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SS【メンマはどこへ?】


私のお父さんはイケメンです。

イケメンといっても顔がイケているのではありません。

ラーメンやうどんなど、麺類を食べる時に何玉でもイケるただの食いしん坊です。



ある日のこと、私が小学校から帰ってくると、イケメンパピー宛てに手紙が届いていました。

手紙にはこう書いてあります。


「ネギです。突然のお手紙失礼します。実は相談がありまして・・・・・・海外での仕事を終え日本に帰ってきてからメンマと連絡が取れずに困っています。ぼくが帰ってきたら結婚する約束をしていたのに、音信不通になってしまいました。彼女からの最後の連絡は、探さないで下さいさようならです。ぼくは意味も分からず帰ってからずっと彼女を探しておりますが見つかりません。メンマの行き先にお心当たりないでしょうか? もしあったらご連絡下さい」


パピーにはラーメンの具をニックネームにした友人がいるそうです。

差し出し人のネギさんはパピーの古い友人で、音信不通のメンマさんはネギさんの彼女だったようです。

手紙の最後にはこう書いてありました。


「追伸 探偵に依頼して今どこで何をしているのか調べてもらおうと思っています」


ネギさんは本気でメンマさんのことを愛しているのでしょう。


パピーはお母さんにその手紙を見せました。

するとお母さんは少し考えたあとペンを取りました。

なんと、お母さんはネギさんに手紙を書いています。


「お久しぶりです。メンマです。私はチャーシューと結婚しました。あなたを裏切る形になったことは謝ります。でももう引き返す気はありません。あなたは新しい幸せを見つけて下さい」


「追伸 あなたには打ち明けていませんでしたが、私はイケメンが大好きです。いつも一玉しか食べないあなたとは一緒になれません」


私は頭の中が混乱しました。

メンマがネギを裏切ってチャーシュー、つまりパピーと結婚したのです。

チャーシューが何か言っています。


「今日はチャーシュー麺が食べたいな。食べに出るか?」


近所のラーメン屋にやってきた私たちの前に並べられたどんぶりには、分厚いチャーシューとメンマ、その横に煮卵が添えてあります。どんぶりの端の方にはネギが乗っています。


私は思いました。

この煮卵は私かもしれないと。

私たち仲良し家族と、一人寂しく暮らすネギ。

私はなんだか少し切ない気持ちになりました。


チャーシューがカウンターに向かって何か言っています。


「すいません!! 替え玉!! あと、ライスもおかわり!!」

チャーシューは今日も元気です。


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