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誰のための透明性?-私が原価を公表しない理由-

※)2021年2月、本アカウントを個人用から事業用に変更しました。
この記事は個人アカウント時代に民ノ布の中の人が書いたものです。


先日、幣ブランドのお客様とお話しする機会がありました。

そのお客様は、価値観に共感できるブランドを選んで買い物されています。よくお買い物するブランドはどこも透明性を大事にしてるそうで、「SAGYOは原価を公表しないんですか?」と。
この会話をきっかけに、原価公表の意義と透明性について考えたので、ここに記します。

ちなみに、私の答えは「公表は出来ない」です。

原価公表をされているブランドさんを批判するつもりで書いておりませんが、そう解釈されてしまったとしたら完全に私の文章力不足です。


・何故、D2Cブランドは原価を公表するのか

本腰入れて調べた訳ではないので不確定だけど、おそらく2011年にアメリカで立ち上がったアパレルブランド「Everlane(エバーレーン)」が公表したことが、全ての始まりな気がする。

Everlaneは、生地代や縫製代はもちろん、輸送代などの諸経費まで見せて、コストの約2倍程度で販売している。
下記記事によると、業界への問題提起を表現する手段として原価公表した模様。

現にこのことが、彼らの価値観に共感したり、意思のある買い物を望むユーザーに支持され、企業として成功に至ったとのこと。


・原価が分かると何が変わるのか

Everlaneを紹介した日経の記事にはこう書かれている。

これまでアパレルブランドの原価率は非公開とされてきたが、消費者がその詳細を把握できれば、68ドルのジーンズが妥当な買い物であるか否かの判断がしやすい。人によっては、材料費が高いほど素材が良いと判断するし、労務費が高いことは、縫製技術が高いことの裏付けになる。このような原価率の開示は、価格に対して高品質の商品を求めている消費者にとっては、“信頼できるブランド”としての根拠になる。

記事を書かれた方が業界に明るくないのだと思うが、「労務費(おそらく縫製工賃のことだろう)が高いことは縫製技術が高いことの裏付け」にはならない。

(私なら、「労務費が高いということは、工場に然るべき対価が払われている裏付けになる。」と書くかなぁ。)

ちなみに、工賃が安くても高い技術力を持つ工場は国内に、多くはないが確実に存在している。
そういうところは大概商売が下手なので、未だにウェブサイトはないし、メールでのやり取りが苦手だったりするのだが。(FAXが無いと仕事にならないとか昭和が過ぎる…。)


話戻って、私が知る限り原価公表しているブランドの原価は一般的なそれより割高だ。

「別に、公表してる単価は高いんだから工場は困らないでしょ」と思われる方も多いと思う。

確かに生産側は困らないかもしれない。

困るのは未来の自分達だ。


・公表された単価が適切なものであるか。

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