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韓国映画「夜間飛行」

主演:クァク・シヤン、イ・ジェジュン、チョイ・ヨンハ
2014年
いしゃーしゃ的オススメ度:★★★☆☆
(写真=MyDramaListより)

韓国BLまたはLGBTの作品としてよく名前が上がるこの作品、ゲイの少年が主人公だし、監督もクィアだそうで、LGBT関連の映画祭などで紹介されているからだと思うが、私としてはもっと根本的な問題を扱っていると感じたので、普通に韓国映画のカテゴリーに入れることにする。

いじめの連鎖、孤独な少年たち

ヨンジュ(クァク・シヤン演)、ギテク(チョイ・ヨンハ演)、ギウン(イ・ジェジュン演)という3人の高校生の物語。彼らはもともと中学時代から仲良くしていたが、ギウンは父が労働組合運動関連で逮捕されてしまい、いじめにあう。それ以来、二人とは距離を置くようになり、生活のためにアルバイトをしながら、不良たちと付き合い、高校では番を張るようになる。
漫画が大好きなオタクのギテクは高校でいじめの標的にされ、優等生で有力人物の息子であるスンジンとギウンのグループから絞めあげられたり、カツアゲにあったりしている。

写真撮影が趣味のヨンジュは自分がゲイだと自覚している。まわりにはずっと内緒にしているが、専門アプリで別の高校に通うゲイの同級生ジョンウーと知り合い、時々二人で会うようになる。付き合っているわけではなく、ただ二人でなんとなく一緒に過ごすのだ。そのうちジョンウーはヨンジュが誰かに恋していることに気づくが、相手がストレートなら絶対に告白しないように、と忠告する。

そんなジョンウーも、母親が息子がゲイであることを恥ずかしがって、引っ越し、転校することになってしまう。ジョンウーはヨンジュと二人で最後に会った晩、腹いせに学校の外壁にスプレーで落書きをするが、防犯カメラから二人のことが分かってしまい、そしてヨンジュの高校にも連絡がいくのだ。
ヨンジュは呼び出されるが、とにかく受験校で進学率を気にする担任は
「とにかくソウル大学へ入れ。そうしたら誰も何も言わなくなる。」
とだけ伝える。しかし、他の教師が授業で、
「このクラスにホモがいるんだってよ。」
といったことにより、生徒たちは騒然となって、犯人探しを始める。

ギテクはヨンジュがギウンのことを好きなのに気づき、いじめのグループのスンジンに告げ口し、標的が自分からヨンジュになるように仕向けるのであった。

夜間飛行とは

受験戦争の中において、親そして教師たちは子供たちの成績のことしか頭にない。彼らが内面でどんなことを考え、悩んでいるかを知ろうとせず、とにかく結果だけを求める。
しかし子供たちは様々な理由でいじめに遭い、心に大きな傷を負っていく。

この映画のタイトルである「夜間飛行」は劇中でヨンジュとジョンウーが時々会う、取り壊しが決まっているビルの最上階にあったゲイバーの名前である。ゲイであることを他の人たちに知られたくないから、夜の間だけ自由に行動するということなのかと思ったが、ただそれだけでタイトルに選ばれたとはちょっと思えない。

しかし、サン=テグジュペリの同名の小説(あらすじはWikipediaで)があることを知った。私は読んだことがないが、大辞泉によるとこう要約してあった。

《原題、〈フランス〉Vol de Nuit》サン=テグジュペリの小説。1931年刊。航空郵便事業のために困難な夜間飛行に従事する人々の姿を通して、責任をもって行動することの倫理性と人間の尊厳を探求した作者の代表作の一つ。

監督がこの小説のことを意識していたのかどうかはわからないが、少年たちの高校生活、そして思春期を困難な夜間飛行に例えたものだったのかもしれない。マイノリティへのいじめを通して、まさに人間の尊厳を考えるというテーマと言える。

主演のクァク・シヤンとイ・ジェジュン、元モデルだそうで、劇中でもカッコよかったが、現在の姿が二人ともめちゃくちゃカッコいい!是非ともこの映画の十年後ぐらいの続編を希望したいところ(BLだとなお嬉しい)。

こちらは予告編。

同じ監督による、韓国初の同性愛をテーマにした「後悔なんてしない」の記事も合わせてどうぞ↓


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