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ベトナム映画「ハイ・フォン: ママは元ギャング」

主演:ベロニカ・グゥ、カット・ヴィー、ファン・タイン・ニエン
2019年
いしゃーしゃ的オススメ度:★★★★☆
(写真=Netflix公式サイトより)

ママは借金の取り立て屋

なんだかコメディのような日本語タイトルのこの映画、なんとなくあらすじは読んでいたが、でも実際はよく読んでなくて(汗)、観始めてから本格的な格闘技映画だったと知る次第。しかも主人公の女性は借金の取り立て屋。最近3本のベトナム映画を観て、そのうち2本が借金の取り立て屋が主人公ということは、ベトナムで人口の3分の2がついている、多い職業なのかと思ってしまうが、まさか(笑) 。
外国人が北野武の映画だけを観て、日本人全員がヤクザだと思われたらとても困るように、私のこの感想もベトナム人にとっては甚だ迷惑だろう。

ベロニカ・グゥ演じる主人公のハイ・フォンはメコンデルタの地域に住み、借金の取り立て屋をしながら女手一つで娘マイ(カット・ヴィー演)を育てている。娘は父親がいないこと、そして母親の職業のことで同級生からいじめに遭っており、母親には普通の仕事をしてもらいたいと思っている。
ある日二人で行った市場で、マイは何者かにさらわれてしまう。男二人によって船で連れ去られるマイ、ハイ・フォンは盗んだバイクで川沿いを追いかけていくが、間に合わず、結局バスでサイゴン方面に逃げられてしまった。

サイゴンで警察に誘拐事件として届け出るが、この子供の誘拐専門にしている、ファン・タイン・ニエン演じるルオン捜査官の資料を盗み出し、ハイ・フォンは容疑者の元へ出向く。その一人から、子供の臓器売買を手がける大掛かりな組織のことを聞き出し、マイを助けに向かうのであった。

トラ狩りの例え、母は強し

ハイ・フォンはサイゴンで水商売をしていたが、子供を孕ってしまったので、田舎町で借金取りとして働くようになる。しかし、小さい時から父親によって武道の手解きを受けていたので、取り立てに行く最初のシーンから、とにかく格闘技のアクションがすごい。

途中で「トラ狩り」の話が出てくる。

ジャングルでトラ狩りをする男達は、
子育て中のメスを避けて、オスを狙う。
メスは子が空腹だと、攻撃的になるからだ。
子がいるトラの巣があって、
簡単そうでも仕留めはしない。
子育て中のメスは怖いからだ。

まさにハイ・フォンはメスのトラであり、勇敢に組織の男達に立ち向かっていく。子供を獲られた母親には怖いものなんかないのだ。
他のベトナム作品でもトラを使った言い回しがあったので、ベトナムに現在トラが生息しているのかと調べてみたら、どうも絶滅しているらしい。でも、昔はアジア全体に生息していたので、日本語でもそうだが、トラを使った熟語や故事成語がベトナムでも残っているのだろう。

この映画の英題は「FURIE」というが、怒りを意味する"fury"と同義語のようなものかと思っていたら、ローマ神話の「フリアエ」という復讐の女神のことらしい(ギリシャ神話では「エリーニュス」というらしい)。確かに、ハイ・フォンに相応しい称号、元ギャングなんかよりずっとかっこいいではないか。
女性達のかっこいいアクションシーン(臓器売買組織の親分も女性)、そして上から、あるいは下から迫るように撮られるベトナムの美しい自然を見たい方にはオススメしたい映画である。

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こちらが予告編。


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