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散文【鹿になれ】320字


リカオンの群れから身を守るため自ら崖のふちに立つ鹿によく似た草食動物たち。今にも滑り落ちそうな狭く急勾配の岩場に立っているため、リカオンはあと一歩を踏み出すことができない。下手に踏み出せば一緒に身投げすることになるからだ。崖の下からリカオンの仲間が見上げている。鹿が滑落するのを待っているのだ。

ぼくはその映像を観て思った。「追い詰められているのは誰だろう?鹿か、リカオンか、あるいは鹿に同情するぼくか」

リカオンたちが去っていく所で映像は終わった。その後どうなったのかは知らない。


ぼくは今、壁にぶち当たっている。しかしそこは今にも滑り落ちそうな狭く急勾配の岩場だろうか?

違う。ぼくにはまだ余裕も余力もある。

ぼくの戦いはまだ始まったばかりだ。


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