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SS【お父さんの夏休み計画メモ】


夏休みは子どもたちだけの特権ではありません。

引きこもり気味な私のお父さんにも夏休みがやってきました。

学生のように長い休みではなく、お盆休みというやつです。

休みが短いといっても、休み中にしなければならない課題は無く気楽そうです。


お母さんが旅行したいと言っていたので、もしかすると何かサプライズで計画を立てているかもしれません。

私はお父さんが買い物に行っている間に、こっそりとお父さんが忘れていった携帯を調べました。

いつも携帯のメモに日程を書いているからです。

六桁の数字を入力する画面ロックがかかっていましたが、問題ありません。以前見たお父さんの指の動きでパスワードは予想がついています。


私の読み通り、携帯のメモには予定が書いてありました。


①  冒険前夜

(夜中に仕事を終えて家に帰り、ささっと風呂と食事を済ませ出発)


どうやら遅くまで仕事をして、その日のうちに出かけるつもりのようです。遠くへ行きたいお母さんの望みは叶いそうです。



②  1日目

(一晩中走り続けて山越え、そして夜明けとともに海に出る)


仕事で疲れているのに山道を一晩中運転するつもりのようです。山越えしたあとに拝む朝日はさぞかし綺麗なことでしょう。



③  1日目お昼頃

(女性フォロワーとの出会い)


何やら話が怪しくなってきました。



④  1日目夕暮れ

(遺跡マニアである女性フォロワーの友人が、山の上にある廃校を最後に連絡が途切れたことを知り、二人で探しに向かう。自転車を押しながら車がすれ違えないほど狭く、うっそうとした急な道を登る。途中には熊出没注意の看板。登り切る前に、この先五十メートル、しら骨小学校の立て札。廃校へたどり着くと校舎はほとんど霧に覆われていた)


③の辺りで十分すぎるほど違和感はありました。でもその後の予定ときたら・・・・・・。

そう、これはお父さんが休み中に書こうとしている冒険ものの短編小説でした。


私はお母さんにそのことを報告しました。

するとお母さんは力なくこう呟きました。


「今年も遠出しないのか」と。







あとがき


想像だけでも物語は作れます。ただやはり経験から得たものは大きいと思うので、小説のネタ探しに旅に出るのも悪くないですかね? もしかすると旅行中の方が面白い物語が創れるかも?(希望的観測)。
あっ、そうそう、ぼくが人生で最初に書いた短編小説【不死者の決戦場】を夏休みの読書にどうですか? ぜひぜひ♪



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