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工芸はオワコンだろうか~芸大卒生が民藝を学びなおしながら10年前の自分に言いたいこと~
あなたは今、工芸に興味を持っている。
和風総本家を見たりして、職人はすごい、日本の技術ってすごい。そんな感想を抱き、自分もこんなふうに物をつくる人間になりたいと思っていることだろう。
けれど、日本の工芸は、今や完全に廃れつつある。
それは現代人の生活が、昔とは別物になってしまったからだ。
工芸とは、日常で使うものが発展した芸術であり、美しいか否かの前に、〝用いること〟が前提としてある。
しかし、本来、生活に根差したものであるはずの工芸は、いまや「上等なもの(=普段使いできないもの)」として現代では廃れつつある。
また、工芸の発展を支えてきたのは、「民藝」であるが、これも現代ではすっかり無くなりつつある。
「民藝」とは、平たく言えば、「日本の地方に住む人々が一般に用いる『無銘の生活用品』にこそ美が潜んでいる」という考え方である。
身なりを整える櫛や織物、煮炊きをする土瓶や料理を盛る皿などがそうだ。
そういった民藝品と、それらを制作する職人は、すっかり姿を消した。
今の日本が、安価で良い製品がいつでも手に入り、物を多く持たない暮らしが礼讃されるような国になったからである。
では、もはや工芸はあなたが憧れるような世界ではないのだろうか。
答えはノーだ。
思い出してほしい。あなたが憧れたのは、工芸品や職人だけではなく、その工芸品を育んだ風土や、職人たちの技術・姿勢だったのではないだろうか。
そうであるならば、あなたの将来が、高層ビルで働く会社員だったとしても、家事と育児に追われる母親だったとしても、あなたが日本で暮らす限り、何らかの形で「工芸」は生活の中に現れる。
なぜなら、工芸の本質は、人のために何かを作り、生活の知恵を伝えるという文化そのものであり、様々なコミュニティで独自に発展していくものであるからだ。
すなわち、運動会で使うペットボトルの鳴り物や子どものための給食袋。推しを応援するためのうちわ。ハロウィンで着る手作りの仮装…。
それら、生活における独特な手作りのものたちの中に、新たな工芸が生まれるのではないかと私は考えている。
今やインターネットでは素人がプロ顔負けの手作り品を売り買いする時代である。
現代の便利さは、誰でも職人になりえる時代を生み出した。
工芸は、「質の良さ」や「古来の知恵」など、希少性を強調しがちである。
しかし、もし工芸を現代人の生活に馴染ませたいというのであれば、希少性ではなく、その技術を「誰でも簡単に習得できる形」にして広めるべきだ。
そうすれば、工芸はひとりでに形を変え、時代に即した文化になるだろう。
さて、あなたは職人や工芸に憧れを持つ、現代っ子である。
憧れはあるものの、職人のように一つの道を極めるなんて覚悟はできないと尻込みしているかもしれない。
確かに、名だたる工芸家や職人たちのような技術を今すぐ身につけることは難しい。
しかし、あなたが工芸の技術に興味を持ち、拙いながらも、その技法でものづくりを始めたとき、新たな工芸が生まれるのだ。
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