あの心療内科
あの心療内科が好きだ。駅前の、桜並木が乱立してる大通りから一本入ったところにある、新規患者を受け付けていない、あの心療内科。まず【心療内科】の【精神科】より柔らかい印象を受けるところが好きだし、あの心療内科特有の、どんな人間でも優しく包み込んでるような雰囲気が好きだ。心療内科だから、急に声を荒げる人や急に暴れる人など本当にいろんな人がいる。でも誰も嫌そうな目を向けないし同情さえもしない。どんな人でも、みんなが憧れる「普通」の人のように接してくれる。なんて素晴らしい空間なのだろう。あの心療内科は待ち時間が長いので、私はいつも本を読むことにしている。あそこに行くと、吉本ばななや江國香織、梨木香歩などの本が読みたくなる。ふわふわとした雰囲気に囲まれてふわふわの物語の中に潜り込みたくなるのだ。あの心療内科のあるビルには他に小さなカフェだけがある。いつも帰る時には疲れてそのまま帰ってしまうが、毎回看板に書いてあるコーヒーフロートの文字に惹かれてしまう。次の通院日には寄ってみようかな。
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