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酒肴結 さかぐち

馴染みの立ち飲み屋に明らかに場違いの若い自称ソムリエ(ソムリエール)がやって来て、「セラーから直で買うのでスーパーなんかで特売品買うよりよっぽど安いんですよお」、「やっぱりフランスのが最高ですねえ」、などと盛んにしゃらくさいことをのたまい、店内を微妙な空気に。

こういう輩は大阪、とくに西成なんかではキチンと常連さん達が
「ネエちゃん、入る店間違えたンちゃうか」
と追い出されるところだけれど、ここはもっと優しい世界なので。みんなしらんふり。

「東京から来て、さっき着いたばかりなんですぅ、友人から徳島は岩牡蠣と鱧が美味しいって聞いたんですけどぉ、おすすめのお店とかありますぅ?」
と、急にこちらを向いてきたので
「は?さあ?」
「知らないです」と、とぼけ、
店を出て、その足でひとり岩牡蠣と鱧の美味しいお店へと向かう。

本当に美味しい店は、気軽に他人に教えたりはしない。


まずは赤星入ってねえんだよこのやろうお前。などと言いながら。

巻物のように長いお品書きから鱧の湯引き。これを梅肉で。


見渡すとカウンターには場所柄か、そういう系のお店の同伴が多いようで。
ノースリーブの、おっぱいの大きいのを持て余した感じの(*個人の感想です)女の子を連れたおっさんが、ずっと熱心にその子を口説いてるのを面白く聞く。

料理が届くたびに、スマホで写真を撮って
これ美味しい!
これうまぁいね!
じゃあ私こっちの大きいの食べようっと、
などとキャッキャウフフしているのを聞くともなしに。いや聞くともありか。

さて、
青森は弘前の銘酒
豊盃を一合頂きます。


このお店では、日本酒を注文すると酒器を選ばせてくれるので、夏らしく涼しげなガラスの盃をチョイス。


アテには金華サバのお造りを。
痺れるほど美味い。豊盃も甘露である。いい酒だ。青森素晴らしい。


おっど、例のおっさん田酒注文してるでねか。
わの飲んでる酒のごど、気になってるでねべかね。ま、ええふりこいてぇ。

などと津軽弁で言ってみたり。


さてさてあのソムリエール(自称)は何処へ鱧を食べに行ったかな。ふふふ。

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