散文【赤いジャンパーの山男】1517文字
木々が赤や黄色に色づく季節。ぼくは社会に馴染めぬ自分に愛想を尽かし、険しい山へと足を踏み入れた。
駐車場に車をとめ、登山口から少し登ると下山してくる高齢男性が見えた。
ぼくと同じソロ登山者のようだ。
縦長形状で八十リットルはあろうかという大きな黒いリュックを背負い、鮮やかな赤色のジャンパーを着ている。下はカーキ色のデニム。
足下は土色の登山靴に真っ赤な靴ひもを結んでいる。
老人は少しだけ道が広がっている場所で山側に背を向け待ってくれている。
「こんにちは」と挨拶す