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#10_第5回_I-Screen インタビュー

皆さん、こんにちは。I-Screenのmochiです。
熊本で「私から発信する」のコンセプトを基にさまざまな活動に取り組んでいます。
今回は、インタビュー記事の第5弾です。

歌人:姉川さん

今回は、歌人として短歌作品を制作・発表されています姉川さんをインタビューさせていただきました。
本日は宜しくお願いします。

Q:早速ですが、短歌を始められたきっかけを教えてください。

短歌を始めるきっかけになったのは、私が高校受験のために入った塾で、国語の時間に過去問や練習問題解いている時に「文章が長くて面倒くさい」と思ったのがきっかけです。その時、たまたま短歌の問題に当たり、「短歌は短くていいな」と思って短歌を始めるようになりました。
当時、国語はあまり好きではなく、むしろ数学の方が好きでした。

理系の方でも短歌をされる方がいらっしゃるんですね。

はい。
実際短歌に出会ったのも、教科書に載っている栗木京子さんの歌でした。

観覧車回れよ回れ想ひ出は君には一日我には一生

栗木京子さんも京都大学の理学部出身の方なんです。
他の歌人さんでも、むしろ理系であることを強みにした短歌を作られる方もいらっしゃいます。

今はどのように作品を発表されているのでしょうか?

今は、「塔」短歌会に所属し、毎月作品を投稿しています。
他には、「うたの日」という短歌のサイトがあるのですが、こちらに投稿してみたり、Twitterに投稿してみたりという形です。

短歌を通して伝えたいことってありますか?

そうですね・・・
説明できない美しさを表現できたらいいな、と思います。
美術分野に多いと思いますが、黄金比とか白銀比といった数学や論理的に「型にはめる」という感じが、ものすごく嫌いなので、数学や理論では説明しきれないような作品を作りたいという思いがあります。

短歌との運命的な出会いがあったんですね!
それでは、ここからは実際に制作された短歌をご紹介していきます。


Q:一首目の歌について教えてください。

黒髪のしのぶ想ひは月映えぬ白川の瀬を掴み留みむ

これは黒髪という地区にある大学への入学が決まって、少し経ってから制作した歌になります。

「黒髪の」は、黒髪の大学生、若々しい女性をイメージしています。
「しのぶ」は、隠している強い想い、恋心を表し、
「月映えぬ白川」は、流れが急で月が映らない白川の様子を表しています。
その急な流れを留める程にその黒髪が長く伸びてしまった、つまり、それほど長い間想っていた、という解釈のできる歌です。

短歌は、その場その場の「栞」のような役割をすることもありますが、この歌もその「栞」としての解釈を持っています。

もう一つの解釈は、熊本地震に繋がります。

熊本地震の際に、阿蘇大橋が崩落しました。
その際、熊本市内の友人に物資を届けようとして車を運転していたYさんが橋の崩落に巻き込まれるという悲しい出来事がありました。

阿蘇大橋の下を流れる川は、白川に集まっていく川の一つです。
熊本地震の直後に、豪雨被害もありましたが、崩れた阿蘇大橋によって、白川の流れが留められたのではないか、という解釈です。

この歌はYさんへの追悼の歌でもあり、Yさんのご両親のことを考えて詠んだ歌でもあります。

とても深い意味のある歌だったんですね。ただ詠んだだけでは分かりませんでした。
この歌は和歌として詠まれていますが、それにも理由があるのでしょうか?

和歌は昔の言葉を用いるので、「今より昔」「前」という意味があります。英語でも過去形を使うと尊敬語や敬語の表現になりますが、「時間の離れ」というのを日本語でも表現したいと思いました。
黒髪、白川という地点よりも手前の阿蘇大橋での出来事、として表現するために、あえて和歌にしています。

この歌を作るのには大体3カ月程かかりました。

作者でないと語ることができない経緯を聞くことができて、作品の見え方が大きく変わりました。
ご説明いただきありがとうございます。


Q:続いて、二首目の歌について教えてください。

四年後に私の肺を支配する空気にスーツで挨拶をする

こちらの歌は見たまんまです。
新型コロナウイルスの影響で、入学式がなくなったという連絡を受けた時に制作しました。
なので、入学式に参加したかったな、という思いがある中で作った歌です。

短歌的な工夫としては、「支配する」と「挨拶をする」というところで、ぐるぐるぐるぐるするような、音を揃えてみよというくらいにしか工夫していなくて、入学式が中止になりました、と聞いて、10秒、20秒くらいでパッと作った歌です。

一首目は、3カ月制作に時間をかけましたが、この二首目は、10秒、20秒でできたこの形が新鮮味があって面白いなと思ったので、一度作ってからは手を加えていない歌です。

たしかに、一首目とくらべるとフレッシュさをすごく感じますね。
入学式が無くなって、どういう心境だったんですか?

