いしいるか

旅の人。 人生は旅であり、出張は仕事で行かせてもらう旅であり、転勤は会社の金での長い旅…

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旅の人。 人生は旅であり、出張は仕事で行かせてもらう旅であり、転勤は会社の金での長い旅である。 https://profu.link/u/ishiiruka0421

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最近の記事

割烹 あけぼの

18:00の開店直後に、予約してないんですけど、ひとり、いいでしょうか?と扉を引き尋ねると、 お店のお母さんがカウンターをちょっと振り返り 「18:50までなら」と入れてくれた。 もちろん長っ尻は粋じゃないというのが信条のわたしとしては全然OK。 ニコニコして、てやんでいべらぼうめ、こちとら道産子でいっ 18:50迄と言われてへえ左様でござんすかとすごすご引き下がるようなおあにいさんとおあにいさんの出来が少うしばかり違うんでい。 などと脳内で啖呵を切って、ビールを注文。

    • 直吉

      箱根湯本。 当然温泉地なので湯治客、そして温泉目当ての観光客がたくさん来る場所なのですが。 箱根は我々の世代、というか一部のクラスタだけの話なのかも知れないけれど、温泉地というよりも首都東京が壊滅した後、遷都して新しい首都機能を持つところになる場所、というイメージがありまして。 まあいわゆる第三新東京市ですね。 ひとりでやるしかないのよ、アスカ。 さて、既にほろ酔いで温泉街の土産物店などぶらぶら冷やかして歩きまして。 ふと見ると川のそばのお店に行列が。 直吉という

      • 大衆割烹と、砂の女

        これはいささか偏見じみた持論だけれども、カウンターで 「お隣失礼します」 などと礼儀正しく挨拶する人は、まあ大抵県外から仕事で来た客だ。 割烹とはいっても、「蒼汰の包丁」の富み久のような料亭ではなく、あくまでも大衆割烹。この雑然とした店内の様相と、その「大衆」という響きが良い。 カウンターで瓶ビール、アサヒを手酌で。 いつものように、ネギマ。 「桜も満開になったな、お兄ちゃん」 だみ声のお姐さんが伝票をすっと曇ったガラスのコップに入れる。 今日は割と混んでますね、と言

        • せんべろ風土

          急に雨が強くなって、雨宿りがてらセンベロの店に駆け込む。 一杯目はさんぴんハイ。 カウンターの隣に腰掛けた若者は、ダイビングのライセンスを取りに石垣島にやって来た東京の大学院生。 「専攻は流体力学っス」 ベルヌーイの定理とか?などと適当に言ってみると、目をむいて 「学校の外でその言葉聞いたの生まれて初めてです」と。 ずいぶんいい身体してるけどなんかやってんの? 「アメフトっス」 アメフトは今、風当たり強くて大変だねえ。 卒業後の進路は航空機の開発に携わりたい

        割烹 あけぼの

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        • おきなわ呑み歩き
          19本
        • とくしま呑み歩き
          49本
        • えひめ呑み歩き
          6本
        • ひろしま呑み歩き
          4本
        • うらわ呑み歩き
          9本
        • とうきょう呑み歩き
          22本

        記事

          中国料理 万寿

          呑みの〆に食べる一品は、日本各地でそれぞれの流儀があるようだけれど、愛媛の松山にタールメンという一風変わった食べ物を出すお店があると聞き行ってみる。 タールメン、つまりタール麺とは、二番町にある中国料理 万寿さんの看板メニュー。 なんでも五目餡かけそばに、大量の胡椒がかかっているという。 なんともオリジナリティ溢れる魅惑的な食べ物ではないか。 まずはビール。初めての店では瓶ビール。 クラシックラガー。 周りの様子を伺いつつ、とりあえず焼き餃子(8個)など注文してみる。

          中国料理 万寿

          大衆劇場 足立屋

          コザの街は音楽の街。 通りの至る所に、ジャズ喫茶、ジャズバー、フォーク喫茶、レゲエバーなどが軒を連ねる。 既に暗くなった商店街のアーケードでは、ガラス張りのダンススタジオらしき建物から、まだ小学生とも見える子供たちが次々と出てくる。 ドレッドに編み込んだ髪にニット帽。ランドセルが似合わない大人びた姿。 しかしこんな夜遅くまで?と思って通り過ぎたら、親御さんらしいイカつい車が迎えに来ていた。 ここでレッスンを受けて、いつかは安室奈美恵やSPEEDやISSAのように、と夢

          大衆劇場 足立屋

          角打 福本屋

          広島駅前。 一番最初にフグの卵巣を、糠漬けにして食べてみようと考えた人はかなり勇気のある人物、というかある意味向こう見ずな阿呆なのではないか、とも思う。 フグの卵巣は、猛毒のテトロドトキシンが凝縮された部位にも関わらず、珍味として石川の郷土料理にもなってる。 数年かけて塩漬け、ぬか漬けすると何故か毒が消えるので、販売が許可されているが、毒が本当に消えているかを確かめる術は、当時命懸けで試してみるしか無いわけで、食に対する情熱、この場合は酒の肴であろうから、呑兵衛の酔狂に

