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本が人をつなぐ(6)-リーディングトラッカーのこと。


(前回の続きです)
「本が人をつなぐ」と題してこれまでお送りしましたが、今回は「人が本をつなぐ」と変えて、少しお話を進めたいと思います。
 
私の住む瀬戸内市では、図書館整備とともに司書の配置や研修にも力を入れてます。図書館でも学校でも、司書の先生は、様々な課題の解決や心の治療に必要不可欠な存在ですからね。
 
先日、読み聞かせボランティアの後に、司書の先生と雑談をした時のこと。
司書教諭 「先日、神山忠先生というご自身もディスレクシア(読み書きの学習障がいのことです)だと公言されている特別支援学校の教諭の講演に参加したのですが、今まで知らなかったことばかりでした。もっと、情報提供のやり方に工夫をしないとって反省しました。それで、試しにリーディングトラッカー(読書補助具)を作って図書室に置いてみたのです。そうしたら、『この物差しを使った方が読みやすくて内容がわかりやすい!』と結構言われてびっくりしました。今まで子どもたちの文字の読みづらさとか気づいてあげられていなかったのかもしれません。」
 



※市販のリーディングトラッカー
 
わたし 「障がいは持っていなくても、読みづらさを抱えていた子って結構いるんでしょうね。軽度なら、なかなか周りの大人も気が付かないでしょうし。」
 
司書教諭 「そうなんです。普通に読める人には想像しづらいですよね。ディスレクシアを抱える子どもたちも、みんなもこんな風に見えるって思って、自分だけどうして読むのが遅いんだろうって自分が嫌になることが多かったみたいですよ。」
 
わたし 「ハリウッドスターがディスレクシアをカミングアウトしてくれたおかげで、世間の認知度が高まったかもしれませんが、日本ではこれからかもしれませんね。」
 
司書教諭 「英語圏では発現率が約20%なんですって。神山先生の話はとってもわかりやすかったので、これからいろいろ気をつけたいと思っています。」
 
などなど、貴重なお話を伺いました。調査結果が無い日本でもひょっとすると20%もの人が悩んでいるかもしれません。ディスレクシアの生徒たちは、この障がいを持っていることを、周囲に気付いてもらえない、わかってもらえないことが多く、不適切な指導などをされ「自分はダメな人間なんだ」と思いこんでしまうことが多いそうです。
 
文字が歪んで見える、動いてみえる、明朝体ですと三角(“とめ”部分)が気になる、文の区切りがわからない…などなど、多様な症状があるため、詳しくは専門家にお任せしますが、確かに、リーディングトラッカーを使うと、周りの文字が気にならず脳に送る情報が限定されるので、読みやすくなります。
 
本が嫌いな人は、本との出会いが嫌いなわけではなく、読むこと自体が苦痛なのです。そういう方が少しでも気楽に本とお付き合いできたらいいなって心から願います。
 
神山忠先生の講演会報告はこちらからどうぞ。

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