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SS【大人のお子様ランチ】
ぼくは最近できたばかりの洋食レストランへやってきた。
駅の地下街にあるそのレストランは、大人用のお子様ランチがあるらしい。
メニュー表を見ると、オムライスやナポリタンに混ざって、大人のお子様ランチがあった。
ぼくにはお子様向けのごちそうプレートにしか見えない。どこが大人用なのかと首をかしげた。
ぼくは思いきってウエイトレスのお姉さんに声をかけた。
大人のお子様ランチを注文すると、お姉さんはニヤリとして「はあい。じゃあお名前聞いてもいいかな?」と言った。
ぼくは戸惑いながら「守です・・・・・・」と小声で答えた。
お姉さんはぼくの後ろに回ると「はい、守くん、前掛けつけようね」と言ってぼくの首に前掛けをつけた。
しばらくするとお子様ランチが運ばれてきた。
「はい、いただきますして」
「いただきます」
「はい、あーーん」
「え? いや、自分で食べれますよ」
ぼくはもの凄い勢いでお子様ランチを平らげて席を立った。量が少なかったのは不幸中の幸いだ。
「お会計を!!」
早くこの世界から逃げ出したかったぼくはレジへと急いだ。
小走りで追いかけてきたお姉さんが、ぼくの口をナプキンで拭いて言う。
「ごちそうさましてないでしょ。それにもっとよく噛んで食べないと、ちゃんと栄養を吸収できないわよ!!」
レシートを見ると、お子様ランチは八百円なのに、プラスして大人料金二千円と書かれている。
ぼくは三千円を置くと「お釣りは要りません!!」と言って逃げるように店を後にした。
後から知ったが、この店は大人になりきれない子どものような大人が来る店らしい。
大人のお子様ランチ。もう二度と注文することは・・・・・・。
終
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