見出し画像

【詩】愛だといいな


『 愛だといいな 』


愛してるという意味の「食べちゃいたい」と
あなたを殺したいという意味の「食べちゃいたい」に
大きな違いはない

どちらであろうと、
好きなひと・好きだったひとに抱くその感情は、
結局は愛である

拗らせだと馬鹿にするか、メンヘラだと笑うか
指を刺して笑われるくらいの人間であれるほうが、
人間らしくて汚くて、うれしい

愛しているあなたを、殺したいあなたを、
食べてしまったら、どうなるのだろう

私の体に、丁寧に丁寧に吐き出さないように
じっくりと詰め込んで、あなたの魂ごと吸収して、

私を墓にしてみませんか

結局は、繊細な手捌きで飲み込んだはずなのに
やっぱり、吐いて、盛大に吐いて

愛することって こんなに苦しい

何事もなかったかのように汚物を見つめながら、
元通りのカタチになるようすを眺める

あなたのかけらを拾い集める 、ああ足りないや、
寂しいけれどまあいいか、良くないか

完成しないパズルを組み立てる、
最近はレゴブロックでつくる花束が話題らしいよ
なんて、そんなふうにね、
でもレプリカは嫌だよ
あなたを愛しているのだから

気持ちが悪いですか、私はおかしいでしょうか、
私は、感情をたいせつにできているでしょうか

いかないで、目を逸らさないで、
だって人間ってこういうものでしょう、
間違いではないでしょう、
きみの愛情表現とわたしの愛情表現の方法が
すこし違うだけ

ここにいる、
ここで生きているわたしたちの全ては、
生き方は、なんにも間違っていないんだよ

あなたのことを、きみのことを、わたしのことを、
何を選んでも正解だよと言い続けられるように
生きていたいんだよ

いつかまたあなたを食べちゃえる日まで、
また怒涛な日々を紡いでゆく

わたしのことばを聞いてくれたきみへ
わたしがどうしようもなく
わたしを食べて殺してしまいそうになったら、
わたしがわたしを
そうやって消してしまうことを選びそうになったら

それだけは間違っているよと力づくで止めてほしい
もしもそれがほんの少しでも愛ならば、
わたしを食べてほしい

死ぬよりはまし そう思いたい
わたしが迷ってしまったときに、
わたしを生かすために、食べてほしい

わたしがわたしを何度殺しても
その全ては正しい でも今は、

ほんとうはね、消えたくなんかないよ、
ほんとうだよ、でもどうしてかわからないけれど
消したくなるときがあるんだよ、

こんなにもあなたを愛しているのにね、つらいよ

あなたとわたしの幸せも苦しみも痛みもぜんぶ、
何回だって私のなかに閉じ込めたい

そうしたら、わたしはきっと死ぬまで、
死んでからも、生まれ変わっても、一生幸せ

絶対に生き延びたい、
だから、あなたへ
食べちゃいたいな、
愛だといいね。

ーーーーーーーー

コトバスラムジャパン松戸大会 2024年5月25日
パフォーマンスをした詩です
文字よりも圧倒的に、朗読をしたほうが良い詩

この記事が参加している募集

#創作大賞2024

書いてみる

締切:

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?