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空も花も

石楠花が溢れるように咲いて、梅雨のはしりのような空がやってきた。
すっかり濃くなった緑の中に、ふいに朱い星が現れてはっとする。そうか、柘榴の花の季節だった。紛うことなき曇天に、この朱色がハイキーで輝けば、もう雨の季節も近い。グレーの空との取り合わせが好きで毎年心待ちにしてきたはずなのに、ことしは忘れていた。

もう個展の会期がそこまできているというのに、日々のことに追われて時が過ぎていく。健やかに生きることが自分の命題であったはずが、睡眠も食事も運動も、規則的なそれはカタカタと崩れた。ただ植物や生きものの動きだけが、弛まず規則的に進行して、ぐらつく私を勇気づける。

もう何もわからなくなった父に、思わず「どうしたらいい?」と尋ねてしまうことがある。「なるようにしかならんさ」と父は言う。「また普通にもどるかな?」「あたりまえだ」。

いつかきっと、ちょうど良い幸せがくる。
あと何回の梅雨空、あと幾たびの柘榴の花。今を大切にしろと、誠実に生きよと、言っている。



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