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ドローイングとタブロー

花水木の葉の色が日に日に濃くなる。山茶花はもうびっしりと蕾をつけている。
少しずつ季節を重ね着して、今年も残りふた月になった。

2月のドローイング展から8か月あまり、次の個展が迫りつつある。
ドローイング展ではその名の通り、日常的に描きためたドローイングだけを展示した。それらがいかほどの価値があるのか、展示に耐えうるものなのかを測る気持ちがあった。普段着のスケッチやドローイングを並べるのは初めてで、どんなものになるのか緊張と不安にさいなまれつつ準備した。一方で、絵は日記のように描いたものだから既に大半は完成していて、その点での焦りは無かった。

来月の個展はタブローを展示する。ドローイングの類は出さないつもりだ。タブローの定義は様々あろうが、私としては仕度をして描いたものを指す。即興的に生まれたものではない、絵。日々のスケッチの延長線上にあるけれど、立ち位置の少し異なる絵。
まあ要するに、こちらは描くのに時間のかかるもの。それはわかっていたから、2月の展示を終えた時点で計画を立てた。しかしそこはこの怠け者のこと、計画通りにはいかない。月に一枚のペースで絹本の作品を仕上げる予定だったのに、いや描かなかった訳ではないのだが、予定をこなす為に描いたような絵は二枚ボツになり、別の二枚は下絵までしか進められなかった。
そんな訳で今回はまだ絵を描いている。日は飛ぶように過ぎていき、1週間が実に短い。秋の日はあっという間に暮れて、描けなかった日には一歩も進んでいないという焦りに潰されそうになる。


前日まで描いていた絵を今朝、枠からはがし表具屋さんに託してきた。
午後からは別の絵にとりかかる。とても眠いが、幸せだ。絵が描けるのだから。あの人やこの人のおかげ。毎回個展の前後には、傲慢不遜の本性はなりを潜め、周囲への感謝の思いが強くなる。あと少し、なるべく不平不満を言わずに歩いていけたらよい。
傾いた日差しに欅の梢が朱く染まり、穏やかに揺れている。


展覧会のお知らせ
[五十棲さやかー雨のあとに]
2021年11月15日(月)〜21日(日)
11時〜19時(最終日は17時まで)
ギャラリーモーツァルト
www.g-mozart.jp
(現在このギャラリーのHPは更新されておりませんが、上記の通り展示します
地図などはこちらをご参照ください)

いただいたサポートは災害義援金もしくはUNHCR、ユニセフにお送りします。