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南 伽耶子
2018年12月3日 14:50
小学校への通学路は他人の家の裏や細道、畑の中を歩いていく道だった。低学年の子たち数人が遊びながらあるいていくと、目に入るのが畑の端に植えられたイチゴの真赤に熟れた実だ。 おぼこらたちは少し考え、喉の渇きと真っ赤なイチゴの誘惑に我慢できず、もいで食べてしまう。頭の黒い鼠が何匹も畑を荒らすのだから、当然見つかって怒鳴られるし小学校に文句が来た。 でも子供たちも知った『人の家の畑のものは、
2018年12月2日 15:52
山形県は広い。ひとつの県と言っても地域的には庄内、最上、村山、置賜と別れており、四季の様相もまた違う。冬は海からの突風と目の前数センチ先も見えなくなるほどの地吹雪が起こる、鶴岡、温海、酒田などの庄内地方の雪害も有名だが、他の地域でも頭の痛い問題だ。わずかな時間に景色を変えてしまうドカ雪は、生活に直結する大問題で、鉄道も道路も、毎年の事と備えはしているとはいえ、寸断されることもままある
2018年12月2日 15:46
(この文章は東北を深掘りするwebマガジン『まいにち・みちこ』様に4月11日掲載されたものです。よって季節感ずれております)急速に春が来た。東京の狂乱ともいえる野菜の高騰もひと段落、ようやく葉物野菜の値段も下がってきた。地物の春野菜が一斉に出荷され、八百屋の棚をにぎわせている。根元に土の着いた、収穫した方々のお顔が見えるようなたくましい野菜たち。春が来たことを喜びを持って実感させてくれ
2018年11月29日 21:28
「おこた」の中には思いがけないものが潜んでいた。こたつについての一番古い思い出は、つま先の火傷だ。幼少の頃、家は炭を入れる掘りごたつで、火を起こした練炭を入れ、網を張って、中に入れた足が炭に触れないようにガードされていたように思う。だけど幼児の小さな足はガードの網の目をくぐり、靴下のつま先を焦がし、あちちっと泣いた。やがてこたつは電気になり、足は安全になったし、火事の心配も減り、スイ
2018年11月28日 16:31
玉こんといえば山形県民のソウルフード。 いや待て、芋煮というキングを差し置いてその称号はなかろうという向きもあるだろうが、どっこい芋煮は季節ものである。秋の運動会シーズン、田んぼの刈り入れシーズン、そして駆け足でやって来る長い冬の前の晴れた秋の日の河原で囲む大鍋と、どうしても季節と分かちがたいものがある。だが玉こんは万能だ。季節を問わない。冬の寒い日。襟元から背中、手先足先まで痺れるよう
2018年11月27日 14:53
子供の頃はエアコンなどなかったので、家でも家の棟続きの織物工場でも、主力は大きな石油ストーブだった。東京の大学に進み山形の実家を後にするまでそうだった。大きな縦型の石油ストーブとこたつ。そのストーブやこたつは寒い地域の調理道具でもある。父方祖父と両親は織物工場をやっていたから、工場には一階にも二階にも、昔の映画で見るような大きな石油ストーブがドーンと置いてあった。火力はすさまじく、それで1
2018年11月27日 02:56
このノートは、東北を深掘りするwebマガジン『まいにち・みちこ』様(https://my-michi.com/)に掲載している連載記事『おいたま食堂多摩川支店です』をまとめたものです。ご近所や祖父母、両親。見聞きした昭和的暮らしとお料理のレシピエッセイ。山形県置賜(おいたま)地方の伝統を、器用な母から不器用な娘へ。受け継がれるはずが失敗したり忘れたり。日々のご飯のヒントになるかな。宅配便