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ビッフェスタイルでエンタメを食べ尽くしていける現代についての鋭い考察本

ファスト映画ブーム・映画を倍速で観る、といった行為がなぜ起きるのかによる現代人カルチャーの分析論。批判的な話ではなく、その根底にある「時間とお金がない現実」「視聴者受けを狙いすぎるメディア」「消費し尽くせない膨大なコンテンツ」「他者とのコミュニケーション」という複雑な要因を解きほぐしていってる意味で、とても面白い本でした。

自分は中学生くらいから映画・音楽好きなので・・お金のない頃はもっぱらレンタルばかりでした。レンタル料を気にしながら、映画や音楽にふれてた頃に比べたら、ほんと今はサブスク的に触れられる作品の数が膨大だと思います。そして、この本で取り上げられているように、都度課金でもないことから「お金を出して見ている」という感覚が希薄になりつつあるのかもしれません。

この本にもあるように「鑑賞よりも消費」って感覚がなんとなく嫌で・・今でも音楽系のサブスクには手が伸びないんですよね。気に入った作品はCDとして買っちゃいます。あ、本なんかも一緒かもしれませんね(笑)Amazon で契約してアンリミテッドにすれば、読める本も増えるし、蔵書にも困らないんでしょうけど・・ダメですね。

あと、この本の中だとネーミングについての指摘をまとめたものが興味深かったです(博報堂の原田氏からの引用ですが)。そう言われてみると最近の若い人向け、って言われる商品は商品名長いわ・・。

新商品のネーミングトレンドも過去は
「機能をうまく表現したネーミング」
「企業姿勢をうまく表現したネーミング」
「誰がターゲットかを想起しやすいネーミング」がいいネーミングだった
しかし現在では蓋を開けてのお楽しみは歓迎されず
「この商品を使うとどんな気分になれるのか」
「どんな気分の時に使うものかがわかる」
といった情緒ネーミングが注目を集めている
情報過多で何を買ったらよいのか悩みやすい時代だからこそ、
直感的・視覚的に商品を選択できる利点をもったネーミングが受ける

安く手軽にエンターテイメントを「消費」できることにはきっと大きな幸せがあるはずです。でも、必死に悩んで1枚のCDを買ったのに、それが聞いてみたらイマヒトツで・・だけど悔しいから聞き続けているうちに、新しい発見がある・・みたいな体験に、どこか懐かしさも感じるのです。

映画を早送りで観る人たち ファスト映画・ネタバレ――コンテンツ消費の現在形(稲田豊史、2022年、光文社)

【本日の朝食】

ほうれん草のキッシュを焼いて、サラダやヨーグルト一緒にプレートにて。

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