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クリエイターはいかに心の声に向き合うべきか

自分がアートディレクターの仕事をしているから気がつきやすい、ということ以上にここ数年は「デザイン」という言葉が世の中に氾濫しています。

この本はよいデザインとそうでないデザインの差はどこにあるのか、に迫ったエッセイ的な書籍。著書の経歴上、どちらかといえばプロダクトやシステムよりの意味での「デザイン」ですが、よいデザイナーとはどういう存在か、をきちんと定義しつつ、組織はどうすればその存在を活かせるのか、についての持論を展開しています。ノートルダム大聖堂の火災も、突き詰めるとコミュニケーションデザインの不具合が引き起こした災害という視点の分析など、面白いエピソードが多いです。

特にユニークだと思ったのは「デザインとは文化や習慣の蓄積である」という視点。たしかに車のハンドルなどは僕らがハンドルであり、どう機能するのか理解しているからこそ、直感的に「ハンドルに似たデザイン」も含めて使えるんですよね。

あとは、海賊はロゴがあるから海賊なのではなく、悪評があってロゴがあるから海賊なのである、って表現も言い得て妙だと思いました。このあたりはブランディングの考え方にも通じるものがあります。認知があってこそのコミュニケーションで、それを逆にしても効果は薄いのです。

あとは「通りすがりのデザイン」であるものを批判するのはフェアーじゃないという話も深いですね。たしかに僕らは良くないデザインをみた時に「なぜだ、自分ならこうするのに」と思うけど、それを実行に移すにはその背景にある組織や成り立ちの再構築も業務の一環にしなくてはいけない、という話は著者のデザインへの愛があふれた発言か、と思いました。

彼のTEDトーク。外部の影響から生まれたアイデアの種をどう育てるのかを、自分の心の声に「YES」と言い続けよう、というお話もいいです。


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デザインはどのように世界をつくるのか(2021年、スコット・バークン、フィルムアート社)

【本日の朝食】

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黒パンにマッシュポテトとチーズをのせてオーブンで焼き、アボガド・ハムサラダをトッピングしたスモーブローにて

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