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エッセイ | 食べたいもの

毎月の28日はフライドチキンを食べたいと思ってしまう。ケンタッキーフライドチキンが「とりの日パック」と称して普段よりも安めに販売しているからだ。これが毎月の楽しみなのだ。

以前住んでいた場所では、最寄駅へ向かう途中にケンタッキーの店舗があったために食べる機会は頻繁にあった。引っ越してからは近所に店舗がなかったために諦めていたのだが、数年前に「以前からここにありましたけど?」といった具合に店舗が誕生していた。私は知らなかったため、Uber Eats の店舗一覧を眺めている時に気付いた。それ以降はたまに利用している。


今週のはじめ頃から頭の中にはケンタッキーがいた。
「土曜日は28日だ。とりの日パックを食べるぞ」私はそう意気込んでいた。

しかし、木曜日にマクドナルドの新商品を食べてしまう。そうなるとあれほどまでにあったケンタッキーへの執着が急に弱くなった。同じ週にジャンクフードを2食もとるのは心苦しい。今回のとりの日は送るべきなのではないかと考えてしまう。

ただ、そう考えている自分は意志の強い私なのだ。実際の私は弱い意志しかない。
「2回食べようが、もう1回食べちゃってるじゃないか。0か1かは問題になるけれど、1か2かなんて同じだよ」弱い私が語りかけてくる。こいつは私を納得させる方法をよく分かっている。


悩み抜いた結果、私はとりの日パックを購入することに決めた。私は私に負けたのだ。だがそれで良い。仕方ないんだと自分に言い聞かせる。

そうと決まれば朝食も昼食も軽く済ませ、日中にやるべきことを全てやり終えるようにした。久しぶりのフライドチキンを楽しむために、何も考えなくていいようにしたかったのだ。

食べることにここまで楽しさを見いだしているのは久しぶりだ。いつもであれば修行のような食事ばかりをとっているのだから、このように食への欲求が爆発することはたまにある。


夕食の1時間前くらいにアプリからネットオーダーを行う。こうすることで店舗の前で待たなくて済むのだ。

アプリ画面には「とりの日パック」の文字がデカデカと表示されている。これがあと少しで私の手元にくることがうれしくて仕方ない。いつも利用している店舗を検索してみると「本日休業」の文字が並んでいた。

「とりの日なのに休業するなんてことあるのか?」私は焦った。仕方がないから1駅となりの店舗も見てみたが休業だった。

神が私の前からフライドチキンを取り上げになられた。いや、今日はフライドチキンを食べたらいけないということかもしれない。きっとそうだ。

全ては神の思し召しのままに。



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