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SS【サングラスの似合う男】
新しくできたばかりのマッチングアプリ。
男はそこで知り合った女性と会うことになった。
あなたはここで必ず理想の相手に出会えるという、あからさまに軽率でうさんくさいキャッチフレーズだ。
男はまだ女性と付き合ったことがない。
会う日が数日後に迫った男の元に小包が一つ送られてきた。
もうすぐ会う女性からだ。
厳重に梱包された箱の中には、サングラスが一つとメモが入っている。
「私と会う時は必ずこのサングラスをかけてきて下さいね」
メモを見て首をかしげる男。
女性に聞いても答えてくれなかった。
サングラスをかけてこないと会えないというので、会う時は必ずかけるようにした男。
ダークグレーのレンズ越しでも、女性が美人でスタイルも良いことがハッキリと見てとれた。
人生で最初の彼女になるかもしれない女性が美人で男も満足そうだ。
まだ手も触れたことのない彼女。
彼女はなぜか一緒に外食することを拒む。
店に入ったとしても決して注文することも食べることもなかった。
それに毎回、会ってから三十分経つと理由をつけて帰ってしまう。
まだ知り合って間もないから当然だと自分を無理に納得させる男。
ある日、マッチングアプリサイトからの連絡で男は肩を落とした。男は説明を読んでおらず、システムを理解していなかった。
なぜなら男が知り合った女性は、例のサングラスを通してしか見えない仮想現実の女だったのだ。
男の声もサングラスを通してAIが処理し、サングラスを通して男に言葉を返した。
サイトからの連絡はこうだ。
「いつでも理想の相手と出会えるバーチャルサングラス、いかがでしたか? もうすぐ無料レンタル期間は終わりますが、月額会員様になられますと時間制限はありません。プレミアム会員になられますと、一日に三人まで会うことができます。更に今なら相手のボイス変更が無料!! ぜひこの機会に!!」
サングラスを外せば消える彼女。
会話ができるとはいえ、相手はAI。
そんなものにお金を払う価値があるのかは分からない。
しかし男は一晩じっくり悩んだ末、プレミアム会員になった。
モテない男にはバーチャルサングラスがよく似合う。
終
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