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奇跡のリンゴ―「絶対不可能」を覆した農家 木村秋則の記録/石川 拓治 を読んで

無農薬、無肥料のリンゴを生産する農家の話です。
農業についてはあまり詳しくはありませんが、無農薬の野菜などはよく目にしますし、簡単に考えていました。この本を読み進めてみて、不可能と言われた意味がわかりました。
今の農作物は実も大きく、甘みもあり、人に必要な品種改良が施されたため、農薬や肥料無しには実らない所まで改良が進んでしまったのだそうです。
人に美味しい木の実は、当然虫たちにもご馳走で、葉や実を食べるいろいろな害虫、また葉や実にとりつく病気などの対処を農家の人が収穫迄の間、世話をしなければ収穫はできません。

農薬は、りんごの木の葉が芽吹く春から始まり、りんごの成長に合わせて何種類もの農薬を使っているそうです。
ユバル・ノア・ハラリが「小麦は人を奴隷化して世界中に繁殖することができた。」と言っていたのを思い出しました。
今の農作物は、人の手を掛けないと生育出来ない所まで来ており、自然の摂理とは全く別の所まで来てしまっているように思いました。

彼の奥様が農薬の使いすぎで具合が悪くなってしまったのをきっかけに、無農薬栽培の試行錯誤に取り掛かるのだが、諦めずに、一歩づつ進めて努力する姿にとても心を打たれました。
あらゆることを試し、あちこちに借金を作り貧乏の底に至り、どうにもならなかった先にたどり着いた境地。壮絶な姿だった。さらさらに耕された土より、粗く耕した土の方が植物の育ちがいい、とか、不耕起栽培のこととか、現実はなまやさしいものではないなぁと。

そして9年かかってようやく収穫が出来たときは、自分でも、やった!と声が出てしまいました。
「どんなに科学が進んでも、人間は自然から離れて生きていくことは出来ないんだよ」最後に「奇跡のりんご」の生産者が話す言葉がとても心に残りました。自然との付き合い方を考えさせられる良書です。
私は、オーディオブックで散歩しながら聴きました。
ちょうどTVでも『天空の城 ラピュタ』の再放送もあり、私にとってとても感慨深い本になりました。


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