私は大学進学をあまり意識していないところから、大学進学を目指すようになり、また浪人をしていたので、入学式に対してはとても期待がありました。
その中で、入学式という晴れ舞台がない、と言われると、とても落ち込みましたし、遠隔授業で友達もできないしという感じでした。
最終的には、文芸活動には集中できる、とかそういう考えには至るようになりましたが。

コロナ禍だからこそ詠めた歌だったんですね。
他にこの歌の特徴はありますか?

そうですね。この歌では「私」という単語を使っています。
短歌は基本的に一人称のことが多い、、、詠み手が主役、というのが基本にあるので、「私」という言葉のために3音使うということをあまりしません。
ですが、あえて「私」と入れることで、あくまでも自分が詠んだ、というところを強く表現しています。

Q:最後になりますが、三首目の歌について教えてください。

群青にアイデンティティの赤色を消された牛の黒き影「阿蘇」

この一首には「青」「赤」「黒」の3つの色を意識して入れています。
この歌は私の浪人生活が始まる直前に、家族で阿蘇の道を通っている時に作りました。

私は、牛肉がすごく好きなんですが、焼肉屋でお肉を食べる時に、その牛のことって考えないですよね?
私も、その牛のようになってしまうんじゃないかな、社会のパーツのようになって個人はあまり注目されないようになっていってしまうかな、と思いながら、自分と赤牛に重なる部分を感じました。

赤牛の特徴は赤褐色の毛並みですが、それが影になってしまえば、どの牛も黒く一緒になってしまう、、、そこで、アイデンティティが消されると表現しています。
自分特有の自分はこうだ、とあるものが、周りの光とか、周りのよいものによって、消されていってしまう姿が阿蘇の様子なのかなと思って詠みました。

阿蘇を「」で囲ったのは何か理由があるのですか?

私が単純に「阿蘇」が好きというのもありますが、「阿蘇」はとても緑が綺麗なので、歌の中にも「緑」の色を入れたかったのですが、「青」「赤」「黒」に更に「緑」を入れるとぎゅうぎゅう詰めになってしまうので、「阿蘇」を入れることで読み手に「緑」を思い浮かべてもらえたらと思いました。
この前「阿蘇」に行ったら、野焼きされてて真っ黒になっていましたが(笑)

「阿蘇」から連想してほしいものがもう一つあって、それは上り下りがあってうねうねしている峠道です。
私自身、戸惑いや迷いがある中で詠んだ歌でしたが、みなさんにも、そのように感じる時がもちろんありますよね?というのを感じ取ってほしいと思っています。

素敵な歌を三首ご紹介いただきありがとうございました。


Q:短歌を製作する際に意識していることはありますか?

フレッシュさであったり、音のリフレインであったり、色であったり、、、五感全部を大事にする、というところは意識しています。
推敲しないといい作品はできないとも思うので、「思考法図鑑」とか本を読みながら、理論的に考える短歌も勉強しています。理論的な美しさを知らないと、そこから外れるものを作ることもできないので。自分がこういうものを作りたい、というのを制作するために理論的な美しさを確認したりしますね。

また、あまり万人受けするタイプの歌を作っているわけではなく、基本的には誰か一人に対して評価してもらえるような歌を制作しています。
万人受けする作品は、他の多くの人が作っていくと思うのですが、私自身そこから外れた方に目を向けているというところもありますね。


Q:最後に、2021年新しく挑戦していること、挑戦してみたいことがあれば教えてください。

今現在進行形でやっているものとしては、長編小説に挑戦しています。
短歌というのは、表現力には長けている部分が多いと思うので、それを活かして小説を書いてみたいと思っています。
私自身は表現力の足りない部分もありますが、自分の中で、人はこう考えているだろうな、という予想を投影できればと思っています。

他には、川柳にも挑戦してみたいと思っています。
川柳は俳句と比べて、季語に対する意識があまりなく、「栞」としての役割も近いかなと思っています。
五七調ではなく、自由律にしてしまえば、思ったことをそのまま川柳にできる時があるので、自分が思ったことをそのまま作品にしてみたり、また、そのできた作品を推敲したらもっと面白い作品が出来そうだなと感じています。

もちろん、短歌の分野も、もっと挑戦していきたいと思います。

姉川さん、本日はインタビューのご協力いただきありがとうございました。

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<本日のゲスト>
姉川さん

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note:

引き続きインタビューを受けて下さる方を募集しています。

記事を読んで下さったみなさん、ありがとうございました!



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