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イルカ
2021年1月29日 18:32
2021年1月29日 00:11
2021年1月27日 22:19
2021年1月26日 21:35
2019年4月22日 16:12
試験官には髪の毛が一本入っている。わたしのものだ。 産婦人科医は目を細めて入っていることを確かめると、『ご主人はどうします? 最近では精子から受精させる方もいらっしゃいますけど』『セイシ?』 言葉の意味がわからなかった。『むかしは卵子と精子が受精して赤ん坊が生まれていたんです。験担ぎ(げんかつぎ)というか、わざわざ精子からDNAを取り出すのを希望する方がいるんだ。わざわざ卵子を取り出す
2019年4月16日 01:00
『部屋、行かない?』 その意味を勘違いしたまま、わたしはOKしていた。 青縁の四角い眼鏡をかけたユータくんの温和しそうな外見から、いきなり求めてくるとは思わなかったし、なにより、そういう誘いを受けるのは初めてだった。『ほんとに部屋に来るとは思わなかった』 ユータくんは明かりをつけると、転がっていたマンガ雑紙やらを片づけて、『どうぞ。汚くて申し訳ないけど』『おじゃまします……』 部屋に
2019年4月3日 14:06
『ママ、もう寝るね』 わたしはロキの部屋へ行って、ベッドの中にいる息子に額をつけた。今日の記憶を家族クラウドにバックアップするため。『ロキ、接続を切った? 記憶のブランクがある。公園にいるとき?』『ユーリとふざけてたら切れちゃったんだ。でも、すぐに繋いだよ』『気をつけなさい。もしもマインドネットから切れてるときに誘拐なんかされたら……』『ごめんなさい』 まさか十二歳の子どもが〝カムフラ
2019年4月2日 23:49
『キミへのバースデープレゼントだよ』 呼び出された公園へ行くと、ユーリは四角い板のようなものをぼくにくれた。赤い布張りの表紙に金の刺繍で、なにか記号が書かれていた。『本だよ』 ユーリが白い歯をみせて笑った。 〝本〟というものについては知っていた。 マインドネットがなかった時代には、わざわざ文字というものを使って思考や感情を共有していた、と歴史ファイルにあった。 ぼくが気になったのは、こ