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ぐるぐるドラマ「無脳シリーズ」16話〜テルコのお尻〜

今回は星のお話です。




  今日は水曜日。テルコは学校に行きたくない。朝ごはんは食べない。ボサボサのボブヘアーを解くか解くまいか、10分ほど悩む。
冷たいミルクに口をつけるが、はたして、これを飲むことにより今日一日腹痛に悩まされるのではないか。と、変な不安が居心地悪そうに脳内を歩き回る。結局ミルクは飲まず、トイレにも行けずに家を出る。

  学校に着くと、まずは除光液をロッカーから取り出し、机の落書きを消す。いつもと同じカラフルな罵詈雑言が、テルコの脳みそに引っ掻き傷をつける。
  校庭には銀杏の葉が絨毯のように広がっていて、太陽にあてられきらきらと輝いて見えた。きっと体育の時間は寒いだろう。今日は休もうか。なんて考えていると、美里ちゃんたちに呼びつけられる。
「脱ぎなよ」
  女子トイレで下半身裸になる。
「キモwww」「この写真、お前の親に見せてあげるよwww」「なんか臭くねwww漏らした??wwwww」
  テルコが黙っていると、お腹をパンチされた。ぐるうぅと、変な音を立ててお腹の中身がねじれた感覚がする。

  体育の時間はサボり、屋上でタバコを吸う。
「あ、出る」
  パンツを脱ぎ、ヤンキー座りの体制で力む。全身の力が、頭の方から、肛門に移動するのがわかる。校庭でクラスの子達が騒いでいる。
  心地いい苦しみがテルコを支配し、丸い物体が一つ、お尻から出た。
  ソフトボールほどのそれは、黄色い光を放ち、くるくると宙に浮いた。テルコはしばらくそれを眺め、地球の重力に囚われないそれを、一口齧る。齧ったところから光が漏れ、やがて口の中へと消えていく。味はしない。
  もう一つ大きな腹痛に襲われ、また力み、今度は土星の形をした物体が出た。
  テルコはお尻を出したまま、齧りかけのそれと土星を、空に流す。それらは真っ直ぐ宇宙へ向かう。
  タバコをもう一本だけ吸い、テルコは階段を降りていく。

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