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短編小説

20
私の短編小説集です。
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#小説

殻を脱ぎ捨てる

殻を脱ぎ捨てる

「殻を脱ぎ捨てろ。君は自分の殻に閉じこもっている」
 とあなたは言いました。
 私は着ている洋服をすべて脱ぎ捨てて全裸になりした。
「そういう意味じゃなくて」
 とあなたは言います。
「わたしは殻を脱ぎ捨てました。あなたも殻を脱ぎ捨ててください」
 とわたしはあなたに言いました。
 あなたも洋服を脱いで全裸になりました。

 わたしはあなたのちんこを見ます。
「まだ殻を被っています」
 あなたは皮

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リニア

リニア

「上海でリニアモーターカーに乗ってきたよ」
 と言ってあなたは私に上海のお土産を手渡してくれました。

「どうなの、リニアって」
 と私はあなたに訊ねます。
「うん。乗った感じは新幹線と変わらないけどね、とにかく早いよ。地下鉄だと1時間くらいかかるところが15分くらいであっというまに着いちゃう」
「ふうん。いいなあ。私も乗りたい。早く日本にもリニアができればいいのに」
「ああ、邪魔している人がいる

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あなたの言葉

あなたの言葉

 あなたの言葉が好きです。
 あなたの言葉はやさしくて、あまくて、にがいです。

 あなたの言葉はうつくしくて、うっとりします。
 私はあなたの言葉に包まれていたい。
 あなたのやさしさに包まれていたい。

 あなたに抱かれたい。
 あなたの言葉に包まれて抱かれたい。

 やさしい夜は、フィッツジェラルドみたいですね。
 あなたの言葉はフィッツジェラルドみたいですね。
 やさしさに包まれて眠りたい

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世界観

世界観

「僕の世界観が好きなんだろう?」
 とあなたは言います。
 そうです。私はあなたの世界観が好きです。
 あなたの小説の世界観が好きなのです。
 だから私はあなたのメンバーシップに入っているのです。

「僕の背はそれほど高く無いから、会ってみてがっかりしたんじゃないか?」
 とあなたは言います。

 私とあなたはnoteで出会い。今、こうして私はあなたと会っているのです。
 今、会っています。

 

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ごくん

ごくん

「僕はベジタリアンなんだよ。肉や魚だけでなく、五葷も食べない」
 その人はそう言いました。
「ごくんって何ですか?」
 と私は訊ねます。
「五葷はね、ネギ、ニラ、ニンニク、ラッキョウ、タマネギのことを言うんだ」
「どうしてそれがだめなのですか?」
「これらの野菜は臭いや成分がきつくて、陰性の気が強いのが特徴なんだ。だから体に負担をかけてしまうだけでなく、精神にも影響がある。
 ねぎは落ち込みやすく

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あなたの心を汚したくないのです

あなたの心を汚したくないのです

「私はあなたの心を汚したくないのです。だから無理に私からお願いをしたくありませんし、私からあなたに連絡をしたりしません。私は待っています。ずっと待っています」
 と私はあなたに言いました。
「君の気持ちがわからないんだ。僕は君が喜ぶことをしたいんだよ」
 とあなたは言います。
「私の気持ちはSNSに書いてあります」
「でもそれは本当に本当の気持ちなの? 嘘をついたりしていない?」

 私は何も言え

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肉棒

肉棒

「僕の肉棒とうまい棒、どっちが好き?」
 とあなたは私に尋ねるのです。
「どっちも好き」
 と私は答えます。

「私にとってはあなたの肉棒もうまい棒だけどね」
 と言って私は、あなたの肉棒をくわえました。

おわり。

セックスよりも気持ちのいいこと

セックスよりも気持ちのいいこと

 セックスよりも気持ちがいいことってあるのでしょうか?
 私にはそれが、みつけられません。

 生きていることに意味を見いだせません。
「意味なんてないんだよ」とあなたは言います。
 だったらなおさら快楽を求めるしかないじゃありませんか。

 心が開放される世界にゆきたいんです。
 青い空、青い海。
 裸になって、駆け巡りたい。
 でもそこにゆくことはできないんです。

 あなたに抱かれることでし

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毎日、愛しています

毎日、愛しています

 LINEの交換をしたのです。
 その日から毎日、LINEが来ます。

「好きです」
 というのが最初のメッセージでした。
 私は「何が?」と答えようとしましたが、何となくそれはいけない事のように思えたので、やめました。
 ですがどう返したら良いのかわかりません。
 なので何も返さないことにしました。

 次の日も、来ました。
「会いたいです」
 私は「そうですか」と返そうとおもいましたが、やめま

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愛ゆえに

愛ゆえに

 私はその液体を、眺めていました。
 人差し指と親指でつまんだその袋の先っぽに、それは入っています。
 私はその袋を自分の目の前でゆらゆらとゆらし、眺めていました。

「いっぱい出たね」
 と私は言います。
「うん、いっぱい出た」
 と彼が言います。
「どのくらい、入っているのかしら?」
「2.5cc」
「え?」
「成人男性の一回に送出される液の量は2.5cc。10ccというロックバンドのバンド名

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毒毒した毒苺を食べようとするあなた

毒毒した毒苺を食べようとするあなた

 やめてください。
 それはどう見ても毒苺です。
 毒と苺はパッと見似た漢字ですが、似た感じではありません。
 明らかに違います。

 その毒々しい色を見てください。
 どう見ても毒でしょう?
 毒毒しているでしょう?

 なぜあなたはそれを食べようとするのですか?
 毒とわかっていて食べるのですか?
 それほどまでに、あなたにとってのこの毒苺は魅力的なのですか?

 そんな目で私を見ないでくださ

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短編小説「見出し画像を登録することで、より記事が読者に見つけられやすくなります!」

短編小説「見出し画像を登録することで、より記事が読者に見つけられやすくなります!」

 なぜですか?
 なぜあなたはそんなことを言うのですか?
 私を困らせたいのですか?

 そんなこと、わかっているんです。
 そうした方がいいだなんて、わかっているんです。
 でもそうしたくないんです。
 何もいらないんです。
 私はただ、私でいたいだけなんです。

 私を放っておいてくれませんか?
 お願いですから、私を放っておいてください。
 私を自由にさせてください。

 ブログにタイトルは

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あなたが欲しいもの

あなたが欲しいもの

 あなたが欲しいものを与えましょう。
 あなたは何が欲しいですか?
 私の体ですか?

 いえ、それはお預けにします。
 なぜならそれはすぐに飽きてしまうのでしょう?

 物理的な快楽は、一瞬にして終わるのです。
 あなたはその瞬間だけが欲しいですか?

 もっともっと欲しいものがあるでしょう?
 深い深い深い欲望があるでしょう?

 どんどんどんどんどんどん、沈んでゆくのです。
 深い深い深い闇

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花形さんには華がない

花形さんには華がない

 花形さんには華がない。
 悲しいけれど、華がない。

 ロックバンドではギターをジャカジャカ鳴らし、ヴォーカルでシャウトするのですが、華がない。
 派手なパフォーマンスでステージを飛び回りますが、華がない。
 華がなくたっていいのではないでしょうか、と私は思うのですが、本人は派手派手が好きなのです。

 華がないのにはしゃいでいるその姿は、観ていて痛々しいのですが、本人はそれにまるで気がついてい

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