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知ることは生きること

理系の代表格と言っても過言ではない、数学と物理が大の苦手だ。

本当に、ビックリするほど出来ない。
中学受験で(当時の自分にしては)やたら難しい算数を叩き込まれたからか、すっかり苦手意識がついてしまっている。
あの忌々しい金色の表紙のテキストのことは忘れられない。
ゆえに高校時代はテストの結果はいつも真っ赤っか。逆に現代文と地理は絶好調。

理系/文系という概念がそもそもナンセンスだという議論はさておき、日本の高等教育以降においては、大別されたそのどちらかを選択して学ぶ人が多いと思う。

そんな教育の仕組みの中で、高校の試験で追試や補習課題の常連みたいな私は、文系ではなく理系を選び、大学では自然科学を相手にしている。

案の定、大学1年生では必修の数学の講義・線形代数と物理学の初歩の単位を落としたけれど(再履修で回収した)、現在は4年生になり、毎日バタバタと、そして地道に卒業研究を進めている。

しかし、勉強はもちろん、大学入学以降はバイトやサークルで生活が慌ただしくなるうちに、自分がわざわざ理系を志し、大学で学ぶ理由はすっかりどこかへ隠れてしまっていた。

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話は変わるが、筆者は少年誌のマンガが好きで、週刊少年ジャンプを定期講読している。
最近は多くの作品が連載終了となり、そろそろ新しい物語にも触れたいと思っていた。

そうやって読み出したのが「Dr.STONE」というマンガだった。

「Dr.STONE」は、謎の人類石化現象から目覚めた少年とその仲間たちが、知り得る科学と知恵を使って全人類復活の未来を切り開く、少年マンガらしい冒険譚だ。

本作は石化によって失われた生活や文明、たとえば抗生物質や携帯電話を、主人公らは目をキラキラさせながら、科学知識を集約して全てをゼロから作り上げるのが最大の特徴であり、魅力である。

週刊連載という時間とページ数に制約された中でも、何が必要でどうやって作るかを忠実に表現しており、特に小中学生にとってはたまらなくワクワクするのではないだろうか。

かくいう私も「すごい」「面白い」と、頭を空っぽにして夢中で読んでしまった。既に次回の更新が楽しみでならない。

そしてふと、忘れていたことを思い出した。
「なぜ」「どうして」「どうやって」と探求し、知る喜びを。

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図鑑が好きな子どもだった。

家庭の方針でゲームは一切買ってもらえなかったが、代わりにサンタさんからは、小学館から刊行されている分厚くて大きなフルカラーの図鑑が毎年のように届く。

植物、動物、宇宙、星座。

特に宇宙に強く興味を持つようになり、親とともに本屋さんや図書館へと足しげく通うようになった。
お小遣いが支給されない分、幸いにも本だけはある程度買ってもらうことができた。
今考えるとかなり恵まれた環境だったと思う。

そして、本で読むうちに、実際にこの目で確かめたくなった。

地元の天文台の望遠鏡で初めて月のクレーターを、キャンプで流星群を見た。
タイミングよく天文学的なイベントが続き、各種日食や月食を観察した。
首都圏の博物館やJAXAへ向かい、その壮大さに感動した。

知らないことばかりの世界を知ることが、小中学生時代を生きる私の全てだった。

それからというもの、科学に携わりたいという薄ぼんやりとした気持ちを持ったまま、高校生になった。

中学生までは上から数えた方が圧倒的に早い成績でも、進学校に入ってしまえば同じような人がごまんといるわけで。
苦手な科目の成績は下から数えた方が早くなり、学校に行けなかったり、授業をひっそりサボったりしてしまうくらいにはメンタルブレイクしてしまった。
好きで選んだ理系も、大学に合格するための科目のひとつでしかなくなった。

それでも偶然か必然か、私は今、地方の大学で一学生として自然科学に関する研究活動を行い、同大学大学院への進学も決めた。

知りたいと思うことを、自分の足で、頭で、好きなだけ探求できる場所にいる。

そのことを、マンガを読むというきっかけができるまで、とても贅沢なことにすっかり忘れてしまっていた。
もしかしたらそれは忘れたふりで、無意識のままにそういう道を選んでいたのかもしれないけれど。

勉強に対して不器用で、「なぜ」「どうして」を追求しすぎたゆえにどれだけ数式が扱えないとしても、理解が及ばなくても、私の中にある好奇心には逆らえない。

知ることは、生きること。

これから先のライフプランは全くもって未定だ。
いい加減真面目に向き合わねばならない。
それでも私は、知りたいことに従順な自分の心の声を聞くことを、忘れないでいようと思う。

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