8名。バークシャー・ハザウェイのウォーレン・バフェットは誰もが知るところですが、それ以外の7名、会社名は聞いたことありますが、お名前を聞くのは初めての方ばかりでした。しかしながらいずれも彼らがCEOとして在任中、極めて高い業績、そして株価の上昇をもたらした経営者ばかりです。

Amazonより抜粋

経営者に求められるスキルとは?

自分なりにこの本の主要メッセージをまとめてみると、優れたCEOというのは「資本政策に優れたCEOである」ということです。つまり、「最適な資本調達方法の選択」、そして「調達した資本をどう使うか・配分するかの選択」が経営者に求められる判断であり、それがうまくできるかどうかということです。

資本調達、配分の方法には以下の選択肢があります。

資本調達の方法

  • 既存事業からあがってくるキャッシュフロー

  • 社債の発行/借入金(BSの長期負債に相当するもの)

  • 株の発行(資本の部に相当するもの)

資本配分の方法

  • 既存事業への再投資

  • 他の事業への投資、買収

  • 配当

  • 負債の返済

  • 株の買い戻し

ビジネスの環境に応じて、どの資本調達が最適か、そしてそれをどう配分するのが最適か、その判断が優れているのがいい経営者/CEOということです。

例えば資本調達でいえば、金利水準が低く、またビジネスの特性上安定したキャッシュフローが見込めるのであれば、社債や借入金で調達しROEを高める。あるいは、自社の株が非常に高く評価されており、配分する事業でもより高い成長を見込めるのであれば、(希薄化の懸念があっても)株式の新規発行により調達するなど、状況に応じて最適な調達手段を選択すること。

また調達した資本を配分するにあたっても、既存事業の拡大余地があるのであればその事業に再投資、またはそれ以外の分野でより高い成長が見込めるのであれば、調達した資本で買収等を行う。そうでなければ(あるいは余剰があれば)配当で株主に還元したり、バランスシートを改善すべく負債を返済したり。時には、自社の株が不当に安く評価されていると思えば自社株買いを行ったり(これは、経営陣が「自社の株は割安だと思っている」というアナウンスメント効果もありますね)。

どちらかといえばこれまでの経営者の判断は、「ビジネスをどう拡大するか?」「既存事業で成長を続けるか?」「新規事業に打って出るか?」ということが中心であり、資本調達や配当、自社株買いは後回し、むしろCFOにお任せ?ではなかったでしょうか。優れたCEOには、それを包括して「成長するためにどう資本を調達してくるか?」「環境に応じてその資本をどう使うのか?」そういった包括的な資本政策の判断が重要という、極めてオーソドックスな内容でした。

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