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災害時こそ感謝の気持ちと労いの言葉を

今回の台風14号は九州に大きな被害をもたらした。海と川で事業を営むものとして最も神経を尖らせるのが台風。勢力・進路次第ではこれまで築き上げてきたものを一瞬で無にするほどの脅威となり、実際に今回も残念ながら当社の一部施設に被害が出てしまった。幸いにも短期で復旧できるレベルの被害だったので良かったもののやはり台風は侮れないと感じた次第です。

さて、今回とても残念に感じたのが気象庁の注意喚起やダムの緊急放流、イベントの中止判断など行政や主催者が安全確保のために熟慮を重ねて判断したことに対して全くの部外者や素人がSNS等で好き勝手文句を言っている光景。本当に残念で仕方がないし、安易な表現で使いたく無いが批判をされている側からすると心の中で「だったらお前がやれよ」と言いたくなるだろうと思うところ。

気象庁の緊急会見の意義

今回の14号接近にあたり、9月17日(土)に気象庁は緊急会見を開いた。

気象庁 ・黒良龍太予報課長
経験したことのない暴風、高波、高潮、記録的な大雨のおそれがあります。九州南部・北部地方に暴風波浪高潮大雨の特別警報を発表する可能性が出てきました。

日テレNEWS

そして、この緊急会見に伴い気象庁からが今後の見通しについて詳細な資料が気象庁HPに掲載をされている。その内容を確認していくと

「暗くなる前に、暴風が吹く前までに、 避難完了を!」と警告
勢力以外はほとんど予想通りのコースを通りました
宮崎や大分は実際にとんでもない雨が降りました
鹿児島や大分では最大瞬間風速50m/s以上を記録している
予想を上回って勢力を維持し、実際は20日は東北にも暴風・波浪警報が発令
ハザードマップもしっかりと紹介
事前放流の可能性についても明確に触れている。
実際に事前放流が実施された市房ダムも勿論リスト入り
風の強さごとにどのような被害が起こる可能性があるかを詳細に解説
水害が起きやすい場所も分かりやすく説明
過去の事例も挙げながら早めの避難を促す
改良を重ねられてきた警戒レベル。今回も正しく使い分けられていました

いかがでしょうか?
気象庁は必要な情報の提供、解説、注意喚起は適切な内容で行っていると確認できる。つまり、気象庁の発表は大袈裟だとか分かりにくいなどとSNSで投稿したりコメントしたりする方々は自然災害の恐ろしさを理解しておらず、自身で情報を入手できていないということ。または実際に被災したことがないから理解できない。ハッキリ言って気象庁の方々は間違いなく優秀。短期間でここまで正しい分析を行い高い精度で発表できる訳ですから、批判では無くもっと労いの言葉をかけるべきだと私は強く思います。

災害時における行政の苦労

世の中に意外と欠けている視点。それは行政職員や首長の待機業務。自然災害の発生が予想されると市町村を中心に避難所が開設される。避難所が開設されるということはそこを運営スタッフが必要であり、それを担うのが行政職員です。行政職員や首長といえども勿論家族がいる訳ですが、家族より公務が優先で対応に当たっています。状況によっては徹夜も当たり前で、被害を最小限に抑えるため情報収集を行いながら備えているのです。

その一方で、市民からは対応が悪いとか、指示がわかりにくいとか文句が絶えない。市町村のHPや日頃から配布されているハザードマップ、気象庁の発表などを確認すれば正直な話、行政からの説明が特に無くてもほとんど確認できる状態だし、最近ではLINEや防災アプリなど情報を入手できる手段が増え、利便性は劇的に向上している。つまり、文句を言っている方々の多くが自分から情報を収集する努力、日頃からの備えがない方々だと言える。

このような話をすると「高齢者はIT弱者だ!」とか「経済的格差で端末を持っていない方はどうすれば良いんだ!」と批判する方々があちらこちらから湧いてくる。だからこそ、警戒レベル3の時点で高齢者等は早めの避難を促す仕組みになっている訳ですよ。行政側は色々なことを想定しながら準備を行っていることをご理解頂けたましたでしょうか?

今回画期的だったのが、災害発生前に災害救助法が適用されたこと。

台風14号の影響で災害が発生して多くの住民に被害が出るおそれがあるとして福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県は、災害の発生前に災害救助法の適用を決めました。
適用される自治体は九州の7つの県であわせて233の市町村となっています。

内閣府によりますと災害発生前の適用は去年の法改正で可能となりましたが適用されたのは今回の台風14号が初めてです。

これによって、避難所の設置にかかる費用負担について自治体は、国や県の補助を受けられることがあらかじめ決まり、速やかに避難の決定を行えるということです。

NHK

このように国も様々なことを想定しながら、これまで発生した災害の問題点を洗い出しながら準備を進めているし、災害救助法に適用されると手厚い支援を受けられる仕組みが構築されている。

内閣府:災害救助法のページより

法整備を含めてこれだけ事前に準備を行い、対応できる体制を整え、家族より公務を優先している行政関係者。この事実をしっかりと理解した上で意見を述べることが重要で、調べもしないで粗探しをして文句ばかり言うのは筋違いと言えます。

ダムの事前放流・緊急放流の仕組み

今回、人吉球磨地方で緊張感を走らせたのが市房ダムの緊急放流。放流を実行すると球磨川の水位が上がり氾濫に繋がる恐れがあり、非常に繊細かつ冷静な判断が求められる。令和2年7月豪雨の時もだったがダム管理事務所・国土交通省などは相当なプレッシャーがかかるのは想像に難くない。そんな現場担当者の神経をすり減らすような状況なのにSNSやネット上では素人が言いたい放題の状況。色々な意味で天下のヤフコメなどには書き込んでいて恥ずかしくないのかと思うような罵詈雑言が溢れている。このような個人の主観に基づく書き込みはどうでも良いものの、関係者が目にするとやはり精神的ダメージを受けるもの。出来るだけ書き込まないことが求められると思います。

今回、ネットで散見されたのが「事前に空っぽにしておばよかったのに」、「もっと早く放流する必要があったのではないか」などの意見。しかし、記事にある通り熊本県は当然だがそのようなことは想定済みで15日から事前放流を開始していた。そして、状況をこまめに告知をしており何の落ち度もないことは明らかだ。それにもかかわらず批判をする方々というのは反ダム・脱ダムの思想に偏っているのではなかろうか。あらかじめお断りしておくが、ここではダムの賛否についてでは無くあくまで今回の判断についての分析であるとご理解頂きたいと思います。

熊本日日新聞紙面より

尚、ダムの水位調整の仕組みについてはウェザーニュースに非常にわかりやすい説明が記載してあったので紹介したい。

ウェザーニュースより引用

このように段階を踏んでダム管理事務所は対応を取っている。思いつきや追い込まれたから実施するのでは無く、明確な基準に則って実施しているのだ。

感謝の気持ちと労いの言葉を

気象庁や自治体関係者、政府、国土交通省、ダム管理事務所など多くの方々の力によって自然災害に対する防災・減災の取り組みが行われているし、その結果で被害が抑制されているのは事実である。諸外国に比べて突出して自然災害が多い日本はノウハウの高度な蓄積がある。だからこそ熊本地震や令和2年豪雨レベルの災害が発生しても数年で立ち直ることができるのだ。
行政関係者の皆さんが日々努力をしながら防災・減災に取り組んでいることを我々日本国民は忘れてはならないと思う。このような時だからこそ

お疲れ様です! ありがとうございます!

などの感謝の気持ちと労いの言葉をかけたいと思います。

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