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SS【本物か偽物か】


ずいぶん昔、ぼくはテレビで超能力者が本物かどうかを見極める方法を聞いたことがある。

単純だがなるほどと思える見極め方だ。


コメンテーターはこう言った。何度やっても失敗しないのなら、超能力者としては偽物の可能性が高いと。

能力が本当なら、そこには種も仕掛けもないから、本人の精神状態が結果に大きく反映されてしまう可能性が高い。

本物だから失敗するのだと。

ましてや能力を披露するのは有名人を含む多くの視線が集まる中なのだ。

偽物だからこそ、万が一にも失敗しないよう入念に準備していると言い切った。



たった今、ぼくの目の前で姿を消した彼女は、透明になったわけでも、落とし穴に落ちたわけでもない。

そこはエレベーターの中。停電でもないのに急に周囲が暗くなった。

エレベーターは順調に下がり続けている。

彼女はぼくの視界に映らず、手で触れることもできない。


最近同居を始め、一緒に買い物へ出かけるのは今日が初めてだった。

一階に降りたエレベーターの扉から現れたのはぼく一人。


いつか居なくなることは分かっていた。

しかし今ではなかったはずだ。

まだ出会って間もないというのに。

ぼくはまだまだ君のことを知りたい。

一緒にいてほしい。


半月ほどしてとつぜん彼女が帰ってきた。

「ただいま」


まるで近所に散歩でも行っていたかのような口振りだ。

ぼくは少しイラッする気持ちを抑えて、二人で買い物に出かけることにした。

エレベーターに乗り込むぼくの視界には彼女が映っている。


買い物から戻ってきたぼくたちは夕食の準備を始めた。

といっても彼女は何もしない。

ぼくは洗い物を済ますと、シャワーを浴びてくると言ってVRグラスを外した。


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