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[#37] ブライトン&ホーヴ食べ歩き① TONKOTSU

ブライトン Brightonのランドマーク的になっているロイヤル・パビリオン Royal Pavilionのすぐ近くにあるラーメン屋さん。

ロイヤル・パビリオンは当時の皇太子・ジョージ四世によって1700年代後半に建てられ、1800年前半に当時の流行やらなんやらのアンバンギャルドな奇天烈魔改造の果てに、インド、イスラム、中国のデザインが混合された唯一無二な建築物です。
ブライトンといえば!の有名観光施設の一つですが、入場料が結構高い(£ 18 = 2023年5月のレートで約3,000円) ので私は結局行きませんでした。

それはさておき”TONKOTSU”。
ディープブルーなファサードに角張った”骨”の字が目を引きます。

メニューは、店名の通りとんこつラーメンが看板メニューのようで、その他には、鶏ベーススープのラーメンとヴィーガン向けラーメンがあります。日本ではまだまだ馴染みがありませんが、イギリスでは大体どのお店に行っても必ずヴィーガン向けのメニューがありますし、どれがヴィーガン向けメニューなのかわかる表記がされています。鶏ベースのラーメンはムスリムの方向けの配慮だと思われます。あと餃子とカツカレーもあります。

メニューこちらから。

どうやらこの"TONKOTSU”、調べてみると2012年にロンドンのソーホー SOHOで、日本人のKenさんと(おそらくイギリス人の)Emmaさんが共同でオープンしたラーメン屋さんが始まりのようです。

2011年、1店舗目を開く前、2人は臨時店舗だか屋台だか(pop-up shop)で週末だけのラーメン屋さんを始めました。金曜日の夜にEmmaさんの自宅でスープを炊き、焼豚を仕込み、餃子の餡をこね、朝6時に食材を搬入してラーメンを売りました。初めは30人だったお客さんが、3ヶ月も経たないうちに120食が即完売するように。

それから2人は毎週金曜日にラーメンと400人分の餃子を仕込みました。毎週、味の違ういろんな種類のラーメンを試し、反応を試しながらノウハウを掴み、実店舗オープンについて話し合うようになりました。

そして満を持して、知見と自信を携えた2人はロンドンはソーホーにて”TONKOTSU"をオープン。
それから10年、パンデミックとインフレという苦難を乗り越えて、今や16店舗を展開するラーメンチェーンになりました。16店舗のうち14店舗はロンドン市内にあり、ロンドン市外はブライトンとバーミンガム Birminghamだけですが、今年(2023年)にブリストル Bristol に17店舗目をオープンするそうです。

ちなみにこのストーリー、全部webサイトに書いてありました。

それにしても、2人のラーメンにかける信念と執念と愛がここまでの成功を招いたのだと思うと本当に尊敬します。(偉そうにすみません。)
成功するために必要なものは”才能"ではなく、”情熱”と"粘り強さ"すなわち”やり抜く力”だと、ちょっと前に話題になった本のタイトルにもありましたが、心底その通りだと思います。

そして肝心のラーメンの味について。
私はとんこつラーメンではなく鶏ベースのチリチキンラーメン Chili Chicken Ramenをいただきました。

すんごくスープが薄かったです。
あっさりを通り越したほんのり塩味の鶏湯でした。
具も全般的に味が薄かったです。

食べた時、私の心の中の山岡士郎が「こんなの出来損ないだ、食べられないよ」なんてブスッとした表情でのたまっていましたし、つい先ほどのヒストリーを知るまで、ローカルの手によるなんちゃってラーメン屋さんだと思っていました。

手のひらを180°回転させることにします。今。

あのラーメンはブリティッシュに支持される味を求めて、KenさんとEmmaさんが努力と試行錯誤を繰り返し、やり抜く力でたどり着いた一つの境地だったのです。

なぜ私は「イギリスのラーメン屋だって日本のそれに近い味を出して然るべき」と錯覚していたのでしょう。

私にはジャパニーズクオリティ(特に和食)はローカライズしなくたって、世界中で受け入れられるはずだという驕りがありました。まだまだ国際感覚の獲得にはほど遠いようです。

けれど今知れてよかった。
薄味のラーメンのおかげで私はひとつ成長できました。
KenさんEmmaさんありがとう。

最後に、日本食シックで日本っぽいラーメンを求めている人には、チリチキンヌードルはお勧めしません。とんこつラーメン食べてみてください。

ではまた。

Chili Chicken Ramen & Gyoza

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