          角打 福本屋

          かめそば じゅん

          松山は、路面電車(いよてつ)で市内中心部の松山市駅を基点に、JRの松山駅も、松山城も、道後温泉も楽々アクセスできるとてもコンパクトで良い街だ。 いわゆる繁華街の二番町に、かめそばという名物料理を出す店があると聞いて、大街道で電車を降り、ブラブラと行ってみる。 かめそばとは。 いわゆるご当地メニュー、B級グルメに位置するものなのだろうか。 ちょっと調べてみると、昭和の時代に「かめ」という食堂が出していた焼きそばを地元の人がかめそばと呼んでいたらしい。 ちりめんじゃこと

          かめそば じゅん

          名倉

          裏路地から静かに入り口を開けて中にはいると、ちょっとびっくりした顔をされる。 ん?あれ?やってないの?と聞くと、やっているという。 たまに客が全くいなくて店主がカウンターの中で暇そうにしているお店で、こういう対応をされることがあるけれど、まあ一見客ってのがこの町ではそもそも珍しいのかも。 カウンターの上にはカオナシが。 毎年夏にログハウスの別荘で合宿し、そこに置きざりになっていた姪っ子たちの少女漫画を読み、次回作へのヒントにするという宮崎駿。 それはまあいいだろう。

          しゅらん

          転勤で日本中を転々としている人生だが、北陸には比較的長く住んでいたということもあって、元日の能登の震災の甚大な被害で変わり果てた街並みの映像を見ると心が痛む。 そんな中、我々ができることといったらひたすら日常をいつも通り平常運転すること。これが13年前に学んだ教訓だ。 間違っても不謹慎だのなんの言って、普段の活動を自粛することはやってはならない。 そんな自己満足のお気持ち表明は、被災者にとってなんの役にも立たないばかりか、かえって復興の妨げになってしまう。 そんなわけで

          おいごと刺せ!

          栄町の立ち飲み屋。 カウンターで隣り合った鹿児島出身のお兄さんと、幕末から維新、西南戦争、そして日露戦争まで、薩摩の気質、鹿児島県人の独特の精神性と異常性(褒め言葉です)について語る。 おなごんけっされ、とか 肝練り、とか。 今でも鹿児島に残る(?)他県人には理解不能な文化や伝統や風習についてひたすら語り尽くす。 お互い司馬遼太郎ファンでしたので、まあ楽しい。 お兄さん、歴史かなり勉強してますね。 鹿児島出身と聞くと誰彼構わずまずはこの話題吹っ掛けるのを常としてま

          おいごと刺せ!

          桑の実

          和風スナックだというその店の扉をそろそろと開けると、妙齢のママが不思議そうな顔をしてこちらを見た。 「あら、ごめんなさいね、若い人がくるのは珍しいから」 いえいえそんな若いわけではないですが、と思いつつ、カウンターに着いて瓶ビールをもらう。 ワタシで若い部類に入るのなら、この店の客層の平均年齢は多分後期高齢者なんだろうなあ。 ここはスナックなんですね?と一応聞くと、 「そうねえ。そうなるのかしら」と。 スナックとバーの違い、ラウンジ、パブ、キャバクラ、ガールズバー。

          神保町

          基本的に本が好きなので、紙に印刷された本を買うのをやめて、すべて電子書籍で読む生活に移行してしばらくたった今でも、世界でも随一の古書店街、神田神保町の雰囲気を感じに、大した用事も目的もないにも関わらず、散歩がてら古書店街をぶらぶらするのが大好き。 神保町ということで当然ながらお昼はカレーです。 ボンディや鴻やエチオピア、キッチン南海、あるいは共栄堂でカレーを食べたのち、更に紙に印刷された人類の叡智と芸術の集合体の中心部に向かって散策を続ける。 いまさら古い本を買ったりはし

          ホッピー仙人

          数席しか無いカウンターが満席で座れない場合は、まあ当然壁に寄りかかったりして立って呑むわけです。 仙人から店の壁に掛かった鍵を借り、ビル長屋のトイレまで行って戻ってきたら、その隙間すらなくなってることもある。そのくらい人気のお店。 「今日はね、黒と白の生があるよ」 と、店に入るなりカウンターの向こうから仙人が声をかけてくれる。 では、白黒の生ホッピーを。 あのね、仙人。 この間、意外なところで仙人の名刺を見かけたんです。 「へー?どこで?」 沼津。 「沼津ぅ?」 それ

          ホッピー仙人

          両国酒店

          氷点下にもなろうかという寒い夜。 徳島の冬がこんなに寒いとは思ってもみなかった。 四国って南国じゃなかったのか。 駅前から眉山へと椰子の木がずらりと並んでいる光景を見て、ああ、さすがは南国だ、と早とちりするのは、ヤラカスシティホールの裏を歩いていて、並んだ家々から「こんにちは!」「こんにちは!」と窓やら玄関口から次々に声をかけられるのを、ああ、徳島の人はフレンドリーで道ゆく人に挨拶するのが当たり前の素敵な町なんだなあ、と勘違いするのと同じくらい罪な事である。 そして震え

          11番目

          地元、つまり沖縄に相当思い入れのあるお店なんやろうなあ。 泡盛を使ったオリジナルのカクテルなんかがいくつも載ったメニューのファイルを 「本日お勧めのカクテルです」 と出されたんやけど。 うんうん。 と言いつつ そのメニューを横に押しやって、ラフロイグ。ストレートで。 とか言われるのは、バーテンダーとしては張り合いないやろな。ごめんやで。 「今度彼氏と彼氏の実家行くんですよ」 へえ、何処? 「静岡市です」 静岡いうたら、なんと言っても 「おでんですか?」 いやい