高校一年生で「化粧」に目覚めた詩乃(しの)。生活の一部だった野球を辞め、女を磨こうと奮闘するが、元野球部のメンバーは納得できず……。
「好き」なこと、「好き」な人に素直になれない…
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【小説】「好きが言えない」(第一部完結)
――野球女子・春山詩乃と、野球青年・本郷祐輔の物語――
プロローグ
玄関の一番目立つところに飾られたトロフィーは父の自慢だった。
「県大会で準優勝ってのは、埼玉じゃすごいことなんだぞ? なんせ出場校が多くて、予選を七回も八回も戦わないと決勝に進出できないんだからなぁ」
県内で甲子園の土を踏めるのは、百以上ある高校の中の一校だけ。その、一枚のカードを手にするためにみな、血のにじむような練習を