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エンタメと遊び

 オランダの歴史家ヨハン・ホイジンカ(Johan Huizinga)は、あらゆる文化の根底には「遊び」があることを指摘した[ヨハン・ホイジンカ(2018)]。エンタメは我々の文化の一部である。だとしたら、エンタメの根底にも「遊び」の要素があるのは明らかであろう。

 ホイジンカの論考を発展させる形で、フランスの社会学者ロジェ・カイヨワ(Roger Caillois)は遊びの類型化を行った[ロジェ・カイヨワ(1990)]。カイヨワは、遊びを以下の4つに類型化した。

アゴン(Agon):競争ないし闘争という形をとる遊び。スポーツ、チェス、将棋、トランプなど。
アレア(Alea):偶然の遊び。ギャンブル、くじなど。
ミミクリ(Mimicry):自分以外の何かになる遊び。ものまね、「ままごと」や「ごっこ」、コスプレ、演劇など。
イリンクス(Ilinx):めまいを求める遊び。ジェットコースター、ブランコ、ダンスなど。

 この類型化は、我々が既存のエンタメプロダクトを分析したり、新しいエンタメプロダクトをデザインする際に役に立つ。

 例えば、多くのスマホゲームは、自分が何かのキャラクターになってストーリーを進めていくというミミクリ的要素を持っている。それに加えて、ストーリー中に戦いがあるのであればアゴン的要素を持っており、ガチャでアイテムを入手できるようになっていればアレア的要素も加わっているということになる。また、Oculus Quest 2 のようなVR機器を使えば、そこにイリンクス的要素も付け加えることができよう。

 あるアイドルやアーティストの曲を歌ってみたというのもミミクリ的遊びと類型化できるし、踊ってみたになるとミミクリ+イリンクスの遊びと類型化できる。

 このように、エンタメプロダクト提供者がプロダクトをデザインする際に、遊びの4要素をちりばめることが重要であるし、消費者が自分で遊びの要素を追加できるようプロダクトに発展性を持たせることも重要である。

参考文献

ヨハン・ホイジンカ [2018]『ホモ・ルーデンス 文化のもつ遊びの要素についてのある定義づけの試み 』講談社

ロジェ・カイヨワ [1990]『遊びと人間 』講談社

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