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#旅
ファミリア・ストレンジャー
北陸の水の豊かな町で暮らしていた頃、市街地を流れる幾本もの小さな川のひとつに沿って歩くのが日課だった。どんな由縁があるのか奇妙な名前のついたその川は、はるか山脈の濡れた襞の奥深くから流れ出して、三メートルにも足りない川幅一杯に水流を迸らせている。普段は浅く清らかな川で、橋の上から見下ろすと幾匹もの鯉が流れに逆らうように佇む様子が見える。ところが、一旦大雨となれば石を積み固めた堤の際あたりまで濁流が
もっとみる北陸の水の豊かな町で暮らしていた頃、市街地を流れる幾本もの小さな川のひとつに沿って歩くのが日課だった。どんな由縁があるのか奇妙な名前のついたその川は、はるか山脈の濡れた襞の奥深くから流れ出して、三メートルにも足りない川幅一杯に水流を迸らせている。普段は浅く清らかな川で、橋の上から見下ろすと幾匹もの鯉が流れに逆らうように佇む様子が見える。ところが、一旦大雨となれば石を積み固めた堤の際あたりまで濁流が
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